ピンチにも強気のコメントを続けるライアン航空CEOのマイケル・オレアリー氏 photo by World Travel & Tourism Council via  flickr(CC BY 2.0)

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 僅か30年余りで年間1億2000万人が利用するヨーロッパで乗客利用数で最大の格安航空会社ライアン航空がヨーロッパで、毎日40-50便のフライトがキャンセルされている。そして、そんな状況が10月末まで続くことが見込まれているという。この期間のフライト数をざっと計算すると、2000便がキャンセルされることになるのだという。

 ライアン航空も他の航空会社と同様にかなり先の便のチケットをオンラインで販売している。ライアン航空は、8月には昨年同月比10%の伸びで1270万人が利用した。ちなみに、ライバルのイージージェットは同月823万人で、9.4%の伸び率となっている。(参照:「El Confidencial」)

 集客も順調なのになぜ2000便もキャンセルすることになったのか?

ブラック企業過ぎてパイロットの引き抜き相次ぐ

 今回のフライトキャンセルの理由として同社のマイケル. ・オリアリー社長は「会社側の方でパイロットに休暇を与えることに計画性をもって取り組んでいなかったことから問題が生じた」と説明している。(参照:「El Pais」)

 しかし、30年の航空サービスの経営と4050人のパイロットを抱えているライアン航空がパイロットの休暇で計画性を欠いていたという説明は説得力に欠ける。そこにはこんな裏の事情がある。

 実は、ライバルのノルウェジアン航空が今年ライアン航空から既に140人のパイロットを引き抜いていたことが今回の不祥事によって明らかにされているのだ。ノルウェジアン航空はライアン航空の本拠地であるダブリンにもベース基地を建設する予定で、更に40人の追加雇用もある予測されている。(参照:「El Pais」)

 9月19日付『El Mundo』では、ライアン航空から年内に少なくとも190人のパイロットがノルウェジアン航空に移ると見ていることを報じている。(参照:「El Mundo」)

 ライアン航空では今回のキャンセルはパイロットが不足しているからではないとしている。しかし、BBCがライアン航空の内部から掴んだ情報だと、パイロットの問題は今年末まで続くと見ているという。となると、フライトの一部キャンセルは現在ほど多くはないにせよ、今年末まで続く可能性があるということになる。(参照:「El Economista」)

 一般に、航空会社では1機を10人のパイロットが受け持つという。ライアン航空は現在ボーイング737だけを400機以上備えている。パイロットのフライト勤務はひと月に100時間或いは年間で900時間となっているそうだ。(※航空会社が定める飛行時間の上限は月90〜100時間、年間1000時間が一般的というから上限ギリギリ)

◆少しだけ高いギャラを提示して引き抜くライバル会社

 今回ライバル航空に移ったパイロットはボーイング737の操縦免許を持っているパイロットということになる。ノルウェジアン航空がライアン航空のパイロットを引き抜くのに<年俸で最高1万7000ユーロ(221万円)>の差が出るだけのオファーをしたという。(参照:「El Mundo」)

 格安航空のパイロットは国際航空運送協会(IATA)のパイロットと比較して給与は低い。そのような中で格安航空でも他社より良い給与や雇用条件をオファーすれば今回のような現象も起きるというわけだ。(参照:「El Confidencial」)

◆2000便キャンセルで多額の賠償がのしかかることに

 2000便がキャンセルされるとなると、チケット購入客40万人に影響すると見られている。スペインの消費者保護団体(Facua)は、チケット購入者はフライトによって異なるが、250-600ユーロ(32500-78000円)相当の賠償金を請求できるとしている。今回の不祥事で、ライアン航空はおよそ2000万ユーロ(26億円)の賠償金を負担せねばならなくなるであろうと見られている。(参照:「El Pais」)