プレーでプラスの結果を考えることは危険

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 プラスに考えてプレーすることを全国各地のチームはしています。「やればできる」は耳障りの良い言葉ですが、私は危険な言葉と捉えています。

どんな時でも行動に焦点を当てながらプレーすることが大事

「やればできる」と考えるより動きに意識を傾けた方が良い(写真はイメージ)

 できるということは、良いイメージの結果を想像しています。投手であれば抑えられる、打者であればヒットを放つ。いずれにしても成功のイメージです。

 イメージをして数秒後、結果が出ています。打者であれば3割打者は優秀ですが、7割が凡打(アウト)になっています。

 良い結果をイメージしていて、逆の結果が出たときに選手の心は揺れ動きます。次の機会も「やればできる」と念じるように思いますが、またその期待は裏切られます。これを繰り返していけば、言葉やイメージでできると思っていても裏切られ続け、疑心暗鬼になります。

 未来に対してのイメージで「できている」ことを強く考えることは良いことです。うまくいかないことが多少あっても、「できる」と思うことで、またチャレンジしていくことも可能です。目標に対してプラスイメージで取り組むことは大切なのですが、目の前のプレーに関しては少し違います。

 未来のイメージではなく、「今のプレー」に対して「できる」と思うことは私流にいえば結果を考えることになります。結果を考えると、「ここで打たなきゃ」「ここで抑えなきゃ」とプレッシャーを感じることにもなります。

 相手が弱ければ結果を考えてもある程度の結果を出すことは可能ですが、相手が強くなれば結果を考えるのではなく「何を意識して、どう動くのか」に集中することで自分を動かしていきます。

 相手が強ければ行動思考で、相手が弱ければ結果思考で動く。やり方を2つ持つのではなく、どんな時でも行動に焦点を当てながらプレーすることが波のない選手に近づいていきます。

「プラスに考えた方が結果は出やすい」そう思われがちですが、

 結果を考える = 身体を動かなくする

 できるとも思わないし、できないとも思わない。野球で結果を出すための考え方はこのコラムで何度も書いていますが、動きに意識を傾けた方が断然良いのです。

 全国の高校野球は予選が始まっていて、敗退したチームは新チームとしてスタートしています。技術を磨くために毎日練習を積み重ねていても、最後の最後に結果を考えてプレーしてしまえば力を出しきれないで終わります。今回の夏に経験して実感した選手も多かったことでしょう。

 静かに考えることを意識して、余裕を持ってプレーする。過剰な「やればできる」は自分を苦しめていきます。淡々と今するべきことに集中してみましょう。

(文=遠藤友彦)

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