堀江公判 17日の被告人質問(1)
東京地裁で17日開かれたライブドア(LD)事件の公判で、元社長、堀江貴文被告に対する検察側の反対尋問が始まった。尋問内容の要旨は次の通り。(質問者は藤野晃俊検察官)
CEOを名乗った理由
── 「オン・ザ・エッヂ」(ライブドアの前身)を起業したのはあなたか。
そうですね。
── 代表取締役は。
私です。
── その後、あなたは最高経営責任者=CEOになったか。
はい。それは社内的なものですよね。CEOって付ければ格好(かっこう)いいよねって。
── なぜ、CEOと付けたのか。
流行(はや)っていたから。見た目がいいから。あと、名刺見た時に珍しく、営業トークに使えるから。あと、副社長がいっぱいいるが、ヴァイスプレジデントってすると格好いいじゃないですか。
── 対外的にCEOと名乗っていたのか。
そうですね。名刺に書いていました。
── 内容はないのか。
法律で決まっているわけではないですからね。
── CEOについてどのように認識していたのか。
うーん、会社の顔。CEOの方に特段の意味はない。見栄えが良いので付けただけだから。
── 最近、野村証券の用語集を読んでみたが、そこにはCEOの意味として「新規事業やM&A・・・など企業の経営方針を決める者」と書いてあったが。
違うと思いますね。社会的にこうと決まったものはないし、それは野村証券の主観ではないか。端的に言うと、そうですね、代表取締役社長でいいのではないか。
── 株式会社に組織変更してから、代表権を持ったのは。
私だけです。
── CEOもあなただけか。
そうですね。普通、自分から言い出すのは僕だけですね。
── 世の中には「代表取締役副社長」や「代表取締役専務」といった人たちもいるが、代表権を持っていたのはあなただけか。
そうですね。
── 社長業についてどう思っていたのか。
総論で言われても答えづらい。考えはありますが、端的には答えられません。30分いただけるなら別だが、簡潔で答えやすい形で質問してほしい。
── 考えはないのか。
端的には答えられない。
── まとめて考えていないのか。
短く説明しろと言われても、そのようにはなっていない。
── 2004年6月23日のあなたのブログには「社長業はますます激務になる」とある。
覚えていませんね。
── 「10年前と比べてシビアになった。若い時には無理がきくが、50代では務まらないだろう。部下に任せればいいというが、それではお飾りだろう」
覚えていません。私が言いそうなことだが、私の考えのすべてではない。
── 2004年、2005年ごろ、あなたが会社経営で一番大事だと思っていたことは。
うーん、頑張ること。
── 何を頑張るのか。
いろいろ。
── 例えば。
例えばと言われても、例を挙げるのは難しい。会社経営全般ではないか。
── ビジョンはなかったのか。
ビジョンがあるかないかは、この質問には関係ないと思う。
── (小坂敏幸裁判長)経営者としての理念か。
私は一生懸命頑張ることが重要と思っていた。当時は頑張ることで精一杯でしたね。
── (藤野検察官に戻る)何のために。
株主のため。経営者は株主の奴隷ですから。
── 株主の利益のためか。
株主の利益のため、ですかね。
── 赤字でもいいと思っていたか。
赤字でもいいとは思っていない。だれしもそう思うのでは。
── 自分が代表取締役を務める会社の営業利益を黒字にするためには。
頑張る。
── 何を。
仕事を。日々の努力が一番です。
── 経営者の仕事は。
いきなり一般論を言われても。答える意味がない。揚げ足を取ろうとしている。特にこの件に関して関係がある質問なんですか。
目標「営業利益世界」とLDの経営実態
── 公判で、営業利益世界一を目指すと言っていましたね。
はい、言いました。
── たくさん子会社があるが、グループとしてということか。
連結で世界一を目指すということです。
── いつごろから言い出したのか。
数年前。LD時代ではない。
── “営業利益世界一”は本気で言っていたのか。
希望的観測もある。会社が大きくなってきたので、「新しく入ってきた人に、誰でも分かりやすい目標を立てないといけませんよ」と(だれかに)言われたのか、そう本で読んだのか。思いついたのがそれだった。実現できるかと言われると、可能性はゼロではない。だれしもが目指せるし、だれしもが簡単に理解できる。それを目指そうと社員に言った。
── あなたは真剣に営業利益世界一を目指していたのか。
目標を立てれば、目指しますよね。
── 営業利益はどれくらいを念頭においていたのか。
2兆円ぐらいですかね。
── 創業してから05年9月期までは、営業利益は上昇していたのか。
連結ではおおむね上昇傾向にあった。単体では赤字だったが。
── 2005年9月期の連結営業利益はどれくらいだったか。
120億円前後だった。
── 100倍しても世界一にはならないが。
そうですね。でも、創業時は50万円だった。10年で1000倍になった。その後の10年で1000倍は無理でも、200倍くらいは(目指せると思った)。
── 04年9月期の連結経常利益は50億円。そのうち37億円はLD株の売却益でしたね。
それは今、争っているじゃないですか。関連性がどこまであるかは別にして、疑われていることは確かだが。
── 残りの16億円も、ロイヤル信販とキューズ・ネットへの売り上げでしたね。ロイヤルとキューズは04年10月に連結している。その後になれば、いくら売り上げがあっても連結の売上高にはならない。
連結消去されてしまいますよね。
── 仮にその分を差し引いたら、赤字だ。それでも世界一を目指していたのか。
そういう前提をまったく知らずに、目指していたんですけどね。
── 戦略会議では、大きな利益は見ていなかったのか。
見ていないということはないが、主に細かい経費は見ていた。
── 売り上げは見ていなかったのか。
まったく見ていなかったということは、なかったと思う。
── 経費は細かく見ていたというが。
ちょろまかす奴(やつ)がいるから。私費で買うものまで買ってしまう奴(やつ)がいるから。
── 例えば。
バス代を多めに請求するとか。タクシー代は基本的に禁止なんだけど、タクシー代だとか。クリアファイルを大量に買ったり、アスクルでカップラーメンを買ったり。自分で食うもんまで会社の金で買うなよ、と。そういうのをチクチク言っていれば、なくなると思ってやっていた。
── 最近までやっていたのか。
さすがに手が回らなくなりつつあった。
── タクシー代は(東京の初乗り運賃)660円でも駄目なのか。
基本的にはNG。
── 経費を重要視するのはなぜか。
売り上げを1000万円増やすより、経費を1000万円減らす方が確実。
── 営業利益世界一を目指すには、数百円単位で減らしても難しいのでは。
ちりも積もれば山となる。(強い調子で)
── ものすごい量が積もらないと駄目ですね。
日々の経費をチクチク言うことが大事なんですよ。
── 仮に経費がゼロでも営業利益世界一ではないですね。世界一になるためには、売り上げを増やすことを目指さないといけないのではないか。
売り上げにまったく関心がないわけではない。極論ですよ、極論。
── 売り上げに関心を持っているなら、売り上げを把握しようとしているはずだが。
できるだけ把握しようとはしていたが、売り上げにもいろいろある。積みあがっていくようなストック型の事業を増やしていきたいと思っていた。会員が何100万人もいて、毎月何円を払うとか。ストック収益だけで会社が成り立っていることがベスト。私の関心はそこに向かっていた。そういう部分は比較的見ていた。
── 理想ではなしに…。
理想だって追わないと。それを追うのが経営者じゃないですかね。
── 会社の利益は何で成り立っているのか、認識はしていないのか。
ざっくり見ている。信頼している人たちがやっていることを、細かくは見ない。
── LDは何十社もの既存企業を買収している。LDは何のために子会社を持っていたのか。
買収したら子会社になったから。
── 効果も考えずにか。
それ違うなあ。論理が飛躍している。もっと分かりやすく聞いてもらえませんか。藤野検事の言いたいことが伝わってこない。
── LDは、LDの経営にどういう利点があると思って子会社を持っていたのか。
子会社の所有の目的は個々で違う。
── 代表的なところでは。
指定していただけると…。
(政木道夫弁護士)反対尋問ですので。
(小坂裁判長)もう少し具体的に質問してもらえませんか。
── (藤野検察官に戻る)では、バリュークリックジャパン(VCJ)について、説明してください。
VCJは広告のアドネットワークという事業をしていた。LDが以前、サイバーエージェントとやっていた事業と同じ事業だった。利益は出ていたが、サイバーエージェントの方針で、やめることになった。そのため、アドネットワークはVCJが市場を独占した。その割には株価が安かった。将来的には儲(もう)かりそうな事業が、タダみたいな値段で手に入るんだなあ、と。僕じゃないですけど、いきなり電話かけて、親会社に行ったら「売るよ」ということだったので、ラッキーと思った。
── ライブドア全体の利益になると思っていたのか。
そうですね。
── 各子会社には適切な業務を行わせ、グループ全体の利益を上げるか、LDの業務がしやすいようにさせることを目指していたのか。
でしょうね。
── だとすると、グループ全体の業務を把握しないといけないのではないか。
そうしたいなあ、とは思っていた。(つづく)
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── 「オン・ザ・エッヂ」(ライブドアの前身)を起業したのはあなたか。
そうですね。
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私です。
── その後、あなたは最高経営責任者=CEOになったか。
はい。それは社内的なものですよね。CEOって付ければ格好(かっこう)いいよねって。
流行(はや)っていたから。見た目がいいから。あと、名刺見た時に珍しく、営業トークに使えるから。あと、副社長がいっぱいいるが、ヴァイスプレジデントってすると格好いいじゃないですか。
── 対外的にCEOと名乗っていたのか。
そうですね。名刺に書いていました。
── 内容はないのか。
法律で決まっているわけではないですからね。
── CEOについてどのように認識していたのか。
うーん、会社の顔。CEOの方に特段の意味はない。見栄えが良いので付けただけだから。
── 最近、野村証券の用語集を読んでみたが、そこにはCEOの意味として「新規事業やM&A・・・など企業の経営方針を決める者」と書いてあったが。
違うと思いますね。社会的にこうと決まったものはないし、それは野村証券の主観ではないか。端的に言うと、そうですね、代表取締役社長でいいのではないか。
── 株式会社に組織変更してから、代表権を持ったのは。
私だけです。
── CEOもあなただけか。
そうですね。普通、自分から言い出すのは僕だけですね。
── 世の中には「代表取締役副社長」や「代表取締役専務」といった人たちもいるが、代表権を持っていたのはあなただけか。
そうですね。
── 社長業についてどう思っていたのか。
総論で言われても答えづらい。考えはありますが、端的には答えられません。30分いただけるなら別だが、簡潔で答えやすい形で質問してほしい。
── 考えはないのか。
端的には答えられない。
── まとめて考えていないのか。
短く説明しろと言われても、そのようにはなっていない。
── 2004年6月23日のあなたのブログには「社長業はますます激務になる」とある。
覚えていませんね。
── 「10年前と比べてシビアになった。若い時には無理がきくが、50代では務まらないだろう。部下に任せればいいというが、それではお飾りだろう」
覚えていません。私が言いそうなことだが、私の考えのすべてではない。
── 2004年、2005年ごろ、あなたが会社経営で一番大事だと思っていたことは。
うーん、頑張ること。
── 何を頑張るのか。
いろいろ。
── 例えば。
例えばと言われても、例を挙げるのは難しい。会社経営全般ではないか。
── ビジョンはなかったのか。
ビジョンがあるかないかは、この質問には関係ないと思う。
── (小坂敏幸裁判長)経営者としての理念か。
私は一生懸命頑張ることが重要と思っていた。当時は頑張ることで精一杯でしたね。
── (藤野検察官に戻る)何のために。
株主のため。経営者は株主の奴隷ですから。
── 株主の利益のためか。
株主の利益のため、ですかね。
── 赤字でもいいと思っていたか。
赤字でもいいとは思っていない。だれしもそう思うのでは。
── 自分が代表取締役を務める会社の営業利益を黒字にするためには。
頑張る。
── 何を。
仕事を。日々の努力が一番です。
── 経営者の仕事は。
いきなり一般論を言われても。答える意味がない。揚げ足を取ろうとしている。特にこの件に関して関係がある質問なんですか。
目標「営業利益世界」とLDの経営実態
── 公判で、営業利益世界一を目指すと言っていましたね。
はい、言いました。
── たくさん子会社があるが、グループとしてということか。
連結で世界一を目指すということです。
── いつごろから言い出したのか。
数年前。LD時代ではない。
── “営業利益世界一”は本気で言っていたのか。
希望的観測もある。会社が大きくなってきたので、「新しく入ってきた人に、誰でも分かりやすい目標を立てないといけませんよ」と(だれかに)言われたのか、そう本で読んだのか。思いついたのがそれだった。実現できるかと言われると、可能性はゼロではない。だれしもが目指せるし、だれしもが簡単に理解できる。それを目指そうと社員に言った。
── あなたは真剣に営業利益世界一を目指していたのか。
目標を立てれば、目指しますよね。
── 営業利益はどれくらいを念頭においていたのか。
2兆円ぐらいですかね。
── 創業してから05年9月期までは、営業利益は上昇していたのか。
連結ではおおむね上昇傾向にあった。単体では赤字だったが。
── 2005年9月期の連結営業利益はどれくらいだったか。
120億円前後だった。
── 100倍しても世界一にはならないが。
そうですね。でも、創業時は50万円だった。10年で1000倍になった。その後の10年で1000倍は無理でも、200倍くらいは(目指せると思った)。
── 04年9月期の連結経常利益は50億円。そのうち37億円はLD株の売却益でしたね。
それは今、争っているじゃないですか。関連性がどこまであるかは別にして、疑われていることは確かだが。
── 残りの16億円も、ロイヤル信販とキューズ・ネットへの売り上げでしたね。ロイヤルとキューズは04年10月に連結している。その後になれば、いくら売り上げがあっても連結の売上高にはならない。
連結消去されてしまいますよね。
── 仮にその分を差し引いたら、赤字だ。それでも世界一を目指していたのか。
そういう前提をまったく知らずに、目指していたんですけどね。
── 戦略会議では、大きな利益は見ていなかったのか。
見ていないということはないが、主に細かい経費は見ていた。
── 売り上げは見ていなかったのか。
まったく見ていなかったということは、なかったと思う。
── 経費は細かく見ていたというが。
ちょろまかす奴(やつ)がいるから。私費で買うものまで買ってしまう奴(やつ)がいるから。
── 例えば。
バス代を多めに請求するとか。タクシー代は基本的に禁止なんだけど、タクシー代だとか。クリアファイルを大量に買ったり、アスクルでカップラーメンを買ったり。自分で食うもんまで会社の金で買うなよ、と。そういうのをチクチク言っていれば、なくなると思ってやっていた。
── 最近までやっていたのか。
さすがに手が回らなくなりつつあった。
── タクシー代は(東京の初乗り運賃)660円でも駄目なのか。
基本的にはNG。
── 経費を重要視するのはなぜか。
売り上げを1000万円増やすより、経費を1000万円減らす方が確実。
── 営業利益世界一を目指すには、数百円単位で減らしても難しいのでは。
ちりも積もれば山となる。(強い調子で)
── ものすごい量が積もらないと駄目ですね。
日々の経費をチクチク言うことが大事なんですよ。
── 仮に経費がゼロでも営業利益世界一ではないですね。世界一になるためには、売り上げを増やすことを目指さないといけないのではないか。
売り上げにまったく関心がないわけではない。極論ですよ、極論。
── 売り上げに関心を持っているなら、売り上げを把握しようとしているはずだが。
できるだけ把握しようとはしていたが、売り上げにもいろいろある。積みあがっていくようなストック型の事業を増やしていきたいと思っていた。会員が何100万人もいて、毎月何円を払うとか。ストック収益だけで会社が成り立っていることがベスト。私の関心はそこに向かっていた。そういう部分は比較的見ていた。
── 理想ではなしに…。
理想だって追わないと。それを追うのが経営者じゃないですかね。
── 会社の利益は何で成り立っているのか、認識はしていないのか。
ざっくり見ている。信頼している人たちがやっていることを、細かくは見ない。
── LDは何十社もの既存企業を買収している。LDは何のために子会社を持っていたのか。
買収したら子会社になったから。
── 効果も考えずにか。
それ違うなあ。論理が飛躍している。もっと分かりやすく聞いてもらえませんか。藤野検事の言いたいことが伝わってこない。
── LDは、LDの経営にどういう利点があると思って子会社を持っていたのか。
子会社の所有の目的は個々で違う。
── 代表的なところでは。
指定していただけると…。
(政木道夫弁護士)反対尋問ですので。
(小坂裁判長)もう少し具体的に質問してもらえませんか。
── (藤野検察官に戻る)では、バリュークリックジャパン(VCJ)について、説明してください。
VCJは広告のアドネットワークという事業をしていた。LDが以前、サイバーエージェントとやっていた事業と同じ事業だった。利益は出ていたが、サイバーエージェントの方針で、やめることになった。そのため、アドネットワークはVCJが市場を独占した。その割には株価が安かった。将来的には儲(もう)かりそうな事業が、タダみたいな値段で手に入るんだなあ、と。僕じゃないですけど、いきなり電話かけて、親会社に行ったら「売るよ」ということだったので、ラッキーと思った。
── ライブドア全体の利益になると思っていたのか。
そうですね。
── 各子会社には適切な業務を行わせ、グループ全体の利益を上げるか、LDの業務がしやすいようにさせることを目指していたのか。
でしょうね。
── だとすると、グループ全体の業務を把握しないといけないのではないか。
そうしたいなあ、とは思っていた。(つづく)
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