日本経済を下支えしてきた中小企業や町工場がバタバタとつぶれていった。

中小企業や町工場がバタバタとつぶれていくことによって大量の失業者が発生し、それが個人消費の落ち込みにつながていった。また、日本の技術力全般の低下という致命的な問題も、製造業の現場で多発するようになった。

結果として、日本経済全体の体力を弱めてしまったわけだ。

長期投資家は為替変動に一喜一憂せず、投資判断の根拠のひとつにしよう

円高をあたかも国難のように捉え、しわ寄せを中小企業など弱者に押しつけた代償として、日本経済は大きなものを失ってしまった。

円安にしても円高にしても、為替の変動を企業はコントロールできない。ならば、円安なら円安傾向に乗った経営があり、円高のときなら円高を利した経営戦略があるはずだ。

そのようなとき、われわれ長期投資家はマーケットと一緒になって単純に円安を歓迎したり、円高を忌み嫌ったりはなしとしよう。そんな短絡的思考では、どっしりした投資などできやしない。個々の企業が円安なり円高なりで、どういった経営をしているかを見守りつつ、為替変動はあくまで投資判断根拠のひとつとしていこうではないか。

もちろん、ここから先のどこかで円高に振れて株価が大きく売られたら、狙いをつけていた銘柄をすかさず、めいっぱい買おうではないか!

澤上篤人(ATSUTO SAWAKAMI)
さわかみ投信会長

1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『5年後の日本をいま買う長期投資』(小社刊)、『本物の株価上昇の波が来たぞ!』(日経BP出版センター)など著書多数。



この記事は「WEBネットマネー2013年10月号」に掲載されたものです。