「執行ボタンを押す瞬間」と死刑執行後に行われる仕事…死刑に立ち会った刑務官が告白

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確定死刑囚3人の刑が12月21日午前に執行されたことが明らかになった。死刑執行は2019年12月以来とおよそ2年ぶりで、岸田政権の発足後は初めてとなる。今回の執行を受け、確定死刑囚は108人となった。

日本では死刑判決はどう行われ、死刑囚はどんな生活をして、死刑はどう執行されるのか。前編に引き続き、漫画家・一之瀬はちさんが実際に死刑に立ち会った刑務官に取材した『刑務官が明かす死刑の話』を取り上げる。

死刑に立ち会う刑務官

■刑務官はどのような流れで死刑に立ち会うのか

日本では死刑執行の際、3〜5人の刑務官が床を抜くボタンを押すことで執行される仕組みになっている。しかし、どれが床を抜くボタンかということは、分からないようになっている。

「これは刑務官の心理的負担の軽減のための措置です」(取材したM刑務官)

死刑に立ち会うのはさまざまな条件を鑑みて選ばれた刑務官だけだが、一番重要な条件とも言われているのが、「精神が強いということ」だそうだ。死刑をきちんとした「職務」として、やりとげられる資質が最も重要視されるという。

自分が執行官に選ばれるのが分かるのは、死刑執行当日の朝。事前に言うと仮病で休まれたり、外部に死刑の情報が漏れたりする危険性があるためだ。

「死刑の日の朝、出勤していくと、内門の前で配属主任が待っている。『今日執行お願いします』それが執行参加の合図です。死刑は朝の10時ごろに執行されるので、その日は通常業務につくことはできない。朝から刑場に入って執行ボタンを押す時刻を待ちます」(Mさん)

ボタンを押すということ

■ボタンを押す以外の役目もある

ボタンを押す以外にも死刑における刑務官の役目はある。それは「死刑囚を押さえる仕事」だ。これは執行前の死刑囚が暴れないようにするためではなく、執行後の死刑囚を押さえる仕事である。

「刑場の下に待機して上から落ちてくる受刑者の身体を受け止めて押さえる。落下の衝撃で身体に余計な傷が付いたり、体液が飛び散って刑場が汚れたりしないように行います。肉体的にも精神的にもキツいため、ボタンを押すよりもやりたくないという声は多い」(Mさん)

刑務官は死刑立会いに指名されると決して断れない。だが実際死刑となると現場でできなくなる人もいるのだそうだ。

「数十年前、某拘置所で起こった事件。その日は5人の刑務官が一斉にボタンを押す予定だった。執行のブザーが鳴り、一斉にボタンが押されるはずが、1人が恐怖のあまりボタンを押せず、しかもそれが『当たり』のボタンだったため、死刑が失敗になってしまった。その後、死刑は仕切り直しに。5人はもう一度ボタンを押し死刑が執行されたそうです」

…いかがだろうか。死刑制度は賛否両論があり、どちらの考え方が正しいという性格のものでもない。だからこそ、今一度「死刑」について深く考えるきっかけになるかもしれない。

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