金正恩エリートも震え上がる「北朝鮮ヤクザ」の世界
韓国の公共放送KBSは今月14日までに、北朝鮮内部で作られた国民向けの防犯教育用映像を入手して公開した。
それを見ると、経済難が深まる北朝鮮で、各種の犯罪が増加し、ヤクザ勢力までが台頭していることがわかる。
映像にはたとえば、公衆浴場の看板がかけられた薄暗い建物が登場する。内部で行われているのは「賭けビリヤード」だ。北朝鮮で公衆浴場は、売買春の現場となっていることが以前から伝えられているが、秘密の賭場としても使われているようだ。
そして、そうした違法行為の背後に犯罪組織があるのはどの国も同様だ。映像では、「彫刻刀組」という組織を作り、海州(ヘジュ)市の龍塘洞(リョンダンドン)を根城に凶悪犯罪を働き、地域住民に恐れられていた面々が紹介されている。
国民に対する監視と統制が厳しい北朝鮮においても、かなり前からヤクザ組織が存在した。
主な収入源は高利貸しや売買春、賭博などで、摘発を逃れるため司法機関と癒着しているのが一般的だ。ただ、利権を巡るもめごとのためか、はたまた頻繁に行われる「摘発キャンペーン」に対するストレスのためか、北朝鮮ヤクザは朝鮮労働党や行政機関のエリートを襲撃することもある。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は2022年4月、北朝鮮当局が「犯罪前科者」「ヤクザ者」に対する取り締まりを強化するための指示文を地方機関に出したと報じた。
(参考記事:【実録 北朝鮮ヤクザの世界】28歳で頂点に立った伝説の男)
咸鏡南道(ハムギョンナムド)のある行政幹部は当時、RFAに対して「指示文は過去数カ月の間に全国で発生した数十件の凶悪犯罪を分析した結果、大部分が犯罪前科者、無職ヤクザ者によって起こされたものだったことを明らかにした」とし、「一部の前科者とヤクザ者が良からぬ考えから党幹部や行政幹部、安全・保衛要員を襲撃して殺人行為に至った事例も通知された」と明らかにしている。
国民への監視の厳しい北朝鮮で、こうしたヤクザ組織が巨大化することは今のところ考えづらい。ただ、経済難の中では根絶も難しく、彼らが突発的に「大それたこと」をやらかす可能性はゼロではなかろう。