宅配ボックスの大量設置に反対する理由とは

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 宅配便を受け取れず、再配達を頼んでもまた受け取れないということもあるだろう。問題解決にと宅配ボックスの注文が殺到し、生産が追いつかないほどだ。とある自治体では、宅配ボックスを各家庭に設置し、宅配業者の負担が減ったと報じられた例もある。ところが、経営コンサルタントの大前研一氏は、宅配スーパー経営の経験から、受け取り用のボックス設置は問題解決につながらないと指摘する。その現実的な方法について、大前氏が提案する。

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 受取人の不在時に荷物を預けられる「宅配ボックス」の大量増設については反対だ。政府は4月から1か所あたり通常150万〜200万円かかる設置費用の半額を補助する制度を新設し、宅配業者が駅やコンビニに宅配ボックスを設置することを後押しするという。

 しかし、私が宅配スーパー「エブリデイ・ドット・コム」を10年以上にわたって経営した経験から言えば、宅配ボックスは管理が非常に難しい。トラブルの元である。盗難や事故に加え、生鮮食品の場合は衛生上の問題などもあるからだ。

 たとえば、宅配会社が荷物を入れておいても、受取人が取り出しを忘れてしまったりする。実際、東急などはDPEで預かったフィルムのプリントが出来上がったら駅のボックスの中に入れておき、帰宅時にピックアップしてもらうという仕組みを作ったことがあるが、うまくいかなかった。

 また、コンビニに宅配ボックスを設置するというが、敷地に余裕がある地方や郊外はともかく、都心のコンビニに宅配ボックスを設置するスペースはない。さらに戸建て住宅の場合、個別の設置は有効だが、共同利用の大型ボックスとなると景観上の問題もある。政府は今年度予算案に約5億円を計上し、約500か所の宅配ボックスを新設すると報じられているが、税金の無駄遣いでしかないと思う。

「エブリデイ・ドット・コム」でうまくいったのは、近所のサラリーマンに“副業”として配達を手伝ってもらうことだ。地方のサラリーマンは、たいがい車の免許を持っているので、出勤前や帰宅後に自宅周辺の家に配達してもらうのである。配達料は1個100円。朝夕10個ずつでも1日2000円稼げるわけだ。依頼する側としても、ヤマト運輸佐川急便より安くつくので、コストが削減できる。

 これは“空いているもの”を利用した「アイドルエコノミー」の一つである。

 宅配業者の専属ドライバーが早朝・夜間に配達すれば残業や過重労働になる。しかし、サラリーマンの空いている時間を利用した副業なら、何も問題はない。また、大半の主婦は朝や夜の配達を嫌がるが、近所の顔見知りのおじさんなら安心だ。

 今はスマホがあるから配達・集荷の手配も簡単だし、時間に余裕のあるサラリーマンも多いだろう。電車通勤が中心の東京などでは、飛躍的に普及している電動自転車で配達してもらうという方法もある。

※週刊ポスト2017年4月21日号