スパイダーマン、アイアンマン、キャプテン・アメリカ……アメコミヒーローはたくさんいるけど、アメコミってどうやって見ればいいの? 「BRUTUS」7月15日号は、アメコミの見方や、マーベルのキャラクター相関図の特集記事を掲載。これを読めば、アメコミとアメリカの歴史が大まかにわかる?!

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今「アメイジング・スパイダーマン」上映中ですね。
見るなら絶対3Dで! なぜなら奥行き意識したアクションがめちゃくちゃ多いからです。
スパイダーマンのウェブアクション、ものすごく細かいところまで色々描写されているマニアックな作りになっているので必見ですよ。ウェブボールやウェブスウィングはもとより、パチンコみたいに引っ張って飛んでいくスリングショットまで再現されていてニヤニヤです。
さて、映画版を見て「あれ?」と思った人もいるはず。
というのも、今までのサム・ライミ監督版の「スパイダーマン」シリーズと、キャラクターの性格が全然違うから。
まずサム・ライミ版でピーター・パーカーが想いを寄せていたメリー・ジェーンは出ません。ヒロインは優秀な警部の娘グウェン・ステーシー。ラブラブです。
ピーター・パーカーも比較的明るくてポジティブ。ちょっと弱気ですが「苦悩するヒーロー」っぽさは(現時点では)あまりないです。うじうじしておらずカラッとハッピーでおしゃべり。行動的で、ウェブシューターという機械も自作です。
あれれ?
でもこれ、マンガ原作シリーズを読んだことがある人なら納得のはず。おしゃべりでお調子者な一面を持っているスパイダーマン像のイメージが強い方は、アメコミファンなら多いでしょう。特に今回は高校生時代の「アルティメットスパイダーマン」がベースになっています。
あ、東映のは別ですから。
 
アメコミの映画化、ここしばらく非常に多いですね。
そしてついにこれからクロスオーバー作品「アヴェンジャーズ」が公開になります。
キャプテンアメリカ! マイティー・ソー! アイアンマン! ハルク!
どんだけアメリカ人はアメコミ好きなんですか!

……と思ったら、違うんですよ。
「アメリカではこの手のコミックは誰もが読んでいるものではありません。そもそも「スパイダーマン」のコミックがヒットしたのは1960年代。その後はアニメなどで放映されたので、子供の頃に見ていたという人は多いですが、現在もコミックをフォローしている人は、昔から読み続けている一部マニアが中心で、読者層は高齢化しています。アメコミを売っている店は大きな町に1、2軒しかない現状ですから。子供たちは、「キャラクターは知っているけど、物語は知らない」状態」
映画評論家の町田智浩は書きます。
えーっ、そうなの!? みんな知ってて当たり前じゃないのか……。

「BRUTUS」7月15日号は、非常にわかりやすーく、アメコミの構造と見方を解説してまとめています。
そもそもアメコミは、一人の人が描いていません。会社がキャラクターを保有して、いろいろな人が描きます。
有名なのは『バットマン』『スーパーマン』のDCコミックと、『スパイダーマン』『X-MEN』のマーベル・コミック。
だから、『スパイダーマン』でもいろんな人が描いているので、色んな性格があって当然なんです。グウェンなんて原作のスタン・リーが知らないところで話の都合で殺されてますしね。あるときはグリーンゴブリンに、あるときはカーネイジに。殺されすぎです。
それでもなんでも「あり」なのがアメコミの面白いところ。つまり時代とか流行を反映させやすいのです。

この雑誌ではマーベル・コミックを中心にして解説を進めていきます。
「アメコミの読み方」という特集では、4つのテーマで解説されています。

1・キャラクターを楽しむ
2・アートワークを楽しむ
3・時代を感じ取る
4・構造を知る

3なんかは面白いですよ。第二次世界大戦中からあるアメコミのヒーロー『キャプテン・アメリカ』。彼がヒトラーぶん殴ってますからね。時代ですね。
また2012年5月にオバマ大統領が同性婚を支持しましたが、その後『X-MEN』でなんとゲイのプロポーズからのゴールインが!「正義を体現するキャプテン・アメリカ。アメリカの繁栄を象徴するアイアンマン。マイノリティとしての自由を追い求めるX-MEN。そのすべてが複雑に混じりあうのがアメリカであり、現実社会と呼応し合うかのように、彼らが住むユニバースも、時代とともに揺れ動いていく」
アイアンマンにしろ、スパイダーマンにしろ、昔から「同じ」ではないんです。その時代にあわせてリメイクされ、キャラクターを強めら、描き直される。だから映画が面白い。

4の構造を知るのテーマでは、クロスオーバー作品『シビルウォー』を題材に、ヒーローたちの構造を解説します。
これから公開される『アヴェンジャーズ』もそうですが、そもそもヒーローがクロスオーバーして活躍するなんて、最高にしびれるわけですよ。町山智浩は「北欧神話の雷神様であるマイティー・ソーと元ソ連の女スパイのブラック・ウィドウが同一空間にいることの異常さは、『聖闘士星矢』に『ゴルゴ13』が出てくるみたいなもんですよ」と言っていますがまさにそのとおり。
しかも『シビルウォー』では、超人登録法という法律に賛成するアイアンマン、反対するキャプテン・アメリカ。アヴェンジャーズ真っ二つにわかれて戦わないといけなくなっちゃうんです。こりゃびっくり。

他にも、アメコミ文化と日本の文化の違いなども掲載されており、マーベル・コミックシリーズとアメリカの歴史を追うのにもってこいの内容になっています。
アメリカ人は国に対する公的精神が強いのでヒーローが生まれやすいけど、日本は戦う理由がバラバラ、とか。
惜しいのはDCコミックについてあまり触れられていないことですが、これは今後公開される『ダークナイト・ライジング』にあわせてなにかやってくれるはず!と期待しつつ待つことにします。
とにかくアメコミ関連の資料はなかなか手に入らなく(翻訳されても途中で刊行されなくなることもざら)、大きな固まった概要がわからないことが多いので、入手しやすい雑誌でまとめてくれるのはオイシイ。
ざっくりした内容でわかりやすくまとまっている上に、結構おいしいマーベルのキャラクター相関図を見ることができるのも高得点です。

余談ですが、最近素晴らしいと感じたアメコミは、ヒーローが全員ゾンビになった『マーベルゾンビーズ』です。
自由ですね。

「BRUTUS」7月15日号

(たまごまご)