携帯電話の常識が17年ぶりに変わった!病院での携帯利用は新たなトラブルの火種になる?

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ケータイやスマホは、「病院内では電源を切りましょう」筆者は、ケータイ時代からそう覚えてきたものである。
実際、病院内でそのような張り紙などを目にしたり、注意を受けたりした人も多いのではないだろうか。

「病院内で携帯を利用することはできない」
我々はなんの疑いもなく、長い間、このルールを受け入れてきた。そのため電話をする時は、病院施設から屋外に出て利用するという人も多かった。

しかし、時代は変わるものだ。「明けない夜はない」という名言を久々に思いだした。
実は、先日電波環境協議会より「病院内で携帯電話を原則禁止しない」という旨の指針が発表されたのだ。今までとは全く違う、真逆の見解である。
まさに、携帯電話の常識がひっくり返った。天動説が地動説になったようなものだ。
しかし、これは一体どういうことだろう。

●そもそも病院内では、なぜ携帯電話を利用してはいけなかったのか
この指針が表明されたのは1997年(平成9年)。今よりおおよそ17年前のことである。
指針の内容は、「携帯電話から発する電波により医療電気機器が誤作動をおこしてしまう可能性があるため、医療機関(病院など)が使用を特に認めた場所でのみ利用できる」というものだった。
つまり、病院側で「ここでなら携帯使ってもいいですよ」と明記しない限りは、必ず携帯電話の電源は切って下さいということである。

これが現在まで受け継がれてきた、「病院では携帯電話はNG」という常識の始まりだ。

●17年経った今、携帯利用可能となった背景とは
電波環境協議会によると、いくつかの根拠をもって、携帯の利用を原則として禁止しないとしている。

・第2世代携帯電話サービスの廃止
現在使われている携帯電話は、「第3世代」だ。「第3世代携帯電話」は、「第2世代携帯電話」より微弱な電波でも効率の良い通信ができるようになっている。そして現在、「第3世代携帯電話」に完全に移り変わったことにで、病院内の一般的な機器に影響を与えるような強い電磁波が使われなくなっている。

・携帯電話等の日常生活への浸透
スマートフォンやタブレットの普及により、以前よりも携帯電話は日常の生活に必要不可欠なアイテムとなっているという状況がある。

・医療機器の電磁的耐性に関する性能の向上
進歩したのは携帯電話だけではない。医療機器もまた進歩しており、現在の医療機器は電磁波での影響を受けにくいよう改善されているというのだ。

さらに医療機関では、携帯電話などの無線通信を積極的に利用することにより、医療の高度化や効率化、患者の生活や利便性の向上が見込めるとしている。したがって、これらの根拠により「病院内で携帯電話を原則禁止しない」という決断がされることになったのだ。

●だからといってどこでも使って良いわけではない?


明確に「◯」「△」「×」で利用するべきかどうか分けられている
※医療機関内での携帯電話等の使用に関する指針より抜粋


携帯電話を原則禁止しないと言っても、まだ使ってはいけない場所は存在する。今回の指針では、そうした場所についても具体的に明記されている。

携帯電話を普通に利用して良い場所は、基本的には「食堂・待合室・廊下・エレベーターホール、携帯利用可能エリア」などだ。
それ以外の場所(病室)では通話以外の利用であれば可能、診察室などでは使用しないよう配慮するとなっている。また集中治療室や手術室は、今回の指針でも引き続き、電源を入れることも含めて利用はできない。

●ルールを守って使っていても問題が起きる可能性はある
確かに病院内での携帯電話を使えるルールは決まった。だからと言って当たり前のように使うと、トラブルの元にもなりかねない可能性がある。

原則禁止ではなくなったといっても、そこは病院内だ。治療を受けている患者さんや家族が気を配って生活をしている場所なのだ。普段生活している場所以上に、「人が居る近くでは通話をしない」、「医療機器の近くでは使わない(1m以上離す)」、「ペースメーカーを利用している方の近くでは使わない」という配慮は必要となる。さらに病院では多くの個人情報が存在するため、不必要な写真撮影などは行わないといった配慮も必要となる。

こうした配慮を欠いて携帯電話を使用すれば、その行動を快く思わない人とのトラブルにもなるだろう。特に病院内で携帯電話は使えないという常識は17年の間、我々の生活に根ざしてきた。それが180度使っても良いと、簡単には思えない人も多いからだ。街中以上に、周りに配慮して利用することが求められる場所には変わりはないのである。

また、今回の指針は義務ではない。あくまでも方針である。そのため具体的なルールは、各医療機関(病院)によって異なるため、どこの病院でも携帯電話を同じような使えるわけではないことも決して忘れてはならない。

「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」等の公表について


布施 繁樹