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昨今なにかと耳にする機会が増えた「KANA-BOON」(カナブーン)。
現在、『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』(TBS系)第2期のオープニングテーマ曲に抜擢されている『Fighter』が3月1日に発売されたばかりだ。また、カップリング曲の『君を浮かべて』が日本赤十字社の献血キャンペーンとタイアップするなど、ますます注目が高まっている。

邦ロック好きには名の知られた存在だが、普段このジャンルに馴染みがない人にとっては未知の存在だろう。今回は、若者を中心に絶大な支持を得るKANA-BOONの魅力とこれまでに迫ってみよう。

全員が90年代生まれ、平成の感受性で一躍人気に


いまや国内の大型フェスの常連となったKANA-BOON。谷口鮪(Vo./Gt.)を中心に、高校時代の友人だった古賀隼斗(Gt.)、小泉貴祐(Dr.)をオリジナルメンバーとして結成。その後、飯田祐馬(Ba.)を加えて現体制となった4人編成のロックバンドだ。

2010年より、彼らの原点である大阪・堺のライブハウス三国ヶ丘FAZZを中心に活動をスタートさせた。すぐさま頭角を現しファンを獲得していった彼らは、2012年にキューンミュージックの20周年記念オーディションで4,000組の頂点に選ばれ、若手バンドのなかでも一躍注目株となる。

2013年にメジャーデビューし時代を象徴するバンドに


2013年には、メジャーデビューして上京。この年に初の全国流通となった楽曲『僕がCDを出したら』は、彼らの魅力がつまった名盤だ。KANA-BOONの存在を全国に知らしめた作品でもある。
谷口の切なく透き通ったハイトーンボイスは、少年と青年の(あるいは少女と女性の)間を行き来するような、絶妙な情緒を感じさせる。

リード曲『ないものねだり』は、すでに自主制作版に収録されていた楽曲をアレンジしたもの。当時は、各所で「繰り返すフレーズで中毒性が高い」「一度聞いたら忘れない楽曲」などと注目を集めたが、たしかにKANA-BOONのキャッチーな側面をすべて詰め込んだ象徴的な一曲と言える。

また谷口が描く独自の詞の世界は、一瞬で情景が浮かぶ物語性の強いものから、鬱屈した感情を吐露した激しいものまでさまざま。しかしライブの客層からもわかるように、どれも幅広い世代を暖かく包み込むような包容力があるのだ。

『NATURO』の主題歌で一気に知名度アップ


そんな彼らの存在を幅広い世代に知らしめたのが、国民的人気アニメ『NARUTO疾風伝』の主題歌に『シルエット』が抜擢されたことだろう。
NARUTOの主題歌といえば、ASIAN KUNG-FU GENERATIONをはじめ、サンボマスター、いきものがかり、秦基博、ザ・クロマニヨンズといった大物アーティストが彩ってきた歴史がある。

そのアニメNARUTOシリーズのラストを飾ったのが、KANA-BOONの『シルエット』だった。メンバーが大のNARUTO好きを公言しているだけあって、歌詞には原作の世界観が忠実に描写されている。ファンならばナルトの成長の歴史に思いを馳せ、聴き入ってしまったはずだ。

事実、NARUTOの原作者である岸本斉史も彼らを大絶賛し、劇場版『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の主題歌『ダイバー』をKANA-BOONに依頼したほどの入れ込みようだった。同じアーティスト同士、共鳴するところがあったのだろう。
切ないメロディと歌詞、歌声を聴いて劇場で涙を流した人も少なくないと思う。

“言うは易く行うは難し”の代表?


さて、2010年代前半といえば邦ロックシーンには“四つ打ち”、“誰でもノリやすいダンスナンバー”、“耳に残るリフ”といった特徴があると散々語られてきた。たしかに、当時台頭してきた若手バンドにこうした共通点があることは事実であるし、KANA-BOONのなかでもキャッチーな楽曲はその例にもれない。

とはいえ、「この要素を詰め込めば売れる」「売れてもすぐに廃れる」といった批評という名の妬みを語ることは簡単だ。音楽を聴いて“あーだこーだ”と語ることは自称音楽好きならば誰でもできるが、実際に音楽で食べていくことができるのは、わずかに限られた人間だけである。

その点で言えば、近年KANA-BOONほど無駄なやっかみを買ってきたバンドはいないだろう。羨ましがられるだけ、魅力がある。そんな妬み嫉みなど一蹴できるだけの自信とエネルギーを、彼らはファンと共に培ってきた。

今後も発展が期待できるKANA-BOON


谷口の発言からもわかるように、彼らの音楽に対する姿勢は極めて誠実なものだ。ライブでも発する言葉ひとつひとつに、しっかりとした背景や意図を感じる。バンド活動を続けていれば、公私ともに様々な壁にぶつかることがあるが、音楽への誠意を感じるからこそファンは共に壁を乗り越えてくれるに違いない。バンドは常にファンと共に苦難を乗り越えながら大きくなる。

メンバーとファンがそれぞれ年を重ね、一体どんな音楽を生み出していくのか? KANA-BOONがその進化を見守りたいバンドのひとつであることは間違いない。
(ヤマグチユキコ)

※イメージ画像はamazonよりKANA-BOON MOVIE 04/KANA-BOONの格付けされるバンドマンツアー 2016 at 幕張メッセ(初回生産限定盤) [DVD]