駅に停車中の列車を撮影した典型的な「撮り鉄」的写真。大阪駅に停車中の札幌行き寝台特急「トワイライトエクスプレス」。

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ルールを破った人に対する嫌がらせとして、大阪駅付近のビルから撮り鉄が写真を大量にばらまくという出来事が発生。撮り鉄の世界にあるという「暗黙のルール」、はたしてどんなものなのでしょうか。

撮り鉄」は何を考えて撮っている?

 鉄道の写真を撮影して楽しむ「撮り鉄」の少年が2014年9月19日、JR大阪駅近くのビルからある男性の写真を大量に散布するという出来事がありました。それに写っていた男性も撮り鉄で、その男性が撮影現場でいつも割り込みをするからばらまいたと、写真を散布した少年たちは話しています。

 こうした極端な意趣返しは滅多にありませんが、撮り鉄の現場における割り込みの問題、珍しいものではありません。

 たとえば貴重な列車がある駅に来るとします。するとその駅では、場所取りをする撮り鉄がその列車が到着する何時間も前から現れます。なぜなら「ベスト」な写真を撮れる場所は限られているからです。駅に停車中の列車を車両メインで撮る場合、撮り鉄は次のようなことを考えます。

・商品撮影のように列車をクローズアップ。余計なものが映り込むことなく、列車そのものが映える「きれいな写真」が撮りたい。
・列車の停車位置は決まっている。
・車両がゆがんで写らないよう、レンズは広角や望遠ではなく適度なものを使う。
・おおよそ列車側面が7、正面が3の割合で画面に入る「シチサン」の構図が基本。

 これらを満たせるポジションは限定されてくるため、珍しい列車が来る場合など、何時間も前からホームで場所取りが行われるのです。

撮り鉄」における暗黙のルールとは

 ホームで長時間待つ行為の是非はさておき、そうしてずっと待っている撮り鉄がいたとします。しかし列車が来る直前、先にいたその人の前に割り込み、写真を撮ろうとする人が時折います。そうすると割り込んだ人が映り込み、「きれいな写真」にならないため、先にいた人は激昂するというわけです。

 撮り鉄の世界では、「後から来た人は、先に来た人の写真に入り込まないようにする」という暗黙のルールがあります。そのため、先に来ていた人の前で写真を撮りたい場合、しゃがみ込むなどして映り込まない体勢を取りつつ、それで大丈夫か、先に来ていた人に尋ねるようにします。

 しかしそうしたことをせず、いきなり無言で前に入ってきて撮影する人がおり、トラブルになることがあるのです。撮り鉄歴25年の37歳男性に尋ねたところ、「撮り鉄じゃない人が前に入ってきてしまうのは仕方ないけれど、撮り鉄が意図的に割り込んでくるのは許せない」そうです。「『自分が少しだけ割り込んでちょっと撮るぐらい良いだろう』と考えてるヤツも絶対いる」(41歳男性撮り鉄)という見方もあります。

 今回の写真が大量に散布された件は、こうした撮り鉄で珍しくはないトラブルが発展した形と言えるでしょう。

 しばしばネット上を賑わす撮り鉄の問題ですが、撮り鉄のなかには撮影場所で必ず他の人に挨拶をしたり、他人のゴミを拾って帰るなどしている人もいます。今回の出来事を受けて「多くの人はマナー、ルールを守っているのに、一部の心ない人のせいで撮り鉄全体が悪く思われるのは残念」(41歳男性撮り鉄)という声が聞かれました。