「脅しの常套句」により、「身に覚えのない罪」を認めてしまう…検事が行う「マインドコントロール」

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約1分の勾留質問で164日間勾留、検事の作文で作られる供述調書、証拠改竄や捏造……。

おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(村木厚子 著)では、冤罪に巻き込まれた著者がみた驚愕の刑事司法の実態が明かされています。

本記事では、〈「執行猶予ならたいした罪じゃない」…容疑を認めるように誘導される、市民感覚とズレた「検事の衝撃の価値観」〉に引き続き、取り調べを受ける村木氏と、担当の國井検事のやりとりなどについて詳しく見ていきます。

(※本記事は村木厚子『おどろきの刑事司法』より抜粋・編集したものです)

ゾッとした検事の言葉

國井検事は、これまで担当した事件のことも取調べの際に話していました。

「被疑者が否認している事件で、決定的な証拠を本人にはずっと教えず、裁判で出してやったら有罪になった。しかも、否認していたから罪が重くなった」といった話を、表情も変えずに淡々と話すので、とても不快な気分になりました。

和歌山毒物混入カレー事件(1998年、和歌山市内で夏祭りに出されたカレーライスを食べた67人がヒ素中毒となり4人が死亡した事件)で死刑判決を受けた林眞須美さん(無実を訴えて三度目の再審請求中)が、同じ拘置所にいることも、國井検事から聞きました。その時、彼はこう言ったのです。

「あの事件だって、本当に林眞須美がやったのか、実際のところわからないですよね」

すでに死刑判決を受けている人について、無実かもしれないと平気で言う神経が、私には理解できません。本当にゾッとしました。

國井検事は、「真実は誰にもわからない」とも言いました。彼によれば、真実は誰にもわからないから、いろいろな人たちから聞いた話を重ねていくのだそうです。数学で習った「集合」の「交わりの模式図」のように、そうやっていちばん濃く色が重なり合うところを真実だとし、それを根拠に「こいつが犯人だ」と決めるしかない、と言うのです。

でも、「真実は誰にもわからない」というのは、そもそも嘘です。真犯人は「自分がやった」という真実を知っているし、冤罪を着せられた人は「自分はやっていない」という真実を知っている。そして、「誰にもわからない」と「真実がない」はイコールではない。真実はあるのに誰にもわからないというのなら、検察官はもっと謙虚になるべきです。

被疑者を落とす常套句

「起訴が決まりました。検事総長まで内諾を得ています」

勾留満期まであと5日となった夜、國井検事がこう言いました。

この時には、私の無実を信じてくれる人たちが「支援する会」をつくろうと動き始めてくださっていました。國井検事は、「支援する会ができるようだが、裁判になれば、そうした人たちを巻き込むことになる」と、まるで「支援する会」が私と口裏を合わせて証拠隠しをするための集団であるかのような口ぶりで言います。

接見禁止の私に、どうやって口裏合わせができるっていうの!

内心、怒りでいっぱいでしたが、まともに受け答えする気にもならず、「私が頼んだわけじゃありません」とだけ返しました。

國井検事からは、否認するなら実刑を受けるかもしれない、というようなことも示唆されました。考え直して罪を認めろ、というわけです。こうした言葉は検察官の常套句です。「裁判になると支援者に迷惑がかかる」「罪を認めないと刑が重くなる」「否認を続けるなら、家族や職場の人も取調べないといけないな」といった言葉に動揺し、身に覚えのない罪を泣く泣く認めてしまった人が、これまでどれほどいたことでしょう。

國井検事は、「弁護士のなかには無罪を安請け合いしたり、騙す人もいる」とも言いました。私と弁護団との信頼関係を壊そうとしていることが、よくわかりました。

さらに〈誠実な公務員だったのに突然の逮捕…村木厚子氏が驚き、怒り、絶望した日本刑事司法の「暗部」〉では、村木氏が逮捕された経緯を詳しくみていきます。

●特に言及のない限り、登場人物の所属・肩書、法律や制度の名称・内容は、すべて当時のものである

【つづきを読む】誠実な公務員だったのに突然の逮捕…村木厚子氏が驚き、怒り、絶望した日本刑事司法の「暗部」