この笑顔のために、たくさんの人の努力や工夫があるんです(写真:セントラル子供タレント株式会社)。

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赤ちゃんのオムツCMを見るたび、「こんな最高の笑顔、どうやって撮るのだろうか」と不思議になる。
なにせ赤ちゃんと動物は、思い通りにならないもの。泣いたり、機嫌が悪くなったり、すぐ飽きてしまったりする状況で、どのように撮影しているのだろうか。多数の赤ちゃんタレントが所属する「セントラル子供タレント株式会社」に聞いた。

「赤ちゃんの撮影は、どうしても赤ちゃんの機嫌に合わせてとなりますよね。おなかがすいたり、眠くなったり、ご機嫌が悪くなったりするので、休みなしの撮影は当然ムリですし。そのため、オムツCMなど、赤ちゃんがメインで出てくるものは、一人の赤ちゃんで撮影するケースがほとんどなく、たいてい2〜3人がスタンバイする『ダブルスタンバイ(ダブルキャストのこと)』や『トリプルスタンバイ』なんですよ」
実際、赤ちゃんメインのCMにおいて、赤ちゃん一人で撮影にのぞむと、大変な手間がかかり、撮影が止まってしまうことも多々あるそう。

ドラマや映画で、アクションシーンをスタントマンが行うのと同じような感じなのだろうか。でも、「引き」で撮るのと違い、赤ちゃんCMはアップが多いが……。
「ダブルスタンバイやトリプルスタンバイには、赤ちゃんの月齢が近く、体の大きさが近い子や髪型が近い子などを起用します。アップはもともとメインの子を使い、その他の後ろ向きのときや、動きまわっているときなどはスタンバイの子を使うなどしているので、完成したCMを普通に見る分にはわからないんですよ」
コスチュームや装飾でごまかせない、顔や体のラインがそのまま出ている赤ちゃんでも、月齢や髪型を近づければ、入れ替わっても気づかないものなのか……。
「また、赤ちゃんの撮影には『ベビーハンドラー』といって、赤ちゃんのお世話係というか、赤ちゃん付きの専属スタッフもいます」
ちゃんの体調や機嫌に配慮しつつ、スムーズに笑顔を引き出すのは、そうした「赤ちゃんのお世話のプロ」の成せる技だそう。

激しく人見知りする子の場合は、どうしているのか。
「お母さんから離れると泣いてしまう子の場合、すぐにタレントさんに渡すとダメなので、まずマネージャーがお母さんのかわりにお世話をして、マネージャーに慣れてもらっておきます。そして、お母さんから離して忘れさせておいてから、マネージャーからタレントさんに渡すというワンクッション置いた方法をとります」

他に、赤ちゃんタレントならではの仕事として、「お尻パーツタレント」というものもあると言う。
「たとえば、メインの子を顔で選ぶと、お尻に蒙古斑(もうこはん)がある場合もあるんです。でも、CMに出ている子には蒙古斑はありませんよね? お尻だけお尻パーツタレントの赤ちゃんを使っているからです。そのため、オーディションでは『お尻も見せてください』と頼むことが多く、メインに外れ、スタンバイにも外れてしまっても、お尻パーツで採用されるというケースもあるんですよ」
赤ちゃんの最高の笑顔のCMは、ダブルスタンバイやトリプルスタンバイ、お尻パーツタレント、赤ちゃん専属スタッフやマネージャーなど、多数の人によって作り出された「奇跡の一瞬」なのだ。

ちなみに、子役は経験値や才能、演技力の幅などが異なるのに比べ、赤ちゃんタレントはみんなが「新人」である。誰でも挑戦でき、運が良ければ誰でもテレビCMや雑誌に出られる可能性があるそうなので、興味がある人は、わが子に挑戦させてみては?
(田幸和歌子)