ホンダが昨年9月に販売した新型「プレリュード」がいまだ好調だ。自動車ライターの小沢コージさんは「一見初期のリバイバルだが、高い実用性とスポーツ性能を備えている。売り方次第ではもっと爆発した可能性もあるのではないか」という――。
筆者撮影

■新型好調で思い出す「2代目」の斬新さ

「あ、これが復活したプレリュードか。やっぱりカッコイイね。クーペっていいなぁ。でも一瞬ポルシェかと思っちゃった(笑)」

ひさびさ“オッサンたちのデートカー”こと新型ホンダプレリュードで、週末イベントに行ったら同世代が懐かしそうに言っておりました。ああ、しっかりウケてるのねと。

ご存じプレリュードが2025年9月に24年ぶりに国内復活。発売1カ月で約2400台受注し、目標の約8倍と手応え十分。そもそも目標台数が少ないじゃないか! の声もありますが、年始にディーラー調査したところ「今も納車半年待ちです」だそうで手応えはまずまず。

ちなみに知らない方のために解説しておくと、プレリュードはオッサン達の憧れで、いわば昔のアイドルです。存在的には最近のタイムスリップ系TBSドラマに出てきた小泉今日子さんとか南野陽子さん的存在。

そもそも小沢たちが若かりしバブル期に一世風靡したクルマで、まず初代から5代目までが1978年(昭和53年)から2001年(平成13年)に作られ、当時は2ドアクーペでした。

バブル期へと向かう1982年に登場した2代目「ホンダ・プレリュード」。リトラクタブルヘッドライト、低いボンネットが特徴的だ。(画像提供=本田技研工業)

特に印象的だったのは1982〜1987年に作られた2代目で、当時スーパーカー世代の憧れたる開閉式のリトラクタブルヘッドライトや乗用車では珍しいフロントダブルウイッシュボーンサスペンションを採用。

ベースは当時のFFセダン、ホンダアコードで、そこにスーパーカー的な低くてワイドな2ドアボディ皮を被せた言わば「なんちゃってスポーツカー」。

心臓部たるエンジンは当時のアコード用1.8Lや2LDOHCで、特別遅くはないけれど、目を見張るほど速くもない。ただし、カッコには人一倍気を使っており、フロントに横置きエンジン積んでおきながらボンネットはスーパーカーのフェラーリ並みの低さ。

■超ユニークな「11超」コンセプト

先日、当時の辣腕デザイナーを直撃しましたが、70〜80年代のイケイケなホンダらしいユニークすぎる開発テーマが面白い。

それは「11超(ジュウイチチョウ)」と呼ばれ、●超低ボンネット●超低エンジン、●超低サスペンション、●超視界、●超フィットシート、●超エアコンディショナー、●超高視認性、●超グラッシー、●超フラッシュサーフェス、●超ワイド&ロースタンス、●超低トレーインパネなど全11項目。

こういうコンセプトの存在自体が、時代の空気を物語ります。いまならさしずめ●超低排出ガスとか、●超電動感、●超スペースユーティリティになりそうで、言わば流行歌のように当時の走るトレンドセッターが作られていたわけです。

2代目には、それまでのホンダからは考えられない斬新なオレンジ色の液晶デジタルメーターが。(画像提供=本田技研工業)

初代はセールス的には国内約4万台と伸び悩んだものの、プチフェラーリ的な2代目モデルが約16万台と大爆発し、3代目も17万台と一世風靡。その後スタイルが微妙に変わった4、5代目で落ちて2001年に消えるわけですが、確かに時代に爪痕を残しました。

いわば速そうな雰囲気と低い視界を持った「陸サーファー」の的な存在で、薄っぺらいと言えば薄っぺらいコンセプトでしたが、そこがまた時代的で良かったのだと思います。

■エンジンサウンドの秘密

復活した新型6代目。一見初期のリバイバルですが、スタイルはもちろん中身の充実度もかなり違います。ボディサイズは全長4.5m台と長めで全高も1.3m台と現代乗用車としては低めですが、初代ほど極端な「超低」ではありません。

なによりスタイルは一見カッコ最優先の2ドアクーペですが実際には3ドアハッチバック。美しいリアビューはにポルシェクーペっぽいのですが良く見るとハッチゲートが付いており、使い勝手も悪くないのです。

車内はリア狭めの2+2の4名乗りで、ラゲッジ容量は264Lですが、リアシートを畳んで2人乗車レイアウトにすると500L前後まで広がり、ゴルフバッグを2セット、さらに助手席を倒せばサーフボードも2セット積めるとか。

ゴルフバックも2セット積める。(画像提供=本田技研工業)

またベースが乗用車のホンダシビックである部分はこれまでと似ていますが、パワートレインは現行ハイブリッドの2リッターe:HEVを進化させたもの。2Lエンジンをほぼ発電用として使い、実際の駆動はフロントに積んだ184ps&315Nmの電動モーターで行います。

よって、実際の加速感はほぼバッテリーEV的なのですが、ここからが従来のホンダハイブリッドと違うところで、実はエンジンサウンドをあえて演出として使うのです。

現在は新型プレリュード専用である「S+shift」なる新機能を備えており、モードスイッチを入れるとほぼ車速に連動して、エンジンがブンブン♪ と勝手に回ります。

新しいパワーユニット制御技術、Honda S+Shiftが搭載。加減速時には、有段ギアのトランスミッションを搭載しているかのような感覚を味わえるという。(画像提供=本田技研工業)

エンジンは発電用で、実際には高速走行を除きタイヤを回してはいないのに、演出として回転変動するのです。体感的には8速MT付きエンジン車のような疾走感が得られます。そしてコイツが峠道ではなかなか楽しい!

■「なんちゃってスポーツカー」ではない

さらに新型プレリュードがすごいのは、市販FF車最速のシビックタイプR譲りのハイグリップ性能を発揮するデュアルアクシス・ストラット・サスペンションや電子制御ダンパー、本格的なブレンボ製4ポットブレーキに大口径の19インチタイヤ&アルミホイールを備えていることです。

確かに加速は際立って速くはないのですが、ステアリングの手応えや締まった乗り心地はリアルスポーツ。

また可変サスペンションにより「スポーツ」「GT」「コンフォート」の3つの走行モードも選べて気分次第でちょっと硬めにスポーティにも、しなやかに優しくも走れるのです。

車名は変わらずプレリュードですが、かつてのミーハーな「なんちゃってスポーツカー」ではなく、より高い実用性とスポーツ性能も備えています。

筆者撮影
ボディカラーはムーンリットホワイト・パールが圧倒的な人気という。 - 筆者撮影

言わばちゃんと高学歴で、ことによったらニュースキャスターまでこなせるイケメン俳優であり、朝ドラ女優のような感じかもしれません。

ですから小沢的には売り方次第では、大爆発とは言いませんが、もうちょっと成功する可能性があると思っています。

クルマは良いけど、セールス規模は…

一番残念なのは、実は消極的な現セールス体制です。確かにこのミニバン&SUV全盛の21世紀。いまさら5ドアハッチバックですら売れないのに、さらにドアを減らした3ドアのペッチャンコなハッチバックが大量に売れるとは思いません。ただ、かつてのプレリュードを知るバブル世代はまだまだ元気で、新車を買う財力も持っているのです。

なのに6代目の国内販売目標はなんと月間わずか300台で車両価格も希望小売価格は617万9800円〜。

確かに少量で印象を残し、原資をなんとか取るためにはこの価格感と規模感になるのもひとつの判断かもしれません。

しかし今のホンダディーラー国内約2000店舗の時代に、月300台×12カ月で年間3600台。つまり1店舗あたり、1年で売れて1台か2台という計算になります。

そりゃ「納期半年」という待ちにも納得です。これだと、注文しても忘れた頃に実車が来るようなもの。

クルマが面白いがゆえに残念過ぎます。恐らく新型プレリュードは、日本に「ホンダならではのエコスポーツカー像」のイメージを残したいがためのクルマ。そう考えるとクルマは良いけど、セールス規模にはガッカリ。

そろそろ街中で「あ、あれが新型プレリュードか、結構かっこいいじゃん。今後買おうかな?」の一般大衆の声を頻繁に聞けるようになってほしいものです。

----------
小沢 コージ(おざわ・こーじ)
自動車ライター
1966(昭和41)年神奈川県生まれ。青山学院大学卒業後、本田技研工業に就職。退社後「NAVI」編集部を経て、フリーに。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。主な著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はホンダN-BOX、キャンピングカーナッツRVなど。現在YouTube「KozziTV」も週3〜4本配信中。
----------

(自動車ライター 小沢 コージ)