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「首都圏の交通網は脆弱だ」「この程度で大騒ぎしすぎ」。雪や台風など、悪天候で首都圏の通勤に混乱が生じると、地方在住の人からそんなふうに揶揄する声が聞こえてくる。だが、現実に、電車の運行は大幅に遅れ、何時間もかけてようやく会社に到着するというケースも少なくない。

天候が原因の遅刻は、しかたがないことのようにも思える。だが、ネット上では「天気予報を確認すれば、電車が遅れるのは予想できるのだから、いつもより余裕をもって通勤すべきだ」という意見も少なくない。中には「前日から会社に泊まるべき」という人もいる。一方で、交通の混乱が起きている日は、会社を休みにすべきではないかという意見もある。

天候による遅延が原因で会社に遅れてしまった場合、会社が従業員にペナルティーを課すことは問題ないのだろうか。あるいは「遅刻をしないようにいつもより早めに出社しなさい」と命令することはできるのだろうか。労働問題に詳しい白川秀之弁護士に聞いた。

●定時に出勤できなかったことは、労働者の責任ではない

「労働者は、一定の時間の労務を使用者に対して提供する義務があり、始業時刻に間に合うように出勤する義務があります。

ただし、雪や台風による公共交通機関の遅れなどで、通常の手段では定時に出勤できない場合は、出勤できなかったことについて労働者に責任はないので、ペナルティーを課すことはできません」

遅刻しないように、早めに出社することを命じることはできるのだろうか。

「就業規則にそのような規定を設けていれば、使用者が個別に、労働者に対して指示をすることが許されるケースはありうるでしょう。

ただ、その場合でも、始業時刻より早めに到着したりすれば、その分は労働時間と考えることになるでしょうし、通勤が危険な状態で出勤を命じたことで労働者が事故に遭遇したりすれば、会社は責任を免れないと思います」

逆に、悪天候などの日は社員の安全を考えて、会社を休みにしたり、午後出社にするといった対策をとる法的な義務が、会社にあるのではないか。

「記録的な台風や大雪で、通勤によって労働者の生命、身体に危険が生じることが明らかな場合は、そのような義務が生じる場合もあるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年、弁護士登録。労働事件が専門だが、一般民事事件も幅広く扱っている。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会委員。

事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/