古代エジプトから使われてきた口紅は、女性の唇を彩る不滅のアイテム。ここ数年は、淡いピンクやベージュなどナチュラルな色が主流だったが、ここ最近、若い世代を中心に「赤」人気が高まっている。

 過去に赤い口紅が流行したのは、1950年代の戦後復興期と、1980年代後半のバブル期。再び火が付いた背景には、景気の回復が影響しているようだ。とはいえ、「赤」にもいろいろあるようで――。

「真っ赤な口紅がぐんと売れるようになった」と語るのは、資生堂会長兼社長の前田新造氏だ(日経新聞1月27日朝刊)。同紙のインタビューで前田氏は「化粧品産業は女性の心理と密接に関係している産業。最近はやり出した赤は気分が乗っていて、自己主張が強くなっているときでないと使いにくい色だ。景気が回復しつつある証しと言えるだろう」と続けている。アベノミクスが女性たちの好み、ひいては化粧品業界を動かしていると言える。

 実際に女性誌を見ると、赤い唇で微笑むモデルたちが目に付く。現在発売中の20代向け雑誌『CUTiE』には、真っ赤な口紅を付けたAKB48の小嶋陽菜が登場。月9ドラマ『失恋ショコラティエ』に出演中の水原希子や、20〜30代女性の圧倒的な支持を得ている梨花らの赤も印象的だ。

 芸能人も赤の波に敏感なようで、フリーアナウンサーの夏目三久は年明けに放送された「マツコ&有吉の怒り新党 お正月スペシャル」に、真っ赤な唇で出演。女優の長澤まさみは、昨年秋の「しゃべくり007」で鮮やかな口紅をつけていて、彼女たちのインパクトはネットでも大いに話題となった。

 脱デフレを背景にしたバブル期ファッションの再熱は、口紅に限ったことではない。カーディガンを背中に羽織って両袖を結ぶ「プロデューサー巻き」や、セカンドバックから名を変えた「クラッチバッグ」、女性の間では「タイトスカート」人気も昨年から復活中だ。

 バブルを知らない若い女性たちにとって、赤いリップは新鮮に映っているのだろうか。ライフスタイルジャーナリストの吉野ユリ子氏に、経済だけではない背景を聞いた。

「赤い口紅は単独で流行っているのではなく、黒髪、太い眉、白肌といった最近の流行とセットで流行っているようです。黒髪には、赤い口紅はバランスが良い。そして最近の若い女性は、メイクに対してポジティブです。自分のアラを隠すためではなく、より綺麗になるために、自分が楽しむために、メイクをするという意識が高くなっている。だからナチュラルもいいけど、たまには赤で印象を変えたいという気持ちもあるのではないでしょうか」

 とはいえ、バブル期の赤とは、異なる点もあるという。

「赤と言っても目立つための赤ではなく、健康的な赤、血色のよい赤が好まれています。だから塗り方も、ばっちりではなく、ラフに、たとえばグロスを少し唇におく程度にする。バブル時代は、口紅に限らずファッション全体に、男性に対抗する、あるいは逆に男性に媚びるといった傾向が見受けられました。時代が変わり、現在の女性は肩の力が抜けています。ファッションも、女性らしさを楽しむこと、ヘルシーであることが大事。口紅にもそうした意識は反映されていると思います」(前出・吉野氏)

 ファッションの流行はめぐるもの。だが時代の空気が反映されることは間違いないようだ。