かつて歌劇団で同級生だった老女優2人が詐欺事件に巻き込まれ、ひとりは投身自殺、ひとりは認知症が発症して寝込んでしまうという、救いようのないダウナー展開だった第11週。

さすがにしばらくはしんみりとした話が続くのかな……と思いきや、第12週では季節が飛んで夏!

井深涼子を演じる野際陽子の追悼ムードもおさまらないうちに、その井深涼子 in ヌーディスト・ビーチで幕を開けるアッパー展開で楽しい週だった『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第12週。


週はじめからヌード、ウンコ、前立腺と下ネタ連発


例のごとく、磯釣りを楽しんでいる菊村栄(石坂浩二)、大納言(山本圭)、マロ(ミッキー・カーチス)。

余談だけどこのシーン、なぜかいつも背景を合成されているのだが(海風は老人の身体によくないからとかか?)、不自然な背景の中、ジジイ3人が横並びでたわいのない世間話をしている光景を見ると、どうしてもドリフの雷様コントを思い出してしまう。

そこへやって来たのが井深涼子。夏になるとこのビーチにやって来てスッポンポンで泳ぐのが「やすらぎの郷」夏の風物詩らしい。

「見たって得するもんじゃない!」
「ババアたちのヌーディスト・ビーチになるんだ」

などと、スッポンポンのババアをディスりながらも、微妙にコーフンしている様子の3人。井深涼子や三井路子(五月みどり)がスッポンポンで泳いでいるビーチを通り抜けることができず、トイレに行けないため、前立腺が弱いだの、ウンコがしたいだのと大騒ぎ。

さらに夜、「やすらぎの郷」内のバー・カサブランカではバーテンダーのハッピー(松岡茉優)相手に、前立腺についての説明をするというセクハラまがいのトーク。

暗くて重かった前週の雰囲気を一気に吹き飛ばして次のエピソードにつなげる見事な展開! 悲しすぎる高齢者の自殺エピソードをすっかり忘れてしまったよ。

「やすらぎの郷」中の女たちを熱狂させる向井理


そして、「やすらぎの郷」に新たな問題が勃発。

井深涼子が正体を隠して活動している小説家・濃野佐志美が芥川賞候補に選ばれたということで業界からの注目が集まっており、映像化などの話が舞い込んでいるという。

そんな中、菊村たちに説得され、焼却したはずの小説「散れない桜」のドラマ化の話まで持ち上がっているようなのだ。

戦時中、姫こと九条摂子(八千草薫)が、「やすらぎの郷」を作った芸能界のドン・ 加納英吉に頼まれて明日出撃する神風特攻隊の少年たちを慰問し、一緒に食事をしたという話を下敷きにした「散れない桜」。

後に、死んでいった特攻隊員の遺族から批判的な手紙を受け取ったことから、姫のトラウマとなっている過去でもあり、「人を傷付けるようなことを書いてはいけない」と菊村たちから説得され、原稿を焼却した幻の小説だったはずだが、編集者がコピーを取ってあって、それが流出したのだという。

……流出した原稿のドラマ化が進むなんて、そんなことあるの!?

とにかく小説と同様、このドラマが放送されれば、姫や加納英吉が傷付くことは必至。……なのだが、今回はドラマ化をどう止めるかではなく、どうやって姫を説得するかという方向に話が進んでいく。

そこで井深涼子が考えた手は、姫が大ファンだという若手俳優・四宮道弘(向井理)をドラマに出演させるということ。

シノから説得されれば、姫もドラマ化をオッケーしちゃうだろうという、ややゴーイン感のある作戦。しかし、年齢問わず女性たちを魅了してしまうシノのパワーはすさまじかった。

演技の参考にするためにシノが当時の時代背景を取材しにくる、と聞いただけで姫は「何でも話すわ! いつでもいいわよ!」と超・前のめりに。興奮のあまり眠れなくなってしまい、夜中に何度も菊村の部屋を訪れてしまう。

他の老女優たちもメチャクチャ舞い上がり、若いスタッフたちも大コーフン。

普段、クールな雰囲気を放っていたコンシェルジュの松岡伸子(常盤貴子)はスタッフに色紙を買いに行かせ、「散れない桜」出版の時にはあれほど強硬に反対していた名倉みどり(草刈民代)も、今回は「(シノに)会いたかったんだも〜ん!」ということで、シノの訪問を許可してしまう。

さらには、足腰が立たない老女までもが「会いたい〜!」と泣き叫びながら病室からはい出すというフィーバーっぷり。

ちょっと前までみんな秀サン(藤竜也)に夢中だったのに……。

中でも最高の反応を見せてくれたのが、この作戦を仕込んだ井深涼子。菊村から「お前も一緒に会いたいんだろ?」と問われると、ちょっと恥じらいの表情を浮かべ、小声で「会いたい……」と。

老いも若きも、みんなメスの顔になってしまった。

そのシノ役が向井理というのも絶妙。イケメンでありながらもチャラくはなく、若い子たちはもちろん、お年寄りからも好まれそうな好青年だ。

四宮道弘という名前、シノという愛称から考えるに、明らかに嵐の二宮和也がモデルだと思われるので、ニノ自身が演じてもよかった気もするが。……ジャニーズ事務所っぽい「Jプロ」を揶揄していたからオファーできなかったのかな?

姫がやっぱり天使過ぎる!


全体的にドタバタ感の強い週だったが、そこにスポッと切ないエピソードもはさみこまれていた。

シノと会えるということでテンションが上がりすぎ、真夜中に菊村の部屋にやって来たのに、何を話そうとしていたのかすっかり忘れてしまった姫。

そんな姿を見て、菊村は自分が認知症になりつつあることを感じて取り乱していた亡き妻・律子(風吹ジュン)を思い出して涙を浮かべてしまう。

この思い出が、特にストーリーに絡んでくるわけではなかったのだが、唐突に記憶がフラッシュバックしてしまうくらい、亡き妻と自分を苦しめた「認知症」は菊村にとって(そしてドラマ全体にとっても)大きなテーマなのだろう。

そして姫が、他の女性たちのようにミーハー心だけでシノに熱狂しているのではないことも明かされた。

かつて戦争で死んでいった初恋の相手にどこか似ているから「かわいくてかわいくて仕方がない」のだという。

このドラマ内で姫は、決して通俗的なババアにはならず、どこまでも「天使」なのだ。脚本の倉本聰にとって、八千草薫は特別な存在なんだろうなぁ。

時っていうのは残酷なもんですねぇ


さて、月曜日に老女のヌーディスト・ビーチで幕を開けた第12週だが、金曜日にはビーチ再び。

今度は老女ではなく、「やすらぎの郷」の若い女性スタッフが水着で遊ぶ姿を、菊村、大納言、マロのジジイ3人組が「ワオーッ」と奇声を上げながらのぞき見る。

水遊びしていたのは風間ぬい子(広山詞葉)と三枝奈々(東松史子)。このふたり、本編ではそんなに目立った活躍はしていないが、「やすらぎ体操」のメインで体操をしていることでお馴染みだろう。あのふたりが水着姿で……と思うと確かに興奮してしまうのだが、それにしてもジジイ3人は興奮し過ぎ!

同じ場所で見たババアたちのヌードと比べつつ、

「なぜこの二人がああなんなくちゃならないんだ!」
「時っていうのは残酷なもんですねぇ」
「この二人がああなるのをマロは許さん!」

さらに「お年寄りをからかうな」と怒るみどりからも、

「お年寄りってのはちょっとした刺激でポコッと逝くことあるんですよ」
「この方(井深涼子のヌード)はいいの、別にもう刺激にならないから」

というヒドイ言葉が。

このドラマ、シニア向けと言っているわりには、ちょいちょい老人ノーリスペクトな
発言が出てくる。この辺も、自身が高齢者である倉本聰じゃないとなかなか書けないセリフだろう。

さて、ドタバタ展開だった第12週に続き今週は、「やすらぎの郷」内の女たちを狂わせたシノがいよいよ登場する模様。

予告編を見ると、シノの口から「テレビ業界の人間はあまり好きになれません」なんて発言もさせており、まーたテレビ業界ディスが飛び出すのかと期待してしまう。

とりあえず老女たちの熱狂っぷりは、たっぷりと見ることができるだろう。
(イラストと文/北村ヂン)