『さくらのクラウド』を支える最新鋭の石狩データセンターが開所 その内部を見学してきました
さくらインターネットが11月15日に開始した、1コアCPUと2GBメモリーで月額2500円から利用できるクラウドサービス『さくらのクラウド』。このサービスを提供する石狩データセンターの開所式が同日に開催されました。北海道の冷涼な気候を利用した、低コストで高効率な外気冷房を採用し、モジュール式に拡張可能な最新鋭のデータセンター内部を、開所式で開催された内覧会で実際に見てきました。
石狩データセンターは、都市部と比べて土地・建物の初期費用が抑えられる郊外型データセンターとして計画。東京ドームの1.1倍という広さの敷地に、最大500ラックまで設置できる分棟式の建物2棟に200ラックを設置してサービスを開始しました。石狩は地震や津波などの自然災害のリスクが低く、さらに2系統で電力供給を受け、NTTとKDDIの2系統の光ファイバーへ接続することにより、災害や障害時などにサービスが停止するリスクを分散しています。
同じ敷地内に、最大8棟、4000ラックまで設置が可能。サーバールームには100ラック単位でサーバーを追加でき、非常用発電機やUPS(無停電電源装置)をサーバールーム単位で追加するモジュール構造を採用しているため、追加時にそのときの最新技術を採用することができます。
最大の特徴は、屋根からキノコの傘のように覆った建物の外壁下部から冷たい外気を取り込んで施設の冷房に利用する外気冷房システム。空調を利用する場合と比べてエネルギー効率がよく、値が1.0に近づくほどよいとされる指標のPUE(Power Usage Effectiveness)は通常で1.1、夏に従来の空調を組み合わせて運転しても1.21という値を実現するそうです。これにより空調コストを約4割削減できます。
●内部を見学
前置きはこれぐらいにして、中を見てみましょう。内覧会で最初に案内されたのが、建物2階部分の外壁内側にある、サーバーの排熱と冷たい外気を混合する空調スペース。
足元で空気が混合されています。
続いてサーバールームへ。サーバーを収納したラックがズラリと並んでいます。混合した空気は壁から吹き出す方式と天井から吹き出す方式の2通りでサーバールームに送られ、室内を冷房する仕組み。
1階に下りて、供給された電力を6600Vに変圧する特高電気室、夏の間稼動する冷凍機を置いた熱源機械室、特高電気室から来た電力を400Vに変圧する高圧電気室の順に見て回ります。データセンターの利用者でもサーバールーム以外の施設に入ることはまずないので、貴重な体験です。
同じく1階部分にある、外気を取り込む口であるチャンバールームも見学できました。取り込んだ外気はフィルターを通して建物内に送られます。
2階へ戻って監視センターでは、スタッフが施設の稼動状態を監視中。モニターでは稼動状態を表示していました。PUEは1.28となっていましたが、この日は内覧会でサーバールームに出入りする人が多く、実際の稼動時にはもっと良い数字が出るものとみられます。
●高電圧直流システムを実験中
建物の外には、コンテナ型のデータセンター施設が。こちらは、従来の交流(AC)と比べて電力損失が少ない高電圧直流(HVDC)の給電システムを稼動して検証している施設。さくらインターネットに加えてNTTデータ先端技術、河村電器産業、日商エレクトロニクスが参加しています。交流と直流の変換工程を削減でき、90%以上の電力効率を実現するとのこと。
サーバーはDC12V駆動の実験用サーバーをそろえて稼動中。モニターを確認したところ、91.52%の電力効率を達成していました。
●ソーシャルゲームのサーバー増設ニーズにこたえる
この日は記者発表とテープカット、データセンターの始動式が行われました。テープカットにはさくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏に加えて、高橋はるみ北海道知事、田岡克介石狩市長、大成建設副社長執行役員の多田博是氏が参加。テープカットと同時にサーバーに電源が入りました。
記者発表では石狩データセンター設立の背景として、田中氏がソーシャルゲームの隆盛を挙げ、ソーシャルゲームのプラットフォーム事業者やゲーム提供業者がサーバーを増設するニーズが増えていると説明しました。ソーシャルゲームのユーザーは日本全国にいるため、サーバーの設置場所は国内ならどこでもよく、低コストで増設可能な石狩データセンターに引き合いがあるとのこと。一方で、これまで都市部にサーバーを置いていた一般企業も郊外型データセンターに注目しており、利用が進む見通しを立てています。
この日の模様は動画で撮影しています。後日公開の際にはこの記事に追記しますのでお楽しみに。ちなみに、出席者にはデータセンターの建物と同じ形をした箱のお土産が。中身はカステラでした。