堀江公判 17日の被告人質問(2)
ファイナンス事業について
── 04年9月期に(堀江被告が直轄する)メディア事業部が赤字だったことは知っていたか。
月次の損益が赤字基調だったことは確か。
── ファイナンスが利益を出していたことは分かっていたのか。
04年9月期では黒字だったと思う。
── 利益面では、ファイナンスがLDグループを支えていたというのはいいですね。
支えていたというのはちょっと違うと思う。正確にお願いします。
ライブドア証券もだと思いますけど。
── LDFもかなりの部分を占めていたのでは。
そこそことは思いますけど。まあ、利益の中ではそうですけど。
── (グループ内の)会社の中の位置付けとして、LDが上位に位置づけられていますね。
はい。
── あなたはそこの社長でしたね。
はい。
── では、LDFの利益を把握していなければいけなかったのでは。
利益が出ていることは、把握している。僕はあまりファイナンスの利益を増やそうとは思っていなかった。そんなところがいくら増えたって、株主価値は増えない。市場の影響を受けやすいことをやっていても、絶対に(世界一には)いかない。毎月コツコツ、放っておいても利益が出るようにしないと、世界一にはならない。まあ、宮内さんたちが頑張っているなあ、というくらいですよ。
── 04年9月期の連結経常利益のうち、16億円はその後、連結しちゃった会社からの利益ですよね。
そうですね。
── 37億円もLDFの利益。でも、世界一にはならない。
あんまり重要ではないですね。極論すれば、翌年に2兆円にいってもいい。目先の利益にとらわれず、中長期的な会社の行く末を考えていたわけですね。でも「ページ・ビューが上がるまで赤字でいいよ」と言ったら、みんなだらけちゃうでしょ。
── 2000年4月にLDは東証マザーズ市場に上場し、同じ月に100パーセント子会社のキャピタリスタ(LDFの前身)を設立していますね。
上場前後に設立したのは覚えている。
── LDFの事業内容について、どのようなものだと認識していたのか。
投資事業。
── もう少し具体的に。
“投資事業”で十分具体的だと思うんですけど。私は現場をつぶさに見ているわけではない。「会社に投資する」。それで十分じゃないですか。ほとんど揚げ足を取ろうとしているとしか思えない。
── LDFでは、ベンチャーキャピタル投資をやっていたか。
やっていたと思います。
── あなたの認識では、“ベンチャーキャピタル投資”とは。
ベンチャー企業に投資して、値上がったら、売る。以上です。
── ベンチャー企業とは。
ベンチャー企業はベンチャー企業。それこそ野村証券の用語集を読んだらいい。
── ベンチャー企業と、ベンチャー企業でない企業の違いは。
それ、分かんないですよ。主観じゃないですか。
── 私の“ベンチャー企業”と、あなたの“ベンチャー企業”は違うのか。
かも知れません。
── 厳密な定義はないと。
ない。何でもかんでもベンチャー企業というんじゃないと思います。
── 投資対象は上場企業か、非上場企業か。
両方。
── 投資する前に、投資先する相手の調査はするのか。
すると思う。
── 慎重、緻密(ちみつ)に調査をしないといけませんね。
できるだけそうですね。
── 非公開情報を得ることもあるのか。
おそらくそうですよね。
── あなた自身、LDFを作った以上、頑張ると言っていたが、情報管理の重要性は分かっていたか。
それは普通のことではないですか。揚げ足を取ろうとしていてこわい。
── あなたは揚げ足を心配しているが、何かやましいことでもあるのか。
まったくないですけど、揚げ足を取られると質問が冗長になってうっとうしいじゃないですか。
── あなたは被告人の立場で質問を受けているわけだから。
(高井康行弁護士が立ち上がって)被告人は黙秘権を放棄して質問を受けている。場合によっては、質問を受けなくてもいい。
── (小坂裁判長)黙秘権は行使しないんですね。
はい。
── (藤野検察官に戻る)ベンチャーキャピタル投資で、非公開の会社に投資することはあるか。
ありますね。
── 上場させて売却益を狙(ねら)うのか。
上場前に売ることもあれば、損をすることもある。上場益を狙うこともあるが、それだけではない。
── 投資会社がどこに投資するのかも秘密にされるのか。
ごめんなさい。意味がさっぱり分からない。(小坂裁判長に向かって)分かりました?
── (小坂裁判長)投資対象の会社は秘密にするべきなのか。分からないなら分からないと答えてください。
ケース・バイ・ケースじゃないですか。
── (藤野検察官に戻る)いつごろ上場するという情報は、外部に漏らしていいのか。
いけないんじゃないですか。私が知るのは公表する前後が多かった。漏らすも漏らさないも、すぐ公表します。
── 秘密にすべき情報ではない、と。
何をおっしゃているのか分からない。
── ベンチャーキャピタル投資をする会社は、情報管理のために子会社として切り離しているのでは。
私は分からないので、コメントできない。LDFは子会社ですが、何で切り離しているのか分からない。
M&Aについて
── LDF設立以来、あなたはずっと取締役でしたね。
はい。
── 定例会議にも出ていたし、議事録も送られていたし、M&Aのメーリングリストにも入っていたんですよね。
送られていたのは間違いない。手違いで外されていたこともあったみたいだ。
── LDFでは、LDやLDグループ内のM&A業務をやっていましたね。
はい。
── 2001年に「パイナップルサーバーサービス」をM&Aしていますね。
時期は覚えてないですけど、やったと思います。
── LDまたはLDグループが買収する企業はどのように選定していたのか。
どの段階の話でしょうか。もっと個別的具体的に聞いてくれると、ポンポン出てくるんですけどね。
── あなたが買収を提案した会社は。
VCJ。ニッポン放送。あと何だろ。うーん、僕が提案したのは結構ポシャっているので。
── 件数は。
無数に。
── 成功したのは。
VCJ。あんまり成就していない。ニッポン放送も失敗していますね。
── ジェイ・リスティングは。
ジェイ・リスはそうかもしれない。
── ほかにあなたが提案したのは。
ありますよ。モンゴルの銀行とか。イーバンクが失敗したんで、モンゴルの銀行でもいいやと思って。僕、モンゴルまで行きましたよ。N君というのが担当だったんですけど、その後は放置プレイだった。
── 無視されていたのは。
ニッポン放送(強い調子で)。相当な期間、放置プレイされていましたね。買うまでに何カ月間も放置されていた。僕、とりあえず株式を買える金が数億円ある管理部の金で買ったらって言っていたんですけどね。無視された案件はいっぱいある。
── 無視された案件に、病院はなかったのか。
病院?
── 包茎手術の…
ああ、Uクリニック。宮内さんが動いていた気はしますが、乗り気ではなかったですね。
── あなたが提案したのか。
しつこいおっちゃんがいて「どうだ、どうだ」と。
── Uクリニックは成功したのか。
していないですよ。あんまり乗り気じゃなかったんで。おっちゃんがあんまりしつこいんで、宮内さんを紹介したんですけどね。
── 宮内さんはデューデリジェンスをしたのか。
やったのかな。宮内さん、やったんじゃないですか。どうしても買いたいかというと、そうでもなかった。
── VCJは。
PBR(株価純資産倍率)が1倍割れまではいっていなかったと思うが、アドネットワークの事業がほぼタダみたいな値段で手には入ると。あと、経営者がニュージーランド人でショボそうだった。
── あなたが持ち込んだ案件は、たくさんあったんですね。
ありましたね。
── そういう案件のことを“トップダウン案件”というのでは。
何それ。藤野さんの造語ですか。
── “トップダウン案件”というのではないですか。
“トップダウン案件”というのかな。(つづく)
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