小田原市議会が公開した行政視察期間中に歓楽街で飲み歩く市議らの写真

 小田原市議会の大川裕議長らが行政視察期間中に「熟女キャバクラ」で遊興し、匿名で告発した公益通報者の捜査を県警に求めた問題で、市議会は12日までに、大川議長らがキャバクラに入店する写真を含む通報者から送られた告発文書などを公開した。市議会はこれまで情報公開請求に対し告発文書の存在を認めてこなかったが、8月に市情報公開審査会から文書の存否を明らかにするよう答申を受け、一転して文書の存在を認めた。

 公開されたのは告発文書と同封されていた写真約100点、告発を巡る市議会側の対応を示した内部文書。写真には昨年7月の議会運営委員会の大阪視察中、市議5人が深夜までキャバクラやパブなどで飲み歩き、宿泊先のホテルに帰るまでの様子が写されていた。議員らの姿は「公務外の時間帯で個人情報に当たる」(市議会局)として黒く塗りつぶされている。

 公開された内部文書によると、匿名の告発文書は同9月に市議会に届き、「市議としてあってはならない恥ずべき行為」として5人の議員辞職を求めていた。大川議長らは「(キャバクラでの遊興は)法的に問題なく、辞職要求は(刑法の)強要に当たる」と主張し、小田原署に被害届を提出したという。

 情報を知った市民らが同10月に告発文書などを情報公開請求したが、市議会側は公益通報者の保護や市議らの「社会的地位への支障」などを理由に文書の存在も認めない公文書存否応答拒否の回答をしたため、神奈川新聞社が今年2月、行政不服審査法に基づき、市審査会での審査を求めた。

 市審査会は「公文書の存否を明らかにするだけで通報者が特定されるとは認められない。市議は市民の代表者の立場で市民からの監視や批判を受けることはあり得る」と市議会側の主張を退け、応答拒否の処分取り消しを答申。市議会局は「自分たちの考えは変わらないが、答申は真摯(しんし)に受け止める」として文書の公開を決めた。

 県警への被害届について大川議長は「公人としては公益通報者に準ずると考えているが、個人として被害届を出しているので矛盾しているとは思わない」と釈明。「今後も被害届を取り下げるつもりはない」と強調した。一方で今後の行政視察中の夜間の遊興については「自分としては自律した行動を取りたい。議会として自粛を求めることはできない」との従来通りの方針を述べた。

 一方で議会関係者の1人は「大川議長らは一方で公益通報者をあぶり出そうとしながら、市民の情報公開請求に対しては通報者の保護を名目に情報を隠そうとし、制度を恣意(しい)的に運用している」と批判している。