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 ◇SMBC日本シリーズ第2戦 ソフトバンク6―3DeNA(2024年10月27日 横浜)

 【伊東勤 日本シリーズ大分析】ソフトバンクが先勝して迎えた第2戦。負けられないDeNAに対し、再び先手を取って2連勝を収めた。ダメージを与えたのが、初回に4番・山川が先発の大貫から放った先制2ラン。スポニチ本紙評論家の伊東勤氏(62)は、この一撃で大貫を完全に萎縮させたと分析。かわす投球に終始し、ソフトバンク打線の餌食になった。(構成・浅古正則)

 初回に出た山川の一発が流れを引き寄せた。2死一塁。初球は内角低めへのツーシームを空振り。2球目は真ん中低めのスプリットを空振りした。3球目外角への直球はボール。カウント1―2から真ん中にカーブが入ってきた。一瞬、タイミングを外されそうになったが、グッとためてフルスイング。上がり過ぎたように見えたが、スタンドに届いた。レギュラーシーズンで30本、40本打つ長距離砲。甘い球は見逃してくれないし、確実にホームランにする。

 ただ、DeNAバッテリーがなぜカーブを選択したのかは理解できない。空振りを取った2球と違う変化球を投げてタイミングをズラそうとしたのかもしれないが、あのコース、あの高さでは通用しない。ソフトバンク打線にあって山川は警戒しなければいけない打者。結果的に3安打3打点。第1戦は無安打だったが、一発が出て気持ちよくバットを振れるようになった。

 大貫はCSファイナルでは巨人相手に開き直って攻めていたがこの試合では別人。強打のソフトバンクを相手に萎縮しているように見えた。元々ボールを動かしてゴロを打たせるタイプだが、完全にかわしにいって勝負ができていなかった。そんな大貫をソフトバンク打線は見下ろしていた。3回無死一、二塁。栗原はカットボール、ツーシームを低めに集められたが、見極めて四球で無死満塁。1死後、牧原大は浮いてきたツーシームを右前に持っていった。大貫を完全に捕まえてKO。試合の主導権を握った。

 ≪22年交流戦では3四球≫山川は大貫と西武時代の22年5月27日の交流戦で一度だけ対戦し、3四球だった。3打席いずれも走者のいない場面で打席に入り、相手バッテリーに長打を警戒されて勝負を避けられた。同年は41本塁打、90打点で2冠王に輝いた。

 ≪ソフトバンク オスナが立ち直り継投も盤石に≫第1戦では不安定な投球を見せたストッパーのオスナだが、この試合では完璧なピッチングだった。前夜の反省を踏まえて、スピードを抑えて制球重視。簡単に3人で終わらせた。制球が安定すれば、カットボール、ツーシーム中心の変化球は一級品。付け入る隙のない投球をする。

 8回に登板した左腕のヘルナンデスも最高の出来だった。わずか8球。佐野、宮崎を150キロ台の力のある直球で片付け、代打の蝦名は直球で攻めて、最後はカーブで空振り三振。変則的なフォームであんな切れのある球を投げられたら打者はたまらない。先発がある程度、試合をつくることさえできれば終盤はこの2人が仕上げる。1、2戦を終わって投手陣に死角はない。

 ≪DeNA4番不在の中…中軸の奮起が鍵≫このシリーズでは、ソフトバンクの投手陣とDeNAの牧、佐野、オースティン、宮崎と続く中軸の対戦がポイントになると思っていた。フタを開けてみると、DeNAの頼みの中軸が打てていない。ソフトバンクの投手陣がいいというイメージがあり過ぎるのか、自分たちのスイングができていない。何か投手に合わせて打ちにいっている印象がある。気づいたら早めに追い込まれて打ち取られている。甲斐のリードもあるのだろうが、DeNAの良さを消されているように見える。

 オースティンに代わって4番に入った筒香は厳しい。とにかく直球を打ち切れていない。空振りかファウル。ファウルも惜しい当たりのファウルではなく、差し込まれてのファウル。ソフトバンクのバッテリーも怖さを感じていないと思う。オースティンが復帰できたとして、筒香はDHの候補だろうが、今の状態では苦しい。

 2試合を通じ、DeNAの救援陣は頑張っている。第3戦以降、先発投手が先に点を取ってくれるまで粘れるかどうか。中軸に本来の打撃が戻るかどうかが反攻の鍵になる。