『動物の見ている世界 仕掛絵本図鑑』ギヨーム・デュプラ (著)  渡辺滋人 (訳)/  創元社

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クリスマスと言えば、酒を片手に「明石家サンタ」を見る日だ。
誰がなんと言おうと、私の中では十年くらい前からそう決まっている。個人的には、それくらいやさぐれた過ごし方が好きだが、愛してやまない姪っ子・甥っ子と酒を飲んで過ごしたいとも思っている。しかし、一緒に飲むには、まだ15年くらいかかりそうなので、毎年夢のある絵本を贈っている。そして、今年もその季節がやってきた。

小学校の一年生になった姪っ子には、少し難しい内容の絵本でもいいかもなぁと本屋さんを物色していたところ、「猫はひどい近眼」と帯にかかれた絵本を見つけた。その時点でとてつもなく興味をひかれ、ついつい手にとってしまった次第である。その絵本の名前は『動物の見ている世界』だ。

この本は「見る」ということについて、最新科学の成果とそれに基づく推測を交えて描いた、世界初の視覚科学絵本ということだ。難しく書いてしまったが、平たく言うと、同じ景色を見ていても人間、猫、犬、ワシ、ミミズ、ミツバチなど、生き物によって見え方が違うということを、実際に見えている景色を絵で表し、さらに文章で詳細に説明している絵本なのである。

「犬は嗅覚が鋭い」とか、「リスは、ほっぺたに木の実をたくさん詰められる」という、特化した特長についてはよく知っている方も多いと思うが、「見る」という部分はあまり知らない方がほとんどではないだろうか。実際、私もつい感嘆の声が出てしまうほど知らないことが多かった。

本書を編集された創元社編集部の内貴さんにも驚いた点について聞いてみた。
「ペットとして飼っている人も多いと思うのですが、猫がひどい近眼で、人間の5分の1程度しか見えていないことに驚きました」
私も猫を二匹飼っているが、あの子たちがひどい近眼なんてまったく知らなかった! よく、夜に何もない遠くの空間を見つめては私を脅かしていたが、実は対して見えてなかったのか!
その他にも、リスやネズミは、目より鼻の感覚が発達している、コウモリは目隠しで飛べる、牛と馬はストレスで視野が狭くなる、ワシは1キロ先でも見えるほど目がよい、カタツムリの世界は白黒、ミツバチの世界はモザイク……などなど、知らなかった世界の見え方がたくさん載っていて、ぐっと引き込まれてしまう。

ヘビは赤外線で獲物を感知しているらしく、葉っぱの裏にいる獲物も体温で分かってしまうらしい。なに、そのスパイみたいな機能。個人的にヘビがちょっと好きになってしまった。

「見る」ことを視覚的に説明している部分はもちろんのこと、もうひとつ注目していただきたいのは、各動物の挿絵だ。編集の内貴さんも「なんとも言えない風合いのあるイラストもこの本の魅力のひとつです。真正面を向いた動物たちのドアップの表情には思わず見入ってしまいます」とオススメポイントとしてあげてくれた。

最後に、どのような方に読んでいただきたいか内貴さんに聞いてみた。
「大人の方にも読んでいただきたいです。身近な生き物たちの世界に思いをはせることは、日常生活に遊びと余裕をもたらしてくれると思います。」

もちろん、小さな子どもは絵を見るだけでもきっと楽しいだろうし、もう少し大きい子どもは自分で読みながら他の動物の世界を少しずつ知ることができるだろう。

だが、内貴さんが言うように、大きくなった“元子どもたち”にも、忘れてしまった楽しさや、誰もが自分の世界を持っていてそれぞれに世界の見え方は違う、ということを改めて認識させてくれるのではないだろうか。

年齢を問わず子どもへのクリスマスプレゼントには自信を持ってオススメしたい絵本だが、かつての子どもたちにもぜひ手にとっていただきたい。それぞれに世界の見え方は違うということを理解し、その人の世界を受け入れられる人間が増えれば少し世界は平和になる気がしている。
(梶原みのり/boox)