厚労相が新型インフルエンザの疑いを会見するまでした騒ぎは、とりあえずその発症が否定されて収束した。しかし、緊急時にもかかわらず、厚労省と横浜市との連絡が付かないなど、今後の課題も浮かび上がってきている。

厚労相の表情はひきつり、声はうわずっていた

   物々しい深夜の緊急会見だった。

   舛添要一厚労相が会見したのは、一般家庭が寝静まった2009年5月1日午前1時半。横浜市内の私立高校2年の男子生徒(17)が、簡易検査で新型インフルエンザと同じA型の陽性反応が出たことを受けたものだった。

   「今の段階でいたずらにパニックになる必要はない」。こう言いながらも、舛添厚労相の表情はひきつり、声はうわずっているようだった。

   男子生徒は、高校の修学旅行でカナダを訪れ、4月25日の帰国から4日目に高熱が出るなどしていた。カナダでは、新型インフルの感染者が19人確認されている。

   記者会見の後、横浜の地元やネット上では不安が広がった。高校では、1日から臨時休校にし、横浜市では、ほかの生徒らを調査し始めた。市には、市民らからの問い合わせが相次ぎ、対応に追われた。ネット上では、ブログなどで体調不良を訴える生徒の例が次々に報告され、騒ぎが拡大していた。

   ところが、国立感染症研究所の遺伝子検査で、1日夕になって、新型インフルでないことが判明。厚労省の発表によると、季節性のAソ連型だった。

厚労省と横浜市、緊急時に連絡つかず

   新型インフルの脅威はいったん去ったものの、今回の騒ぎでは、行政間の連携プレーのまずさが浮き彫りになった。

   舛添厚労相は、2009年5月1日朝の閣議後会見で、横浜市の担当部署と電話が一時通じなかったと批判。「県民、市民の生命を守る最終責任者は、知事であり市長だ。もし情報が上がってなければ、組織として危機管理の体をなしていない」とまで言った。

   これに対し、横浜市の健康安全課では、「大臣の会見を知らせるテレビのテロップが流れてから、問い合わせの電話が嵐のように来て回線がふさがってしまいました」と釈明。中田宏市長は、「大臣自身が落ち着いた方がいいですね」と不快感さえ示した。

   同課によると、厚労省とのホットラインなどはなく、代表・直通電話で連絡を取っているという。

   理化学研究所の永井美之感染症研究ネットワーク支援センター長(ウイルス学)は、新型インフルと判明する前の深夜会見について、「それは仕方がないですね。そのうえで、淡々と検査を進めるしかありません」と話す。厚労省と横浜市との連絡がうまくいかなかったことについては、「つながらなければ、個人の携帯電話で連絡を取ればいいだけでは。ホットラインを設けなくても、携帯やネット上のネットワークをしっかりすることが大事でしょう」と指摘している。

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