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今回はいろいろと種類のあるトマソンの中でも都心部、市街地において比較的発見しやすい、原爆タイプのトマソンについてご紹介します。ちなみに主観ですが、東京都内で見ることのできるトマソンとしては、この原爆タイプトマソンが圧倒的に多いと思います。きっとあなたの身の回りにもありますよ。

 さてこの原爆タイプトマソン、ぎょっとするような名称だし、人によっては不快に感じるかもしれないのですが、命名当時から同じような懊悩はあったようです。
さっきの焼印といい、これといい、これらは広島を思い出します。原爆タイプという名前をつければ、あまりにもエグいでしょうか。原爆の日に、広島市内の銀行の石段に坐っていた人の影がそのまま焼きついていた、あれです。あれと同じ原理です。この建物の影が、そのまま人間存在の影のようです。その影を焼付けたものが、原爆とはまた違う複雑な事情のエネルギーですが。
〔「超芸術トマソン」赤瀬川原平著 ちくま文庫 1987年 ISBN4-480-02189-2 より〕

 とあるように、「超芸術トマソン」筆者の赤瀬川原平氏もちょっと抵抗を感じながらも命名した原爆タイプトマソン。何か違う名称をつける事も考えたのですが、敢えてそのまま原爆タイプトマソンという名称で呼ぶことにします。


 では早速、原爆タイプトマソンとは何か。


 こちらは1枚目の写真の風景を正面から撮影したものです。土留の擁壁にくっきりと、家屋のようなものの跡が残されています。これが、原爆タイプトマソンです。かつてはここに家屋あるいは小屋があったのでしょうが、それが撤去されて現在はただ跡のみが残っているという状態です。


 つまり原爆タイプトマソンというものは簡単に言いますと「何かがあった跡」なのです。それがなぜ都心部、市街地に多いのかと言いますと、

(1)住宅・ビルの建て替えや再開発による取り壊しが多い。
(2)建物自体が密集しているため、跡が残りやすい。

という理由があります。裏をかえせば建物を壊さなければ発生しないトマソンだし、取り壊した建物の脇に影を映すものがなければまた発生しない、というものなのですね。そして原爆タイプトマソンを発見するためには、空き地の存在が必須と言っても過言ではありません。


 ではいくつか原爆タイプトマソンの具体例を挙げていきます。

東京都中央区銀座で発見。空き地の際に見えるのは、三角屋根の住宅が隣接していたと推測される原爆タイプトマソン。

神奈川県横浜市中区野毛で発見。繁華街にぽっかりとできた空き地の奥に、かつての住宅の跡を残しています。

東京都港区浜松町で発見。建物がなくなり、駐輪場と原爆タイプトマソンが残りました。

東京都新宿区にあったのは、道路拡幅を伴う再開発の準備段階で既に消えたビルの跡と、それを映すこれから消え行くのかもしれない建物。

東京都中央区銀座。ビルの跡の上に広告看板が設置され、空き地は時間貸駐車場に。無駄のない土地と壁面の利用。


 ざっと挙げていきましたが、いかがでしょう。言われてみればこんな風景を目にした事のある方いらっしゃいませんか?特に後半の三点は、都心部でよく見かけるビル跡の原爆タイプトマソンです。殆どの街に、一点はあるのではないかと思います。


 ちょっと意識を持ってみると、そこにはかつてあった建物の跡が、赤瀬川原平氏言うところの「複雑な事情のエネルギー」として残っています。みちくさついでに空き地や駐車場を見かけたら、原爆タイプトマソンを探してみては、いかがでしょう。




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