パレスチナ戦で好機に絡んだ長友は、イラク戦でもチームに己の魂を捧げる覚悟でいる。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 今回のアジアカップで、誰よりも寡黙なのが長友佑都だ。年末年始の国内合宿からイラク戦の前々日(1月14日)の練習まで、ミックスゾーンをほぼ素通り。記者に「一言だけ」と声をかけられても笑顔を返すのが“日常”になりつつあった。
 
 しかし、「告発受理」でアギーレ監督の八百長疑惑に改めてスポットが当たったイラク戦前日のタイミングで、その口を開いた。
 
「一緒に戦う仲間を信頼できないで、試合に勝てるわけがない。僕らは信じて付いて行くつもりです。外野はざわついているかもしれないけど、(チームの)中は至って冷静。勝つための準備はできているので、まったく問題ありません」
 
 凛々しい顔つきで「雑音を吹き飛ばすのは結果でしかない」と語気を強めた長友は、グループDの行方を左右するイラク戦でのポイントを訊かれた際に「右サイドにかなり強力な選手がいるけど、1対1の勝負は負けたくない。それに、精度の高いクロスでチャンスを作りたいと思う」とチームに己の魂を捧げる覚悟を示した。
 
 パレスチナとの初戦、左サイドからの果敢なオーバーラップからチャンスを作り、複数のゴールに絡んだ長友は、プレーで雄弁に語っていた。14-15シーズンの前半戦はインテルで怪我などに悩まされたが、そうした負の影響を感じさせない良質のパフォーマンスを披露した。俺が引っ張る──と、そんな意気込みが感じ取れたのだ。
 
 イラク戦でも長友のオーバーラップが、ひとつの鍵になる。記者がそう確信して質問してみると、彼は少し照れくさそうに「鍵になるとは思ってないけど……」と言った。それでも、「大きな役割を担っている」自負はもちろんある。「僕の前にいる選手、乾や武藤を気持ち良くプレーさせたい。自分をどんどん囮に使ってもらっていいし、とにかく彼らには気持ち良くプレーしてもらいたい」とチームメイトを気遣うコメントが出てくるのも、自分の立ち位置をしっかり把握しているからに他ならない。
 
 イラク戦ではピッチでどのようなメッセージを発するのか。雄弁なプレーを期待したい。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)