先週末に行われたプレミアリーグで、試合そのものよりもはるかに注目を浴び、今なお多方面に拡大中の問題がある。マンチェスター・ユナイテッドのリオ・ファーディアンドを筆頭に、計35選手が人種差別撲滅キャンペーンTシャツ着用を拒否した一件だ。

"Kick It Out"という、フットボールにおける人種差別問題に取り組む団体のTシャツには“One-Game-One-Community”とコミュニティの一体化を訴えるメッセージがプリントされ、選手たちが試合前のウォーミングアップで着用することを期待されていた。しかし、ファーディナンドは指揮官に何の断りもなくTシャツを着用せず、これがアレックス・ファーガソン監督の逆鱗に触れたのだ。

試合後のインタビューで、ファーガソン監督は「(自分の指示を無視して)Tシャツ着用を拒否するとは何事だ」とファーディナンドの取った行動を批判したのである。

ファーディナンドとファーギーの関係悪化が原因だとする見方もある。だが今回の騒動は、約1年前、実弟アントンに対するジョン・テリーの人種差別的発言問題の際に、"Kick It Out"から十分なサポートを得られなかったファーディナンドが、同団体に不信感を募らせたことに起因する、というのが大半の見解だ。先週金曜日に、"Kick It Out"の会長を務めるウーズリー卿が、ラジオのインタビューで「すでに強力な発言権を持つ“非常に裕福な”黒人選手のために意見を述べるつもりはない」と語ったことが、選手たちの反感を買ったようだ。

黒人選手に対するサポートの欠如を痛感したファーディナンドは、選手たち自らが出資して“The Federation of Black Players”(黒人選手連盟)という、他民族のバックグラウンドを持つ選手であれば誰でも参加できる新たな機関を発足させるべく水面下で動いているとの噂もある。

ところで、ファーガソン監督は「問題はコミュニケーション不足だった」としてファーディナンドとの良好な関係をアピールしているが、24日のCLブラガ戦ではファーディナンドを先発起用しなかった。ベッカムやファン・ニステルローイ、キーンといったユナイテッドのスター選手たちが、過去に指揮官と確執の末に退団しているだけに、ファーディナンドも今シーズン限りでオールド・トラフォードを去るのが確実になったとの見方が強まっている。人種差別問題と共に、ファーディナンドとファーギーの関係にも注目が集まっているのは言うまでもない。