高市早苗総理の影響も…4月クールで《女性バディドラマ》が乱立するのはなぜ?

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春は女性バディドラマだらけに

4月クールから放送されるテレビドラマのラインアップを見てみると、ある傾向が浮かび上がってきた。男女バディや男性同士のコンビものが目立っていた昨今とは様相が異なり、女性同士のバディやコンビを題材にしたドラマが非常に多いのだ。

例えば、昨年夏から今年の冬ドラマまでの3クール分を振り返ってみても、女性バディものは深夜帯を除くと、波瑠と川栄李奈が出演した『フェイクマミー』(TBS系、2025年10月クール)のみ。もちろん、女性バディもの自体が前代未聞というわけではないが、ここまで乱立するのは極めて少ないパターンだということが分かる。

ところが、4月クールではGP帯だけで4作が女性バディものなのだ。

エリート秘書を演じる黒木華がスナックのママに扮する野呂佳代とタッグを組んで都知事選に挑む『銀河の一票』(フジテレビ系、月曜午後9時〜)、トランスジェンダー女性に扮する波瑠と専業主婦役の麻生久美子が文学を手がかりに謎を解く『月夜行路 ―答えは名作の中に―』(日本テレビ系、水曜午後10時〜)、畑芽育と志田未来がダブル主演を務める、罪を抱える女性とその被害者の娘によるヒューマンサスペンス『エラー』(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜午後10時15分〜)。

さらに、鈴木京香と黒島結菜が新バディを組む『未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3』(テレビ朝日系、木曜午後9時〜)もスタート。前シリーズでは波瑠とコンビを組んでいたが、6年の沈黙を経て新しい女性バディものとして帰ってくる。

それだけではない。3月30日からスタートする朝の連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)も、見上愛と上坂樹里がダブルヒロインを務める女性コンビものだ。明確なダブルヒロインの朝ドラで言うと、2008年放送の『だんだん』 まで遡り、三倉茉奈と三倉佳奈が主演を演じて以来、17年ぶりになる。

また、どの作品も単なる女性主人公のドラマではない。物語の推進力を担うのが女性2人の関係性にある点、三角関係のラブストーリーではない点は特筆すべきだろう。

それでは、なぜ4月クールで女性バディものが乱立することになったのか。プロデューサーやディレクター、ドラマライターの視点からその背景とヒットの条件を読み解いていく。

恋愛ドラマは低視聴率で企画が通りづらい

「恋愛ドラマは視聴者の幅が狭く、企画が通りづらくなっているんです」

そう話すのは、民放キー局で複数のドラマを手掛けてきた中堅プロデューサーのA氏だ。

「もちろん王道のラブストーリーは一定の需要がありますが、メイン視聴者層が10〜20代中盤の女性。彼女たちはリアルタイム視聴をしない傾向にあるので世帯視聴率を稼ぐことができない。よってスポンサー探しが難航するため、編成部や営業から好まれなくなってきているんです。

また、価値観が多様化する中で“恋愛至上主義”を謳うようなストーリーに乗り切れない視聴者が増えているのも事実。たとえ男女バディものだとしても、どうしても最終的に恋愛関係に発展するのではないかというノイズが入ってしまう。

その点、女性同士のバディものはお互いの絆を深めたり、感情をぶつけ合ったりするような人間味のあるシーンを描きやすいし、社会性のあるテーマをまっすぐ提示できる強みがある。今の時代に求められているのはそういった作品なんです」

「高市内閣」誕生の影響もあり?

さらにA氏は「社会情勢も影響しているのでは?」という推測もする。

「女性バディドラマが増えたことを語るうえで、昨年10月に誕生した高市早苗内閣の存在は避けて通れないでしょう。高市さんが首相になり、視聴者の中に“女性の輝き”や“女性が社会のために頑張る”ことへの関心が高まったのは間違いない。

ウチの企画会議でも、女性が主体的に動くストーリーへの抵抗が今まで以上に薄れた気はしています。かつてならリアリティがないと一蹴されていた企画が「今の時代ならあり得る」と評価されるようになったのは大きな変化です」

その象徴的なドラマが大きな反響を呼んだ『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジテレビ系、2022年)を手掛けた佐野亜裕美プロデューサーによる『銀河の一票』だ。

A氏はこう続ける。

「同作は、政界を追い出された与党幹事長の娘・茉莉(黒木華)が、偶然出会ったスナックのママ・あかり(野呂佳代)を東京都知事にするべく選挙に挑む破天荒なエンターテインメント作品ですが、まさしく高市内閣誕生が生んだドラマだと思います。

女性の力でも政治や社会を変えられることに期待を持てるようになったからこそ、男女バディではなく、女性同士の設定にしたはず。エリートと庶民という異なるバックグラウンドを持つ2人の女性が共闘し、巨大な権力に立ち向かっていく。このカタルシスは、女性同士のバディでなければ伝わらないでしょう。

同作は『舟を編む〜私、辞書つくります〜』『しずかちゃんとパパ』(ともにNHK)、『あの子の子ども』(カンテレ・フジテレビ系)などを描いた蛭田直美さんの脚本。彼女はとにかく登場人物のリアルな心情描写や繊細な葛藤を作り出すことに優れている注目の女性作家。奇抜なだけでは終わらない、期待大の作品です」

これまで、女性を引き立てる役割は男性俳優が演じることが定石だったはずだが、社会情勢の変化が異色の女性バディを生んだのかもしれない。

後編記事『「女優を主役に抜擢することで予算カット」…4月クールで《女性バディドラマ》が乱立する複雑な事情』では、女性を主役に立てることで生まれる局側のメリットについて解説する。

【つづきを読む】「女優を主役に抜擢することで予算カット」…4月クールで《女性バディドラマ》が乱立する複雑な事情