埼玉西武ライオンズオリックスバファローズ福岡ソフトバンクホークスでプレーしたアレックス・カブレラが、禁止薬物の使用で所属するメキシカン・リーグから永久追放された。
 カブレラは日本球界で通算357本塁打を放った後、2012年に母国ベネズエラウィンター・リーグに参加。一時は引退を表明したが、現役に復帰し、2013年には21本塁打でリーグの本塁打記録を更新した。
 2014年からは、メキシカン・リーグのベラクルス・レッドイーグルスでプレーしていた。

 カブレラが禁止薬物の使用を指摘されたのは、今回が初めてではない。2007年に米メジャーリーグで発表された「プロ野球コミッショナー宛て独立調査報告:メジャーリーグ選手によるステロイド及びその他の運動能力向上薬物の違法使用に関して」(通称、ミッチェル・リポート)でも、禁止薬物の使用が疑われていた。

 だがこうして、改めて使用が明らかになると、ショックは大きい。2002年にマークした、当時の本塁打記録である55本塁打も色褪せて見える。

 1986〜2005年にシカゴ・カブステキサス・レンジャーズなどでプレーしたラファエル・パルメイロも、大いにファンを失望させた。

 ボルティモア・オリオールズ時代の2005年に、疑惑が浮上。3月に行われた公聴会に招へいされたが、その場では「まず最初に言わせて下さい。私は決して、ステロイドを使用していません。それだけです。これ以上はっきりとは言いようがありません。決してやっていない」と断言した。
 公聴会には、マーク・マグワイアサミー・ソーサらも出席。明言を避けたり、弁護士を通じてコメントした彼らとは対照的な、パルメイロの毅然とした態度に、議員たちは感動した。

 シーズン開幕後の7月に行われた対シアトル・マリナーズ戦では、史上26人目となる通算3,000安打を達成。500本塁打と合わせれば、ハンク・アーロンウィリー・メイズエディ・マレーに次ぐ4人目の偉業で、記録に立ち会った、当時マリナーズ所属のイチローも、「なかなかこんな機会に巡り合うことはない。貴重な瞬間だった」、「ヒットを毎年200本打っても15年かかる記録。彼は19年間やっているそうですが、それだけ長い間グラウンドに立っていることだけでもすごい」、「とても尊敬している。自分が500本塁打打つなんて、おそらく練習でもありえないし、まさに偉大な業績だ」と、快挙を讃えた。

 だが、興奮が冷めやらぬ翌月に、5月の薬物検査で陽性反応が出たことが発覚。10日間の出場停止処分が科せられた。

 はたして、公聴会での証言は嘘だったのか。偉業達成も、汚れたものだったのか。

 注目が集まる中、パルメイロは「(禁止薬物の使用は)故意ではなかった。知らなかった」とコメント。さらに、「(チームメイトの)ミゲル・テハダからもらったビタミン剤に禁止薬物が含まれていたのでは」との、仲間を売る証言で、ファンを失望させた。
 公聴会での毅然とした態度、相手チームも感動させた偉業達成の直後だっただけに、ファンの失望は大きかった。

 復帰後、ホームゲームでは通算3,000安打を祝うセレモニーが予定されていたが、パルメイロはこれを辞退。さらに敵地での対トロント・ブルージェイズ戦では、ブルージェイズのファンから大ブーイングを浴びた。
 復帰後の成績は、7試合26打数2安打本塁打無し。対ブルージェイズ戦でも快音は聞かれず、この試合がキャリアでの最終戦になった。

 禁止薬物の使用で失ったものは、あまりにも大きかった。