小笠原道大はどんな打者か?|野球史

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負けたばかりの落合監督に、「今日2000本安打を打った小笠原選手に一言」と聞いた記者がいたようだが、監督は「それと今日の試合は関係あるのか?」とピシャリ。もっともなことである。小笠原の2000本安打は大ニュースだが、記者も少しは頭を使わないと。
さて、小笠原道大の2000本安打はNPB38人目である(MLBと合算した記録は考慮せず)。この38人の記録を子細に見ると「2000本安打は通過点」という選手もいれば、「やっとこさ2000本」もいる。また、そのタイプも実にさまざまだ。
2000本安打者のタイプを知るために「長打」と「打率」の2つの基準でマトリクスを作ることにした。長打と言えば通常はSLG(長打率 塁打数÷打数)だが、これでは打率の良い打者が上に来てしまう。そこで塁打を安打で割って見た。つまり「この打者は平均すれば何塁打を打っていたか」という数字。「平均塁打」と名付けた。で、これと打率のマトリクス。
赤字は現役。参考までにMLBでのイチローの記録も置いて見る。
王貞治は今もNPB史上にそびえる偉大な高峰であることが分かる。王だけは平均塁打が「2」を超えているのだ。しかも終身打率も3割を超えている。

マトリクスの左上には、長打が売り物の4番打者タイプが並んでいる。清原の平均塁打は王に次いでいる。彼は一度も主要タイトルを取っていない。晩年は名ばかりの強打者だったが、このポジションを見ると惜しい気がする。野村克也、山本浩二、門田博光らも屈指の強打者だったことがわかる。金本もこのレベルに達している。
さてマトリクスの右上は長打もあるが打率も稼ぐ、バランスの良い3番打者タイプが並んでいる。代表格が長嶋茂雄、落合博満、張本勲。そして小笠原もここにいる。シュアな上に長打もある。チームにとって一番欲しいタイプだ。凄いと思うのは、小笠原はあれほどフルスイングをしながら確実性でも超一流であること。彼も不世出の打者だと思う。
左下にはトップバッタータイプが並ぶ。そして右下のさらに一番端っこにイチローがいる。彼の平均塁打は1.29。MLBでの数字ではあるが彼の異能も際立っている。
実は2000本安打と言う区切りが大げさに騒がれることについて、やや複雑な思いを持っている。2000本安打は確かに偉大だが、1900本もほとんど同じくらい偉大だ。飯田徳治(1978本)、毒島章一(1977本)、小玉明利(1963本)、松永浩美(1904本)という選手も顕彰してほしい(別にハワイで金やんと一緒にゴルフしなくてもいいけど)。
今年から来年にかけて、小久保裕紀、稲葉篤紀、宮本慎也、ひょっとすると谷繁元信らが2000本のテープを切るだろう。そして来年後半には順調であればアレックス・ラミレスが2000本に達する(現在1736本)。これは本当に偉大な記録だ。その偉大さをマスコミはしっかり伝えてほしい。そしてラミレスは殿堂入りしてほしいと思う。

2000本はただの数字だが、それをどう読むか、どう評価するかで野球は深くなると思う。

●追記。故海老沢泰久さんが「完璧に一番近い選手」と呼んでいた秋山が洩れていました。マトリクスを修正しました。申し訳ありませんでした。