8日、外国人人権法連絡会の結成記念集会で「警察とメディア関係者は、記事を読み、テレビを見た一般の人に謝ってほしい」と話すバングラデシュ出身のイスラム・ヒムさん(撮影:佐谷恭)

写真拡大

8日、弁護士やNGO(非政府組織)関係者らが作った、外国人らの人権を保障する法律の制定を目指す「外国人人権法連絡会」の結成記念集会で、日本に暮らす外国人ら4人が自らの体験などを話した。

“共生”にかかるコストと労力

 コリアNGOセンターの郭辰雄さんは大阪生まれの在日コリアン3世。戦後60年が経ったが、韓国、朝鮮の民族学校が各種学校に分類されていたり、入居差別を受けたり、在日コリアンに対していまだに差別的な処遇が残されていると話した。1990年以降に来日した“ニューカマー”も、同じ生活上の問題に直面していると指摘した。

 昨今の韓流ブームでコリアに対する関心の高まりに期待感を示す一方、ブームに一抹の寂しさを感じるという。郭さんは「あなたが会ったコリアンは、ペ・ヨンジュンが最初じゃないでしょう。何十年も前からすぐ隣にいたはず」と語った。

 “共生”の意味について、郭さんは「お互いが違うという前提があって初めて成り立つ言葉。“仲良く”という美しいことだけではなく、コストと労力がかかる。それでも一緒にいようと思えるかどうか。問題があったとき、力のある者が、ない者を押さえ込むのが今の日本だ」と話した。

誤認逮捕の悪影響は続く

 バングラデシュ出身のイスラム・ヒムさんは、国際電話のプリペイドカードを販売するリョウ・インターナショナルの社長。バングラデシュとマレーシアでも、会社を経営していた。2004年5−6月に、「登記簿謄本の偽造」と「就労ビザを持たない労働者の雇用」で2度、逮捕された。合わせて43日間警察に拘留されているうちに、7億円の損害を受け、バングラデシュとマレーシアの会社は倒産したという。

 拘留中、「アルカイダと関係があるか」と何度も聞かれ、1度はショックで息ができなくなり、救急車で運ばれたとヒムさんは話した。新聞やテレビなどで「ヒムは地下銀行をやっている」とCNNなど世界のメディアに報じられたため、出身国にも帰れない状態が続いているほか、いくつもの国でビザ発給拒否などの処遇を受けているという。「私はアルカイダじゃない!」とヒムさんは訴えた。誤認逮捕の悪影響は今も続いている。

 現在、警察やメディア関係者は、ヒムさんにとても優しく接してくるという。食事をおごってくれるし、プライベートでは謝ってくれるという。しかし、ヒムさんは「私にではなく、記事を読み、テレビを見た一般の人に謝ってほしい。私の罪は何ですか。自分たちが間違っていたことを、きちんと伝えるべきだ」と話した。

子どもの認知と国籍取得は別

 フィリピン人のタピル・ロサーナさんは、フィリピン人の互助組織「カフィン」で、同じ地域に住む日本人との交流や、在日フィリピン人の自己啓発などをしている。日本人との間にできた2人の子どもがいるが、日本人の父親が認知しながらも、子どもに日本国籍を与えないのは「すべて国民は、法の下に平等である」という憲法14条に反すると主張し、現在係争中だ。

 ロサーナさんは「在日フィリピン人は住居、教育、健康保険などさまざまな問題を抱えている。日本人男性と結婚し、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)を受けている女性が、夫の支援を得られないために、ビザの延長ができず、オーバーステイになる例もある」と話した。

難民支援なしで国連安保理常任理事国入りは無理

 内戦がひどくなった祖国を離れ、1997年に来日した男性(本人の希望により、出身地と名前は伏せています)は、難民認定まで4年も不安定な立場にいた。これまで生活や教育の支援を政府から受けたことは一度もなく、04年に日本に帰化した後も、不安感を持ったままという。

 男性は、数人の難民認定のために、数億円もコストをかけている政府のやり方に、疑問を呈した。この費用は、難民のために使われているわけではない。難民は、日本国籍を取得した後、生活をゼロから作らねばならない。「数億円ではなく、数百万円だけで難民を助けることができることを、一般の人は知らない」と男性は嘆いた。

 男性は「日本政府は難民を馬鹿にしている。平和のために不可欠な、難民の教育やサポートもしないで、国連の安全保障理事国の常任理事国になろうというのは無理がある。外国人を排除して、日本だけが安全ならよいという考えは間違っている」と語った。【了】

■関連記事
弁護士らが人権の連絡会結成