“捨て犬”状態になった足立区の“きつキャラ”アダチンが「同情するなら、カネをくれ」
ゆるキャラ人気が一段落した今、ビンボーで生活がきつく、恵まれない境遇の不幸キャラ「アダチン」の人気が急上昇中だ。
日本原産の小型犬「チン」をモデルに、東京・足立区の文化・芸術をPRする公式キャラとしてデビューしたのは2007年のことだった。アダチンの原作者、青木純氏が語る。
「デビュー当初は華々しかったんです。区の予算でアダチン主演のアニメを制作したり、アダチンキャラの入ったシャーペンやノート、携帯ケースを配布したり。区民から引っ張りだこの毎日でした」
だが、幸せな日々はそう長くは続かなかった。4ヵ月後に就任した新区長がアダチンをリストラ処分にしてしまったのだ。
「どうしても新しい区長さんに気に入ってもらえず、公認キャラの契約は打ち切りになりました」(前出・青木氏)
“捨て犬”状態となったアダチンは、その後、民間のプロデュース会社2社に就職するが、なかなか芽が出なかった。青木氏が続ける。
「2社目では、アダチンの着ぐるみを1泊1万2500円でレンタルしていたんですが、貸し出しは月に1度あるかないか。これでは維持費にもなりません。怒った社長から『2014年のゆるキャラグランプリで100位以内に入らないとクビ』と通告されてしまいました。結果ですか? 181位でした(泣)」(青木氏)
そして、三度(みたび)仕事場をクビになったアダチンは、行く場所がなくなり、現在は青木氏の家に居候中だ。
しかし、そんなこれまでのきつい境遇や生活のキツさが人々の共感を呼び、ゆるキャラならぬ“きつキャラ”として、最近はアダチンへの注目度が高まっている。早速、そんなアダチンを直撃し、今の心境を聞いてみた。
―普段は何をして過ごしているの?
「ツイッターをしたり、ボランティアで街の掃除をしている。ただ、基本は無職だから、たいていは荒川の土手や北千住の商店街で昼間から酒を飲んでる。明るいうちから飲む酒は最高だチン」
―就活はしないの?
「北千住にあるハローワークに足しげく通っているけど、さっぱり決まらないチン」
―「きつキャラ」として注目度がアップしているのに仕事がない?
「確かに人気は出てきた。でも、好きと言ってくれてもグッズまでは買ってくれない人がほとんどなんだ。だから、生活は相変わらず苦しい。『同情するなら、カネをくれ』と言いたいチン」
―都知事選の最中だけど、生活困窮者として候補に望むことは?
「犬だから参政権はないよ。でも、一票を投じることができるなら、小池百合子候補を応援したいチン。党から見捨てられ、公認を得られず、でも離党しないというところが、僕の境遇と似ていて親近感を感じる。僕も足立区の公認キャラを切られたけど、今も区役所前をボランティア清掃しているチン」
―足立区の公認キャラに復帰したい?
「したいけど、足立区には『ビュー坊』という公認キャラがすでにいるからね。それより、小池さんが都知事になったら、都公認キャラにしてもらおうかな? 名前もアダチンからトチジンに改名してもいいチン!」
3度のリストラに遭い、昼酒の日々を過ごしながら、それでも都公認キャラに抜擢(ばってき)される日を夢見るアダチン。いつか、幸せになれるといいね。
(取材・文/本誌ニュース班)