国際動物福祉基金(IFAW)はこのほど、中国はかつての日本を抜いて、世界最大の非合法な象牙取引の市場になっていると指摘した。中国では、合法的に流通する象牙を扱う許可を持つ業者があるが、同じ業者が「非合法」な象牙も扱うことが常態化している。そのため、製品の由来が分からなくなる「象牙ロンダリング」現象が発生し、事態がさらに悪化しているという。新浪網などが報じた。

 象牙の輸出入は野生動植物保護のワシントン条約(CITES)により禁止されているが、「例外的措置」として中国と日本への輸出が認められる場合がある。扱うのは自然死をした象などから採取した象牙で、数量なども管理した上で、日本と中国の業者に競売の形で販売している。

 しかし、中国国内では「非合法な象牙」が多く流通している。IFAWが2011年9月から10月に北京、上海、広東、福州などで象牙製品の販売店や加工工場158カ所を調査したところ、政府の許可を得ているのは57社で、非合法に営業/操業していた業者は101社だった。

 象牙の取り扱いを許可されている57社についても、約6割は「非合法な象牙」を扱っていた。中国で「非合法」に流通している象牙は「合法的」な象牙の6倍に相当すると推定できるという。

 正規の経路を経て生産された象牙製品には来歴などを記録した国家の証明書が添付されるが、「合法的な象牙業者」も消費者に対して「証明書は申請しない方がよい」と“アドバイス”していた。「時間がかかる。半年から1年待つことになる」、「高額な費用がかかる」などと説明していたが、実際には多くの製品が「非合法」でるため、証明書を発行することができなかったという。

 中国では裕福層の拡大とともに象牙に対する需要が急拡大した。中国国内の未加工象牙の価格は2011年初頭には1キログラム当たり1万元(約12万1800日本円)だったが、年末までには1万5000−2万元(約18万2700−24万3500日本円)に値上がりした。象牙は価格が上昇しているため、投機の対象にもなり、価格上昇に拍車がかかったという。

 象牙はCITES締結にともない、1989年に貿易が禁止された。すると価格が下落して密猟も減少した。しかし、アフリカの一部国家で象の「間引き」の必要が生じ、象牙の在庫が増えた。1999年には日本向けに一度限りの条件で象牙の輸出を実施。2007年にも日本への輸出が認められ(60トン)、08年には競売で日本と中国への輸出が認められた(120トン)。

 ところが、合法的な象牙取引が再開されると、アフリカに赴いて非合法象牙の買い付けを行う中国人が続出するようになった。中国は合法的な象牙輸入も認められているので、中国国内で非合法象牙の由来を分からなくする「象牙ロンダリング」も容易で、事態をさらに悪化させているという。

 IFAWアジア地区総代表特別助手の何勇氏は「第1回の競売が行われた後、中国国内では象牙の取引が管理できない状態になり、世界規模での密猟と違法取引が多発するようになった」と指摘。CITESの関係者も、象牙の取引を禁止する1989年の措置を今後も維持すべきとの考えを示したという。

 CITESは2005年時点で、「中国は非合法な象牙取引にかんして最も影響がある国家」と指摘していた。(編集担当:如月隼人)