小林悠 (撮影/岸本勉・PICSPORT)

写真拡大

3分、エウシーニョの先制点をアシストすると、同点にされた後の22分、今度はエウシーニョのパスをゴール前でトラップすると確実にゴールに蹴り込んで決勝点とした。横浜FMとの神奈川ダービーで1ゴール1アシストと活躍したのは、1月のアジアカップメンバーのうち、攻撃陣でただ一人出場機会をもらえなかった小林悠だった。

UAEにPK戦で敗れた後、小林に話しかける報道陣はほとんどいなかった。小林も「日本でまた頑張ります」と淡々と語るだけ。ブラジル・ワールドカップ直前合宿で初招集されたものの負傷で辞退。昨年11月の日本代表合宿も負傷で途中離脱するなど、サムライブルーを身に纏おうとすると、小林には不運がつきまとう。

だが、その日本代表への参加で「小林は変わった」とチームメイトが証言する。

GK西部洋平は、「代表から帰ってきた小林は練習中、みんなに対して厳しく要求するようになった。驚くくらい変わりました」と言う。実際、川崎Fの練習中に小林がチームメイトに話しかける回数は目に見えて増えた。

練習中の態度だけではない。開幕戦でも西部からのロングフィードをジャンプしながら胸で止め、素早くコントロールするなど技術レベルも向上した。また、これまでは相手守備ラインの裏側に抜け出してパスを受ける場面が多かったが、さらに足下でパスを受けると自分で仕掛けるシーンが続出するようになったのだ。

「代表に行って、『自信を持ってプレーする』ということを学びました。いつも『自信』を持たなければならない。それが自分の変化だと思います」。変化について聞かれた小林は即答した。「ドリブルは今年取り組んでいる課題です。自分でボールを持って仕掛けられる選手になりたいと思ったので。そこが少し出せたと思います。もっとよくなっていくと思います」

それでも「西部さんからのボールを胸トラップで収められたのは、偶然ですよ」と小林は笑いながら言う。自信を持ちながらも、謙虚さを小林は失っていない。その性格の良さも個性豊かな選手が集まる代表チームにあっては、「組織の和」を乱さない重要な要素になりそうだ。

代表監督が交代し、小林が今後招集されるかどうかは不透明だ。だが一度知った代表チームという場を、小林は易々とは手放さないだろう。わずか1カ月の間に小林は大きくスケールアップしていた。

【日本蹴球合同会社/森雅史】