今、単身女性のおよそ3人に1人が貧困に苦しんでいるとも言われている。

 もえさん(23)も、非正規雇用で一人暮らしをする厳しさを痛感している。高校卒業後に正社員を目指したが、今も願いは叶えられていない。親が厳しく、反対を押し切って実家を出てきたため、仕送りはゼロ。平日朝9時〜夕方5時30分までフルタイムの事務職の給料はおよそ12万円。「家賃が7万5000円位で、月収が12、3万なので生活はかなり厳しい。自由に使えるお金はほとんどない」。1日に使えるお金は1000円にも満たない。
 


 「やっぱり昼1本でやっていくってなると厳しいから、夜のお仕事、キャバクラも一緒にやってる。7万5000円を払いながら引っ越すお金を貯められないので、そのお金を貯めるためには昼の仕事一本じゃ無理だなって思った。今日もこれから出勤」。 主に週末を利用、週に3回出勤する。昼の仕事も合わせ、1週間ほぼ休みなく働き、ようやく月に15万円ほど収入が増えたという。午前2時、帰宅したもえさんは「今日は結構飲んだ。いただいたお酒のバックがあるので、諸々引かれて2、3万いかないくらい稼いだ」と話した。

 洋服は数百円で買えるネットの古着通販のみ。「友達に誘われても、楽しい気持ちで"あ〜行きたい"って言えない。やっぱりお金のこと考えちゃうし、いちいち惨めで劣等感を感じた」。友達とカフェで飲むコーヒー代500円ももったいない。ご祝儀が包めないため、友達の結婚式も欠席した。
 

■「1時間で3万円も貰えるんだったらっていう考えで」


 もえさんに限らず、非正規で働く女性のおよそ15%が風俗や水商売など、仕事を掛け持ちしているというデータもあるという。

 そんな女性たちの心の叫びを描き話題となっているのが、ノンフィクションライターの中村淳彦氏による『東京貧困女子。』だ。厚生労働省の基準では、1人世帯で、給料から税金などを差し引いた可処分所得が年間122万円以下の人を相対的貧困であるとしているが、中村氏は「非正規だったら、家賃を入れればほとんどが貧困に該当するラインになる」と指摘する。
 


 同書にも登場する山田さん(26)に話を聞くことができた。

 現在、コールセンターのアルバイトで得られる月10万円ほどの収入に加えて、風俗・AVの仕事をしていて、月の収入はトータルで50万円ほど。AVのスカウトを受けて出演を決めたのは、大学4年生の時だといい、企業の内定も辞退した。理由は、利子も含めた奨学金の返済。卒業と同時にのしかかる400万円という金額と、17万円ほどの初任給を前に、正規雇用であったとしても返済に不安を覚えたからだという。「無理だ、って。家賃払って、光熱費払って、交通費払って、食費払ってとかってやってたら無理だって。貯金が1銭もできないなみたいな。ただ不安になっちゃって」。
 


 中村氏は「本来は夜の仕事をすべきでない子たちが、どんどんそっちに誘導されちゃっている現実がある。とにかくお金がなくて大変な現役の大学生がいるということを伝えたい。業者もそういう事情をよく知っていて、困っている女の子を狙い定めて口説いていく」と話す。

 以来、100本以上の作品に出演、時間を見つけては風俗の仕事もしている。「1時間で3万円も貰えるんだったらっていう考えで。比較的、貯金もできるようになっている状況。やりたいこともあるし、今のままずっと、とは考えてはいない。奨学金の返済が終わったら、というところだ」。
 

■「日本が実力主義に変わったという現象の一つだと思う」


 幻冬舎の箕輪厚介氏は「誰でも大学に入れて、4年間遊び狂って、新卒で会社に入れて、そこそこ給料も上がるというのは、日本が伸びていた時の幻想だ。日本が実力主義に変わったという現象の一つだと思う。ぶっちゃけ風俗だろうがAVだろうが普通の仕事だろうが同じで、価値に対して対価がある。そこは自分の人生として、自分を主語として考えるしかない。誰かが救ってくれる話ではないし、自分が世の中に対して価値を出さないと給料はもらえないというのは当たり前の話なので、トレーニングを積むか何かしないといけない。月収50万円あるなら暮らせると思うし、腹を括って、何か勉強なり投資するなりして、どこかで抜け出さないと永遠に変わらない。競争社会で勝てない人がいるからベーシックインカム的なものでサポートするということだけではなくて、そういう人たちが勝つためにチャレンジできるような機会を与えるのが最優先な気がする」と話した。


 ドワンゴ社長の夏野剛氏は「正規雇用か非正規雇用かの問題にするのは単純すぎると思う。もはや大企業を除いて雇用の安定なんて無いし、何もしなくても年功序列で給料が上がっていく世界もない。それにすがっていれば生きていけると思うのは40歳以上のオヤジだけだ。やはり日本の税制に問題があって、頑張って何千万も稼いでも、税率を考えると全然リッチになれない。また、親が資産を持っているかどうかで子どもの人生が変わってしまう世の中になった。大企業に勤めて年収400万円をもらっている一人暮らしより、年収240万円でも親元から通っているほうが遥かに贅沢な暮らしをしている。つまり、親が金や不動産を持ってる人へのストック課税が必要だ」と訴えた。
 


 カンニング竹山は「僕の場合も20代の頃は金を借りまくり、500万円くらいの借金があった。アルバイトで一人暮らしを成立させるのはなかなか難しかった。一歩踏み出す、何かを削るというという時にも、本当に貧乏だから引っ越しそのものが大変。ここにいるしかない、だけど家賃は滞納になるし、引っ越し費用もない。ただ、テレアポの仕事って意外に儲からないし、AVだって我々と同じタレント業。その世界で売れないといけないし、好きな仕事なら別として、思考を変えることで、歯車が周るときが来るかもしれない」とコメントした。

 


 中村氏は「実力主義で勝てない大部分の人たちはどうすればいいのか、という問題だと思う。介護の世界も取材しているが、介護職は低収入の介護職員だけの人間関係になるし、夜の世界は夜の世界の環境になるので、情報もなく、抜け出しづらくなっている」と話していた。
 

■「社会問題として片付けてしまうのは、果たして適切な振る舞いなのでしょうか」


 一方、国際政治学者の三浦瑠麗氏は「とりわけシングルマザーの人など、夜の仕事と掛け持ちしないと暮らしを支えられないという人は昔からいっぱいいた。今この問題が注目を浴びているのは、"大学生は本来エリートではないか。卒業すれば正社員になれるはずではないか"という社会的な幻想が崩れたように見えるからだ。人間の過去は変えられないし、職業を否定する気も全くない。見方を変えれば、女の子であれば長時間拘束され、将来の年収も上がっていかない仕事よりも、短時間の嫌な思いで一気にお金が入ってくる仕事があるということ。それを踏み台にしてたくましく生きていく子もいるし、山田さんも恥じる必要はない。ただ、本人の向き不向きもあるし、業者が騙したり、無理やり契約させたり、そうした女の子特有の問題がある」と指摘。

 その上で「親が4年間の費用をまるごと持ってくれる世帯が少なくなっていることは確かだと思う。そこで奨学金を最大限借りればバイトせず勉学に打ち込んだり、就職活動をしたり、好きなことをしたりできるので、借りるだけ借りるという選択はあっていいと思う。400万円という額も、諸外国と比べればそこまで多いわけではないが、やはり将来の伸び、仕事の楽しみとの比較衡量において、なんとなく負担感は大きいと思う。ただ、男の子だって初任給17万円なんてざらだし、収入が本当に伸びていくかどうかは分からない。私も奨学金を返済していたし、公務員だった夫の初任給は17万円だった」とし、年長者に比べ若者が機会に恵まれないという問題があるとコメントした。
 


 自分もそのような境遇に置かれることになっていたかもしれない、という立場から、池澤あやかは「東京で生活するにはお金がかかる、特に女性の場合は、ある程度セキュリティのしっかりしたところに住みたいと思う。ますますかかってくる費用が高くなる」とし、番組終了後には「成功した立場からこの件を語るのは、社会問題として片付けてしまうのは、果たして適切な振る舞いなのでしょうか。私たちにとっては社会問題なのかもしれないけれど、当事者にとってみればそれが現実です」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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