北京で行われたイタリアスーパー杯でミランに敗れたインテルは、続くリーグ開幕戦、そしてホームでのチャンピオンズリーグ第1戦と3連敗を喫した。パレルモ、そしてトルコのトラブゾンスポルという格下相手の敗戦に、今季就任したばかりのガスペリーニ監督の去就が高い注目を集めている。

「3バックなんて、やめてくれ、マジで。あんな試合眠くて見てられない」
 インテリスタのタクシードライバーが嘆く。

「サンシーロへ」と現地記者がイタリア語で行先を告げた途端、運転手の愚痴が爆発する。イタリア語がわからない私にも彼の気持ちは伝わってくる。彼の言葉を通訳してもらったあと、「モウリーニョが来ていい時代を経験したからねぇ」と私が日本語でぼそっとつぶやいた途端、「モウリーニョ!! 本当に素晴らしい監督だった。世界一の監督だよ。彼のような監督を連れて来なくちゃいけないのに、それができないインテルは本当に情けない」と運転手が再び声を上げる。

 リーグ5連覇、チャンピオンズリーグ優勝と栄華を誇ったインテル。マンチーニ、モウリーニョ時代に味わった甘い時間をインテリスタは忘れられないのだろう。
「まだ3試合じゃないの」と言っても、運転手は黙ってクビを横に振るだけ。4−3の勝利よりも1−0の勝利を好むイタリア人は、サッカーに関しては現実主義者だと言われるが、同時に悲観論者なのかもしれない。

■物悲しいサンシーロ
 9月18日のローマ戦は、セリエAホーム開幕戦だったが、試合開始前の雷雨の影響なのか、観客席上段に空席が目立つサンシーロはなんだか物悲しい。そして、0−0で終わった試合の大半、プレス席側の一般席ではインテリスタの罵声が飛び交っていた。79分には、FWフォルランに代わり、MFムンタリが投入されるとスタジアムは大ブーイングに包まれた。これはゴールを決められなかった新加入のフォルランへのブーイングではなく、守備的な采配をした監督への抗議だった。

「失点したくないという気持ちが監督も強かったみたいで、前日練習からしっかり守備の形というのを練習してきたから、今日はゼロで抑えられて良かったとは思うけれど、ホームなので勝たないといけない」

 試合後の長友の言葉を裏付けるように、監督会見でガスペリーニは言った。

「インテルは現在けが人も多いし、ローマが相手ということで、ディフェンスラインを下げて、守備からカウンターを狙おうと考えていた。インテルの選手にとっては慣れてないサッカーだったが、忠実にプレーしてくれた彼らの忠誠心を感じた。決定機はインテルにあったし、それを決めていれば、インテルが勝ってもおかしくはない試合だった」

 4バックで戦ってきたチームに3バックを導入した指揮官は、結果が出ないことから、まるで下位チームの監督のようなコメントを残したのだ。

「初戦に比べれば内容は間違いなく良くなっている。ただ、この前の試合と同じであれだけのチャンスを決められない中で勝つのは難しい。決めるところを決めないと試合には勝てない。
 僕は勝ちたいという強い気持ちだけでやっていましたけどね。なかなか、点に結びつかず、悔しいけど自分としては、チャレンジするところはできたと思うし、下を向かずに前を向いてこれからもチャレンジしていきたいと思う」

 試合開始時には右MFで出場した長友は、後半途中から左MFへとポジションを変えている。インテルは前半から何度も右から攻撃を作っていた。しかし左へ行くとボールが出て来ない。長友の苛立ちが伝わってくる。

「ボールが来ないぶん、守備で貢献しようと考えていた。最後の時間帯ではボールが来たけれど、まあ、こういう試合もあります」