頭痛薬、服用し続けると悪化の危険性も
カゼをひいた時や、体のどこかが痛む時、あるいはお腹を壊した時など、私たちは日々「薬」のお世話になっています。
しかし、ほとんどの人は薬のどの成分が体にどう作用するかといったところまでは知らず、薬局で処方されるがまま服用しているはず。これは実はとても危険なことなのです。
『なぜ、あなたの薬は効かないのか?薬剤師しか知らない薬の真実』(光文社/刊)の著者で薬剤師の深井良祐さんは、本書の中で私たちが知識がないまま薬を服用することのリスクを指摘。そのうえで正しい薬や薬剤師との付き合い方を教えてくれます。
今回は深井さんご本人にご登場いただき、この本を書いた理由や背景についてお話を伺いました。
―今回は深井さんの著書『なぜ、あなたの薬は効かないのか?薬剤師しか知らない薬の真実』についてお話を伺えればと思います。医師の方はともかく薬剤師の方が書かれた本というのは珍しいのですが、この本を書かれた動機についてお聞かせ願えますか。
深井:「身近な薬の疑問を解決できれば」という考えから本書を執筆しました。薬剤師という立場上、薬の相談を受けることは多いです。ただ、医師に言われるがまま薬を服用している人が多すぎるということを感じています。何も疑問を持たずに薬を服用してもいいですが、薬を服用すべき場合とそうでない場合があります。
例えば、風邪薬は風邪を治しません。むしろ、風邪を長引かせてしまいます。また、糖尿病や高血圧の治療薬は症状を抑えてくれますが、完全に治すわけではありません。こうした生活習慣病では、食事や運動面からのアプローチの方がはるかに効果的です。薬を使わずに病気を治すことが可能だということです。
―まえがきで書かれているように、私たちの多くは薬についてほとんど知識がありません。素人が薬についての知識を深めることにどのような意味があるとお考えですか?
深井:「自分の健康を自分で管理できるようになる」という点に大きな意義があります。現在はセルフメディケーションという言葉があり、これは医療機関を過度に頼ることなく、自分で病気を治療していくという意味も含まれます。
「自分の健康」や「家族の病気」など、薬に頼るべき場合とそうでない場合を見極めることができれば、さらに健康な生活を送ることができるはずです。
―薬について知らないことで起こる事故としてどんな例が挙げられますか?
深井:「薬に頼りすぎる場合」や「薬を怖がりすぎる場合」などがあります。例えば、薬への頼りすぎで問題となるケースに頭痛薬があります。頭痛薬を服用し続けていると、よけい頭痛を悪化させてしまうことがあります。これを薬物乱用頭痛と呼び、安易な連用は避けなければいけません。
薬の怖がりすぎで問題となるケースには、妊婦の服用があります。「胎児への影響が怖い」と考えて妊婦の方が薬の服用をやめると、症状の悪化を招き、これが胎児に深刻な影響を及ぼすことがあります。
―2章の副作用のお話が興味深かったのですが、私たちが日常的に服用する薬で、重大な副作用を起こすなどトラブルが起こる可能性が高いものをいくつか教えていただけませんか。
深井:日常的な薬の代表に「解熱鎮痛剤(熱を下げたり痛みを抑えたりする薬)」があります。ドラッグストアで誰でも購入可能な薬ですが、小児のインフルエンザに対して解熱鎮痛剤を使用すると脳症のリスクが高くなります。
また、この薬を妊婦に投与すると胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、「頭痛がおさまらない」などの理由で服用すると、不都合な作用が表れる可能性を否定できません。このように、ありふれた薬であっても大きなリスクを備えています。
―また薬害問題やドラッグラグなど製薬業界の問題点についても書かれていましたね。薬剤師という「現場の人間」の目から見て、製薬の世界はどのように変わるべきだと思いますか。
深井:もっと情報をオープンにしていくべきだと思います。「薬は病気を治さない」「薬害はなぜなくならないのか」「ジェネリック医薬品の利点と欠点」など、医療関係者にとっては常識であっても、一般の方へ浸透していない事実はたくさんあります。
これらの基礎知識を身に付けることができれば、自分の健康を守りやすくなるのではないでしょうか。本書ではその点についても触れています。
(後編につづく)
しかし、ほとんどの人は薬のどの成分が体にどう作用するかといったところまでは知らず、薬局で処方されるがまま服用しているはず。これは実はとても危険なことなのです。
『なぜ、あなたの薬は効かないのか?薬剤師しか知らない薬の真実』(光文社/刊)の著者で薬剤師の深井良祐さんは、本書の中で私たちが知識がないまま薬を服用することのリスクを指摘。そのうえで正しい薬や薬剤師との付き合い方を教えてくれます。
今回は深井さんご本人にご登場いただき、この本を書いた理由や背景についてお話を伺いました。
深井:「身近な薬の疑問を解決できれば」という考えから本書を執筆しました。薬剤師という立場上、薬の相談を受けることは多いです。ただ、医師に言われるがまま薬を服用している人が多すぎるということを感じています。何も疑問を持たずに薬を服用してもいいですが、薬を服用すべき場合とそうでない場合があります。
例えば、風邪薬は風邪を治しません。むしろ、風邪を長引かせてしまいます。また、糖尿病や高血圧の治療薬は症状を抑えてくれますが、完全に治すわけではありません。こうした生活習慣病では、食事や運動面からのアプローチの方がはるかに効果的です。薬を使わずに病気を治すことが可能だということです。
―まえがきで書かれているように、私たちの多くは薬についてほとんど知識がありません。素人が薬についての知識を深めることにどのような意味があるとお考えですか?
深井:「自分の健康を自分で管理できるようになる」という点に大きな意義があります。現在はセルフメディケーションという言葉があり、これは医療機関を過度に頼ることなく、自分で病気を治療していくという意味も含まれます。
「自分の健康」や「家族の病気」など、薬に頼るべき場合とそうでない場合を見極めることができれば、さらに健康な生活を送ることができるはずです。
―薬について知らないことで起こる事故としてどんな例が挙げられますか?
深井:「薬に頼りすぎる場合」や「薬を怖がりすぎる場合」などがあります。例えば、薬への頼りすぎで問題となるケースに頭痛薬があります。頭痛薬を服用し続けていると、よけい頭痛を悪化させてしまうことがあります。これを薬物乱用頭痛と呼び、安易な連用は避けなければいけません。
薬の怖がりすぎで問題となるケースには、妊婦の服用があります。「胎児への影響が怖い」と考えて妊婦の方が薬の服用をやめると、症状の悪化を招き、これが胎児に深刻な影響を及ぼすことがあります。
―2章の副作用のお話が興味深かったのですが、私たちが日常的に服用する薬で、重大な副作用を起こすなどトラブルが起こる可能性が高いものをいくつか教えていただけませんか。
深井:日常的な薬の代表に「解熱鎮痛剤(熱を下げたり痛みを抑えたりする薬)」があります。ドラッグストアで誰でも購入可能な薬ですが、小児のインフルエンザに対して解熱鎮痛剤を使用すると脳症のリスクが高くなります。
また、この薬を妊婦に投与すると胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、「頭痛がおさまらない」などの理由で服用すると、不都合な作用が表れる可能性を否定できません。このように、ありふれた薬であっても大きなリスクを備えています。
―また薬害問題やドラッグラグなど製薬業界の問題点についても書かれていましたね。薬剤師という「現場の人間」の目から見て、製薬の世界はどのように変わるべきだと思いますか。
深井:もっと情報をオープンにしていくべきだと思います。「薬は病気を治さない」「薬害はなぜなくならないのか」「ジェネリック医薬品の利点と欠点」など、医療関係者にとっては常識であっても、一般の方へ浸透していない事実はたくさんあります。
これらの基礎知識を身に付けることができれば、自分の健康を守りやすくなるのではないでしょうか。本書ではその点についても触れています。
(後編につづく)