もともと平等な社会を目指していた中国だが、経済成長に伴う社会や価値観の変化に伴い、今や街頭の清掃員を蔑視する風潮が一部に存在する。中国メディア・中華網は2日、「日本において、清掃員として市民からリスペクトされている中国出身の女性がいる」とする記事を掲載した。(イメージ写真提供:(C)Sean Pavone/123RF)

写真拡大

 もともと平等な社会を目指していた中国だが、経済成長に伴う社会や価値観の変化に伴い、今や街頭の清掃員を蔑視する風潮が一部に存在する。中国メディア・中華網は2日、「日本において、清掃員として市民からリスペクトされている中国出身の女性がいる」とする記事を掲載した。

 記事は、「清掃員は都市において不可欠な存在であるにもかかわらず、中国ではこの職業はリスペクトが受けられない」としたうえで、「世界一きれいな空港」と称される東京の羽田空港で、700人もの清掃員を率いて活躍する中国出身女性が存在する事を紹介。羽田空港は日本の1日における国内航空旅客の半数以上を占める20万人が毎日利用し、ターミナルの総面積は約78万平方メートルを誇りつつ、床や各設備にホコリやゴミ一つ落ちていないほどの驚きの清潔さを保っていると説明した。

 そして、1970年に遼寧省瀋陽市で中国残留孤児の子孫として生まれたこの女性が、17歳時に日本語もできないまま来日して清掃員として仕事をはじめ、95年には羽田空港の清掃員として勤務するようになったと紹介。以後20年にわたりたゆみない努力と体力トレーニングを重ねて独自の清掃技術を会得し、国家資格として認められている「ビルクリーニング技能士」の資格を取得、現在は職業訓練指導員として700人の清掃員の指導にあたっていると伝えた。

 記事はそのうえで、「中国で生まれた彼女がもし中国で清掃員になっていたら、毎日の仕事は怒りや自己卑下に満ちたものだったに違いない。しかし日本では、彼女は『大師』の称号を得ているのだ」と説明。そこには日本の「職人精神」を重んじる姿勢が表れているのだと解説した。

 そして、「いつか、路上の清掃員が然るべきリスペクトを得て、市民たちがいかなる職業をも平等視するほどのモラルに達すれば、おそらく中国の都市の環境もシンガポールとそう遠くはなくなるだろう」と論じている。

 中国の人に「どうして街にはこんなにたくさんゴミが落ちているの」と質問すると、しばしば「ゴミが落ちていなければ、清掃員の仕事がなくなってしまうから」と半ば冗談めいた答えが返ってくる。まずはこの考え方を改めるべきだろう。街に大量のゴミが落ちていれば、清掃員たちはそのゴミを拾うことで手一杯になる。しかし、ゴミが減れば、その労力をさらに街をきれいにするための行動に回すことが出来るのだ。

 紹介された女性は、個人の努力によって清掃員としての高みに到達したのであって、中国出身者、日本出身者云々ということは大した問題ではない。民族的な議論をする暇があれば、市民1人1人が環境を守り、清潔を保つための行動を起こすべきなのである。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:(C)Sean Pavone/123RF)