【絵本】元図書館司書が厳選! 日本の「怖すぎる絵本」8冊
夏の定番「怖い話」。真夜中に懐中電灯の明かりだけを灯して、誰かから「怖い話」を聞くのも味があって良いですが、目から入ってくる恐怖というのもまた強烈です。
皆さんは、書店や図書館の児童書コーナーに、「怪談えほん」シリーズや「ホラー絵本」がひっそりと置かれていることをご存知ですか?
筆者はライターになる前は図書館司書をしていたのですが、「なぜこんなトラウマになるレベルの絵本が、児童書コーナーに置いてあるのだろう……」と、常々疑問を感じていました。
そこで今回は大人が読んでも怖い、日本の「怖い絵本」8冊をご紹介したいと思います。
■しつけに最適?大人でも悪いことがしたくなくなる『地獄』絵本
昨年、1980年初版の『絵本 地獄』(千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵/宮次男 監修)という本が「しつけに最適」とメディアに取り上げられ、突然の大ブームを起こし、累計35万部を突破しました。
皆さんは、えんまが舌をぬいたり、三途の川や赤鬼青鬼、奪衣婆(だつえば)や針の山のことを覚えていますか?『絵本 地獄』は、死んだ五平が生き返り、見てきた地獄の恐ろしさを語る……という内容です。罪人の表情がとても細かい部分まで描かれており、地獄の罰は痛そうで怖そうで、大人でも「悪いことはしないでおこう」と納得してしまう一冊です。
ただこの絵本は、本当にトラウマレベルの怖さなので、もう少しマイルドな表現で「地獄」を楽しみたいと思う方は、『じごくのそうべえ』(田島征彦 作/童心社)という絵本がおススメです。
上方落語「地獄八景亡者の戯」を題材にしたロングセラー絵本で、軽業師(かるざわし)の「そうべえ」が綱渡りに失敗し、そこで出会った仲間たちとともに、閻魔大王の前で大暴れする……という奇想天外な内容です。
「地獄」を題材にした絵本は、死ぬことの怖さ・命の大切さを子どもに伝えるメッセージも持っているそうですが、それを疑いたくなるほど、恐ろしい2冊です!
■〜良質な本物の怪談の世界へようこそ〜「怪談えほん」シリーズ
続いては、「子どもたちに、もっと怖いお話を」と日本を代表する怪談文芸や怪奇幻想文学のプロフェッショナルたちが執筆している、岩崎書店の「怪談えほ ん」シリーズをご紹介します。こちらの「怪談えほん」、精神的にジワジワくるものから、夜眠れないこと間違いなしの怖さのものまで、数多くの傑作作品が出 版されているので、とてもおススメです!
まずご紹介したいのは、『ゆうれいのまち』(恒川光太郎/作 大畑いくの/ 絵)。日本ホラー小説大賞作家・恒川光太郎が「ひとりぼっち」をテーマに書いたお話です。
真夜中に友達に連れてこられて、ようやくたどりついた「ゆうれいのまち」。そこに行った子どもは、もう二度と戻ることができません。ゆうれいのまちで暮らし始め、徐々に今までの生活を忘れてしまう男の子の様子が描かれています。花いっぱいの、美しい表紙からは想像もできない、悪夢のようなラストが待っています。
同じく悪夢のようなラストを迎えるのが『悪い本』(宮部みゆき/作 吉田尚令/絵)。あなたに、この世で一番「悪いこと」を教えてくれます。そんな本いらないですか?でもあなたは絶対に「悪いこと」がしたくてたまらなくなるはずです。
また、小さい女の子「マイマイ」が自分の壊れた右目に弟の「ナイナイ」をいれて、不思議な世界を体験するという、美しくも不気味な物語『マイマイとナイナイ』(皆川博子/作 宇野亜喜良/絵)や、街中至る所におばけがはさまっていて、「痛い痛い」とおばけたちがあちこちで泣き叫ぶ様子が描かれている『ちょうつがい きいきい』(加門七海/作 軽部武宏/絵)も、内容はもちろん、絵のインパクトが印象的で、一度読むと決して忘れられない絵本です。
そして何といっても一番おススメなのが『いるの いないの』(京極夏彦/作 町田尚子/絵)。何かの事情で、おばあさんの住む古い日本家屋で暮らすことになった男の子が、高い天井を見上げ「何かいるような気がする」と訴えるストーリーです。しかしおばあさんは「上を見なければ怖くないよ」という何とも曖昧な返事をします……。
伝統的な日本家屋の、隙間の薄暗がりって確かに怖いですよね。さて、その家の暗がりには、一体誰がいるのでしょうか?空間の「こわさ」を徹底的に描き出した、子どもには決して見せていけないような気がする一冊です。
■ 6歳の「わたし」と日本人形の「なおみ」。フラッシュバック必須の写真絵本!
ラストは、6歳の少女と日本人形の「なおみ」が一緒に暮らす日常を、谷川俊太郎の文章と沢渡朔の写真で綴られている写真絵本『なおみ』(福音館書店)です。「絵」で描かれている絵本よりさらに、リアルで身に迫るものがあります。
人形って、人間そっくりの姿かたちをしているのに、生まれも育ちも、死にもしないですよね。やがて大人になる時間の流れを生きている、6歳の「わたし」と違う所は、そこなのです。なおみが身につけている古い着物や、舞台となっている古い西洋館、そしていつも微笑んでいる表情が、底知れぬ不気味さを醸し出しています。
「6歳の少女とほぼ等身大の日本人形登場」という設定だけで筆者は十分に怖かったのですが、最後のページの「なおみ」の姿は、もう本当に、フラッシュバック必須の恐ろしさでした。
夜中に「なおみ」がこっそり部屋で微笑んでいたら、どうしましょうかね……?(涙)
いかがでしたか?
「怖い話」って、誰かから聞いたり、文章を読んだりして、想像力を思う存分ふくらますのも楽しいですが、ビジュアルを先に目に入れてからお話を読むと、また違った面白さを感じることが切るはずです。特に日本人形の「なおみ」なんて、一度見てしまうと忘れられないかと思うので、読まれる際は十分に覚悟して下さいね。これでこの夏は、クーラーいらずで過ごせるかもしれません。