ユークリッド宇宙望遠鏡によって観測された銀河団 Abell 2390 による遠方銀河の重力レンズ効果 (c) ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi

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 宇宙が膨張していることは、現在では一般によく知られている。しかも地球から遠ければ遠いほど、膨張速度は速く、それが光速を超えるほど遠ければ、その天体は地球から観測できない。

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 最近の研究では、宇宙の膨張が、空間とそこに存在する物質の質量から推定できる速度を、はるかに超えていることも判明している。この矛盾を解消するために科学者らは、ダークエネルギーなる仮想の存在を定義し、その本質を探るべく研究が進められている。

 ジュネーブ大学は11日、質量による時空の歪み量(重力レンズ効果)を、アインシュタインが唱えた一般相対性理論に基づき計算し、その結果を地球から35憶〜70憶光年離れた銀河の観測結果と比較した結果を公開した。

 研究の詳細は、科学論文サイト「Nature communications」で公開されている。

 銀河までの距離は、地球からどのくらい遠いかを示すだけでなく、観測している銀河が存在していた年代も現している。例えば地球から35億光年離れた銀河なら、我々はその銀河の35億年前の姿を見ていることになる。

 そして驚くことに、地球から60億光年以上離れた銀河の観測結果は、一般相対性理論が導く結果に一致していたが、35億光年離れた銀河や50億光年離れた銀河の観測結果は、一般相対性理論が導く結果から、僅かに乖離していることが判明したという。

 つまり、宇宙が誕生して60億年程までの間は、この宇宙の膨張メカニズムは一般相対性理論で説明がついたが、それ以降、何らかの原因で現在のような加速膨張が始まったことになる。

 もしこれが正しければ、いまから50億年ないし60億年前に宇宙で何らかの事件が起こり、ダークエネルギーが機能し始めたことになる。そのころ、宇宙でどんな事件が起こっていたのかを探ることで、ダークエネルギーの本質を解明していく手掛かりになるかもしれない。

 今回の研究チームは、1年前に打ち上げられたユークリッド宇宙望遠鏡による観測データの分析に今後着手し、さらに詳細な検証を実施していくという。これにより、従来よりも正確な重力レンズ効果の測定が可能となり、向こう6年間で約15億個の銀河が観測される予定だ。