■安定感のあるプレーを見せた徳永悠平

東アジアカップの第2戦ではセンターバックを元アルビレックス新潟の千葉和彦(サンフレッチェ広島)と鈴木大輔(柏レイソル)が組んでいた。千葉と森脇良太(サンフレッチェ広島→浦和レッズ)ということで言えば広島組とも言えるが、じつはこの日のメンバーは所属クラブがばらばら。同一クラブから複数選手が選ばれたのはFC東京だけだった。

ゴールキーパーに権田修一、左サイドバックに徳永悠平、ボランチに高橋秀人。キャプテンマークを高橋が巻き、東京色の強いメンバーになっていた。負ければ東京ファンが肩身の狭い思いをするところだったが、かろうじてオーストラリアに勝ち、面目を保った。

連勝で優勝を決めた第3戦では第1戦のメンバーがプレー。森重真人が先発、徳永が途中出場を果たした。今大会ではザッケローニ監督による指示か、役割が整理されていたようで、東京での森重のように、ボールをキープして持ちあがるなどの余技の部分は影を潜め、センターバックとして中央を固めて跳ね返す地味な作業に徹していた。

この試合では徳永が安定したプレーを見せて右サイドをしっかりと守り、韓国の勢いを減衰させた。東京のランコ ポポヴィッチ監督も「あきらかに徳永が入ってから流れが変わった。頭もいい状態で整理されていたし、いいアイデアを持ちながら、賢くプレーできた」と絶賛のプレーだった。徳永を再評価する声が多く上がった。

観ているこちらが試合中に「安定しているな」と思っていたら、選手の側もそう思っていた。森重は「やっぱり“徳永の安定感(笑)”というのがこの試合のキーポイントだったんじゃないかなと」と、笑いながら高く評価した。

■徳永と森重は一定の評価を得たが…

しかしそう言っている森重を高く評価したのは徳永である。

徳永は帰国後「自分は)途中からしか出ていないですからね。あいつは前半からずっと集中してやっていたし、しっかり相手を抑えて、前半から頼もしく観ていました」と、中で耐えしのぐ森重を称えた。森重もまた、あらためてサッカーファンの注目を集める存在に浮上した。

失点が多かった(3-3、3-2、2-1、三試合で6失点)今大会でセンターバックが酷評されてもやむをえない面はある。しかし栗原勇蔵、千葉和彦、鈴木大輔と合わせた四人のなかでは、落ち着きという点で森重が比較的抜きん出ていた。代表常連の権田と高橋もどちらかといえば好印象の部類で、プラスの評価で大会を終えることができたと言える。

選考レースという観点では権田と高橋以外のふたり、森重と徳永が、今後代表メンバーに残っていくかどうかは定かではないが、選考基準より上に位置することができたのはひとつの成果だろう。

だが翻ってリーグ戦の順位を見ると、それほどに守備が強いはずの日本代表メンバーを擁する東京はJ1で8位の中位チームだ。得点と失点だけを取り出してみると4位の浦和レッズとほとんど変わらないのに、勝点は5も離れている。

どういうことか。負け数が多いのだ。

■FC東京が代表から学ぶべきこととは?

東アジアカップの日本代表の主力選手を供出した上位チーム、サンフレッチェ広島、横浜F・マリノス、セレッソ大阪は3敗。浦和レッズと鹿島アントラーズは4敗に留まっている。

権田、高橋、森重、徳永は、個として強くたくましい姿を見せたが、その守備が堅いというイメージは東京には直結していない。東アジアカップの日本代表は局面でいいプレーをするだけでなく、第3戦では90分間じっと耐え抜き、勝つための試合運びができた。しかし東京はその点がまだ不十分だ。

権田は言う。
「サコ(大迫勇也)はここぞというところで点を獲る。“ここで獲ったら相手は落ちる”というんですよ。それをわかってやっている」

第2戦で勝利の立役者となった大迫の所属する鹿島は、まさに勝つための試合運びを知り尽くし、徹底しているクラブだ。そして大迫がピッチにいるとき、鹿島は「チーム大迫」になる。守備に、チャンスメークに、フィニッシュにと、ヨハン・クライフを超えようかという働きをする大車輪ぶりが印象に残るが、加えて、相手の息の根を止めるゴールハンターという表情も色濃い。

試合運びの点では広島や浦和や鹿島に一日の長があるのは明白だろう。東京が代表から学ぶべきは負けないことだ。実現できないわけではないと思う。日本代表が四人も含まれているのだ。やってできないことはない。

■著者プロフィール
後藤勝
東京都出身。ゲーム雑誌、サブカル雑誌への執筆を経て、2001年ごろからサッカーを中心に活動。FC東京関連や、昭和期のサッカー関係者へのインタビュー、JFLや地域リーグなど下位ディビジョンの取材に定評がある。著書に「トーキョーワッショイ」(双葉社)がある。
2012年10月から、FC東京の取材に特化した有料マガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」をスタートしている。