ピンストライプを身にまとったヤンキース時代の黒田博樹【写真:田口有史】

米メディアが着目した黒田の広島復帰会見での一言

 ドジャース、ヤンキースで活躍した黒田博樹投手の広島復帰会見での一言が、米国で話題となっている。米テレビ局「NBCスポーツ」電子版が「ヒロキ・クロダはメジャーでの7年間は楽しいというよりも苦しかったと話している」と報じた。

 2008年シーズンからドジャースに移籍した黒田は、7年間のメジャー生活で通算79勝79敗、防御率3.45という結果を残した。特集では広島市内のホテルで行われた16日の復帰会見で、右腕が報道陣からメジャー人生の総括を求められた時の一幕を紹介している。

「一言で言うと苦しかったですね。言葉も分からない中で、1シーズン162試合をずっと戦い抜く中で、体力的にも含めて、7年間は楽しいというよりも、苦しい思いの方が多かったんじゃないかと思います」

 記事ではこの部分のコメントを切り取り、英語に訳して紹介している。

 ベテラン右腕は1試合1試合、1球1球のために、想像を絶する努力を重ね、契約を全うするために、責任感を持ってマウンドに上がってきた。その結果として登板に関しては「苦しさしかない」と話したこともあるだけに、復帰会見の際も、ごく自然な答えだったに違いない。

 ただ、特集では「ヒロキ・クロダはドジャースとヤンキースで7年間投げて、多くのシーズンで最高のピッチングを見せてくれた。だが、彼は日本復帰に際し、これらの年月が特段素晴らしいものだったと回想していない」と言及。安定感溢れる好投を続けてきた右腕が、メジャーでのマウンドに苦しさを覚えていたことに驚きを示している。

ファンもメッセージ寄せる「最高の選手」「彼はMLBでの日々を誇りにすべき」

 一方で、記事の最後には「40歳のクロダは今年、広島カープで投げることになる。母国に戻って彼が少しだけでもピッチングを楽しんでくれることを望むばかりだ」と日本での活躍にエールも送った。黒田が米国で残した実績に対する敬意は本物で、米メディアの間でも帰国を惜しむ論調の記事は多い。

 ファンも黒田の言葉に理解を示しているようだ。記事への書き込みには、ポジティブな内容のものが目立つ。

「彼はあの年齢で際立って安定していた。フィールドではすべて出し尽くしたように見えた。彼はMLBでの日々を誇りにすべきだ。人生に幸福あれ」

「彼は目立たなかったが、最高の選手だった」

「アメリカで投げ続けてきたピッチャーが日本に行き、言葉も分からず、同僚とも会話ができないという状況を想像してみてほしい。それは厳しいよね。エンジョイしてほしい。あなたはアメリカでいいピッチャーだったのだから」

「彼は正直に話したまで。いくら給料が莫大でも、(アメリカ人が)日本語が分からずに日本で生活しようとするのはタフなことだ」

「メジャーにうまく適応した日本人ピッチャーでベスト5に入るだろう」

 このように、黒田の血と汗と涙がにじむメジャー7年間の総括について様々なメッセージが寄せられている。日本での登板も「大変さは変わらない」と表現する右腕だが、「苦しかった」メジャーで残した成績は、米国の野球ファンの心に確かに刻まれている。