日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

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露呈した『戦術と人選のズレ』

日本代表は3日、ロシアワールドカップのアジア二次予選でカンボジア代表と対戦し、3-0で勝利を収めた。格下相手に一方的な展開で試合を終始支配した日本代表だったが、西部謙司氏はヴァイッド・ハリルホジッチ監督の戦術と人選にズレがあったと指摘している。

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 34本もシュートを打って3ゴールはやはり物足りない。試合の形は引き分けたシンガポール戦とまったく同じ。カンボジアはシンガポールより弱く、攻撃する意志もなかった。完全なワンサイドゲームで、引きこもっている相手からいかに得点するかのトレーニングのようなゲームである。

 不思議なのは、ハリルホジッチ監督の作戦と選手起用のズレだ。

 日本は立ち上がりからハイクロスをカンボジアのゴール前へ打ち込み、その後も執拗にハイクロスを上げている。監督の指示に違いない。ザッケローニ監督時代には、ハーフナー・マイクを起用した試合でさえハイクロスを多用しなかった日本が、今回はそうではなかった。監督の指示が徹底していたからだろう。

 ファーサイドのゴールエリア角、そこへのハイクロスを何度も狙っていたが、多くは跳ね返された。シュートしても枠に飛んでいない。

「クロスボールを何本も上げたが合わせるところが足りなかった。今日気がついたのは、しっかり合わせられなかったこと。ゾーンストラテジー(ゴール前の位置どり)など、伸ばしていきたい」(ハリルホジッチ監督)

 あそこまで引かれると崩しきるのは簡単ではない。高さとパワーでハイクロスをねじ込めれば、それが一番シンプルな点の取り方になる。間違ったアプローチではない。しかし、それならなぜこのメンバーなのか。なぜハイクロスに強い豊田陽平やハーフナーのようなFWを招集しなかったのか。

引きすぎの弱点をついた3ゴール

 ハイクロスはカンボジアに勝つための策だったはず。ならば、この試合限定でも空中戦に強いFWを用意すればよかったのではないか。逆にワールドカップへつなげる準備としては、カンボジアにも効果が薄いのだからハイクロスは意味がない。

 同じラインに複数の選手が立つなど、ゴール前のポジショニング等に改善点があったのは確かだが、それ以前に作戦と人選が合っていないのだ。東アジアカップのときも縦に速い攻撃を指向しながらポストプレーがさして得意でない川又堅碁を1トップに起用するなど戦術と人選にズレがあった。

 日本の攻め手はハイクロスだけではない。カンボジアがゴール前に人数を集中させていたのでミドルシュートは効果的だった。GKからはボールが見えにくいし、人に当たってコースが変わることもある。

 ペナルティーエリア内の選手にパスを通してから、人垣の隙間をつくシュートもGKにとっては厳しい。結局、本田圭佑、吉田麻也のミドルと岡崎慎司がボックス内で放ったシュートのこぼれを香川真司が決めたゴールの3つとも、あまりにも引きすぎたカンボジアの弱点をついた形だった。

懸念される「詰め込みすぎ」

「(点をとるために)たくさんの要求をしたし、選手もやろうとしていた」(ハリルホジッチ監督)

 上手くいったものも無駄だったものもあるが、漫然と攻撃していたわけではない。ただ、気になったのは少し詰め込みすぎではないかということだ。

 監督はFW出身なので攻撃に関しては多くのアイデアがあるようだ。ただし、それを伝えるにあたって欧州人と日本人では反応が違うと思う。監督がキャリアを積んだフランスでは、たとえば5つ厳命しても3つぐらいしか実行されない。言い過ぎなぐらいでちょうどよかったりする。

 しかし、日本だと5つ全部を実行しようとして柔軟性に欠けてしまいがちで、選手の反応が違う。もしかしたら、そのあたりの感触をまだつかみきれていないのかもしれない。

 そうでなければいいのだが、もうそうだとしたら上手くいっても監督の器以上のチームにはならない。監督は「伸びしろはあるので練習の時間がほしい」と話していたが、もしかしたら情報を伝えるための時間よりも、伝え方を知るための時間が足らないのではないか。

text by 西部謙司