ブラジル、イタリア、ロシア、フランス、スペイン。欧州でこれらの代表チームのサッカーを見た。ブラジル対イタリア。ブラジル対ロシア。フランス対スペイン。対戦カードでいうならばこの3試合。

 この中で一番心配になるのはブラジルだった。昨年11月末にルイス・フェリペ・スコラーリを新監督に迎えると、ブラジルの評価は突如上がった。ブックメーカー各社は、2014年ブラジルW杯の優勝予想の筆頭に推した。

 だが、イングランドと戦った就任初戦は1対2。内容もよくなかった。イタリア戦はその第2戦。中立地のジュネーブで行われた。こちらの結果は2対2。前半2対0でリードするも、後半イタリアに追い上げられかろうじて引き分けに持ち込んだ。

 3戦目はその4日後。3月25日、ロンドンのスタンフォード・ブリッジで行われたロシア戦。結果は1対1ながら、内容的にはロシアの勝ちゲームだった。ブラジルの同点ゴールは試合終了直前で、その直前に、スタンドからピッチに乱入者が侵入したために、ロシアの準備が整わない中で生まれた、評価に値しない得点だった。

 3戦して2分け1敗。結果以上に内容の悪さが目に付いた。ブックメーカーは相変わらず、ブラジルを筆頭に推すが、それは開催国という地の利を最大限に見積もったものだと思う。

 逆に、最もよく見えたチームは、そのブラジルに事実上の勝ちゲームを演じたロシアになる。欧州予選の現在の成績はF組1位。ブックメーカーの優勝予想では11番目にランクされている。ダークホースになり得る存在と見られているわけだが、ブラジル戦はその可能性を高く感じさせる一戦だった。

 特質すべきは、ボール試合率でブラジルにさほど劣らなかった点だ。4−3−3ともいうべき4−1−4−1の攻撃的布陣から、ピッチの隅々を使ったダイナミックなサッカーを展開。パスもよく繋がった。ロシアのサッカーといえば、伝統的にパスワークを売りにしているが、監督がイタリア人のカペッロに代わっても、その魅力は失われていない。展開力という点では、観戦した5チームの中では一番だった。

 イタリア、スペイン、フランスは横ばい。可もなく不可もなくだ。ユーロ2012の成績はイタリアが準優勝で、スペインが優勝。フランスはベスト8。最も奮起が望まれるのは、かつての世界チャンピオン、フランスになるが、スペイン戦(W杯予選)では、ホームゲームだったにも拘わらず、相手に75%もの支配率を許してしまった。結果は0対1。カウンターでチャンスをつかみ、惜しいシュートも何本か浴びせかけたが、かつての栄光を知るものには、スケールの小さなチームに映った。

 リベリーのワンマンチームであることもハッキリした。彼がカウンター攻撃の一員として、いい感じでボールに絡んだ時でないと、チャンスは拡大していかない。例のブックメーカーの優勝予想ではフランスは10位。11位のロシアが、無欲で臨めるダークホースであるのに対し、フランスは守るべきモノがあるチーム。体面を守る必要のあるチームだ。スペイン戦で、引いて構えてしまったのはその意識の表れに他ならない。

 スペインにとっては、結果を欲しがらずにキチンと前に出てくる相手の方が嫌だったはずだ。フランスの問題は「10番手」であるにも関わらず、ダークホースではない点。もちろん優勝候補ではない。その、どちらにもなれない立ち位置に不幸を感じる。過去を捨て、チャレンジャーに徹した方が得策だと思うが。

 スペインは、ルイス・フェリペ・スコラーリがブラジル代表監督に就任するや、ブックメーカーの優勝予想で2位に後退。そして、W杯予選でフィンランドに引き分けると、アルゼンチンにも抜かれ3位に後退した。