欧州の移籍市場が閉まった。レアル・マドリードが約130億円もの移籍金でベイルを獲得したり、長谷部が約5年半在籍したヴォルフスブルクからニュルンベルクに移籍したりと、今年も土壇場で慌ただしい動きがあり、最後まで目が離せなかったね。

ただ、日本人的にいえば、本田のACミラン移籍が決まらなかったことが一番のビッグニュースだろう。メディアは夏の間、ずっとこの話題を取り上げていたわけだし、彼は毎年のように話題を提供してくれて、プロらしいといえばプロらしい選手だ。

まあ、冗談はそのくらいにして、今回は過去の移籍騒動時と比べても、念願のビッグクラブ移籍が限りなく実現に近づいたわけで、さぞかし本人も歯がゆい思いをしているだろう。

では、なぜ本田の移籍は決まらないのか。

代理人の手腕、スポンサーの有無、売る側、買う側のタイミングなど、移籍には選手の実力以外にもさまざまな要素が絡む。今回も本田、ミラン、CSKAモスクワの3者間でいろいろな駆け引きが行なわれたはずだ。

ただ、移籍が決まらなかった最大の理由を挙げるなら、本田の実力不足ということになる。

本当にどうしても欲しい選手なら、ミランは満額の移籍金を払ってでも本田を獲りにいったはず。移籍市場の序盤で話はまとまっていただろう。

でも、ミランは移籍金の金額をケチった。結局、安く買えるなら欲しいという程度の評価で、自由契約となり移籍金がかからなくなる来年1月の移籍市場まで待つことを選んだんだ。


さらに厳しいことを言えば、ミラン以外のビッグクラブはどこも名乗りを上げなかったわけだよね。それが本田の直面する現実だ。

もちろん、本田が欧州で一定の評価を受けているのは間違いない。ただ、欧州でもマイナーなロシアリーグでどれだけ活躍してもインパクトは弱いし、シーズンを通じての継続的なパフォーマンスという意味でも課題がある。

また、トップ下は特に競争が激しいポジション。FW同様、得点というわかりやすい結果が常に求められる。その点、CSKAでの本田は年間ふたケタ得点を一度も決めていない。ビッグクラブが獲得するトップ下としては物足りない数字だ。もう27歳と若くないし、将来性に期待してくれというのも難しい。

仮にシーズン途中の来年1月にミランに加入できたとしても、ポジションを奪えるのか、中心選手になれるのか、現状では疑問のほうが大きいね。

だからこそ僕は、本田には今季、ミランを見返す活躍をしてほしいと思っているんだ。ロシアリーグでたくさん点を取るのはもちろん、何よりチャンピオンズリーグで得点を奪えば、大きなアピールになる。幸いにも、CSKAと同組には昨季王者バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・Cなど欧州中の注目を集める強豪がいる。そこで得点を決め、株を上げ、来年1月に胸を張って移籍してほしいんだ。

本田よりもひと足先にビッグクラブ移籍を実現した香川も、マンチェスター・Uでの2年目のシーズンで大苦戦している。それだけ前線の選手の競争は過酷なわけだけど、W杯を来年に控え、ふたりとも日本代表にも大きく影響を与える選手だし、ぜひ頑張ってもらいたいね。

(構成/渡辺達也)