2004年に撮影された東京都江東区の中央防波堤外側埋め立て処分場(写真・共同通信)

 9月16日、「FNNプライムオンライン」は、東京23区東京都が家庭ごみの有料化を検討していると報じた。

 東京23区の家庭から出る可燃ごみ、粗大ごみ、不燃ごみは、焼却や破砕などの中間処理がされた後、東京湾中央防波堤の外側にある最終処分場に埋め立て処分されている。しかし、最終処分場の拡張が難しいなか、約50年後には満杯となるため、家庭ごみの有料化を導入するという。すでに、東京・多摩地区では実施されており、ごみ排出量の削減効果があったという。

 東京都環境局の担当者が、こう話す。

東京都で家庭ごみを有料化していないのは、23区と桧原村と島嶼(とうしょ)部です。23区内から発生した、一般家庭から出る可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみを、それぞれに対応した清掃工場などにおいて、焼却や選別、破砕などを『東京二十三区清掃一部事務組合』がまとめて処理しています。最後は、報道にもありました最終埋め立て処分場に廃棄処理しています。

 そのため、有料化する場合には、基本的には23区が一緒に実施する必要があります。有料化の検討自体は、今に始まったものではなく、2018年に今後の資源循環施策に関する都と区市町村の共同検討会で議題にあげられ、検討が始まりました。

 ただし、23区の家庭ごみ有料化は『今すぐに進めなきゃ』という感じではありません。最終処分場が満杯になるのは50年以上先の話ですから、切迫した問題ではないんです。なので、具体的な日程などはまだ検討されていません。もちろん、ごみの削減に対する啓発活動はおこなっていきたいと考えています」

 ただ、このニュースに対して、X上では

《まじで何のための住民税なのかを考えて欲しい》

《家庭ごみ有料化したら不法投棄めっちゃ増えそうじゃない?》

 といった疑問の声が続々とあがっている。

 すでに、東京都では桧原村を除く多摩地域で、家庭ごみは有料化されている。1998年10月に青梅市で初めて実施され、最近では2022年10月に武蔵村山市も有料化に踏み切った。指定された有料のゴミ袋を購入し、それにごみを入れて捨てる方式だ。

 有料ごみ袋の値段は、40リットル1枚あたりで60〜80円。日ノ出町と奥多摩町は45リットル1枚あたり67円で、調布市は45リットル1枚あたり84円となっている。

「多摩地域は、埋め立て処分ゼロという考え方でごみ処理をしています。基本的には各自治体で処理していますので、23区とは事情が違います」(同)

 練馬区と杉並区に隣接するなど、都心部に近く、「吉祥寺」といった繁華街も有する武蔵野市では、2004年10月から家庭ごみ(燃やすごみ・燃やさないゴミ)の有料化が実施されている。家庭用有料ごみ処理袋のサイズは4種類あり、5リットル相当は10枚1組で100円、10リットル相当は同200円、20リットル相当は同400円、40リットル相当は同800円となっている。

 武蔵野市環境部ごみ総合対策課の担当者に、懸念されている有料化導入後の「ごみのポイ捨て」や「無料ごみ袋による違法投棄」が増えたのではないか尋ねた。

「当時のデータを取っていないため、詳細はわかりませんが、実施直後は無料のごみ袋の使用についてはおそらく多かったのではないかと思いますし、ポイ捨ても一時は増えたかもしれません。ただし、その後は有料化の周知などが徹底されるなどしたため、有料のごみ袋が普通に使用されてきました」

 一般的に家庭ごみの処理には住民税も使われているはずだ。さらにゴミ袋が有料となると、二重取りされているのではないかと疑いたくもなるのだが……。

 有料化に際し、武蔵野市民への説明方法や理解を得られるまでの経緯について、前出の担当者はこう話す。

「なぜ有料化するのかを、4点説明しました。1点めはごみの減量・分別・再資源化の推進です。手数料を負担していただくことで、ごみをできるだけ減らす工夫をする。それまで分別せず燃やすごみに入れていたものを資源のほうに回してもらえれば、燃やすごみも減りますし、資源にもより多く回せます。

 2点めが最終処分場の有効利用です。1日でも長く最終処分場を使うために、ごみ減量を図る必要があると説明しました。そして、3点めがごみ処理費用の負担を公平化することです。たくさん出す人は、それだけ有料ごみ袋を買わなくてはいけないので、ある一定のお金を手数料として負担していただく。ごみの減量に努力していただいている人は、負担額が減るということです。

 4点めが、市民一人一人の意識の向上です。有料化導入の少し前くらいに、武蔵野市は戸別収集、各ご家庭の家の前に出していただくことをしましたので、自分のごみに責任を持つということ、これでごみに対する意識が向上しました。

 この4点を市民のみなさまに説明して、ある一定のご理解を得て、有料化に踏み切った次第です」

 ちなみに、市民への説明会などで、住民税との二重取りではないかという批判が出たかどうかについては、記録が残っていないため、わからないということだった。

 有料化後、半年間のごみ削減状況などについて、こう話す。

「家庭ごみを有料化する前の2004年9月の可燃ごみが2073トン520キロ、不燃ごみが493トン700キロでした。有料化を導入後の同年10月の可燃ごみは1255トン420キロ、不燃ごみが112トン720キロでした。11月の可燃ごみは、2081トン60キロ、不燃ごみが120トン10キロ。可燃ごみはいったん減りましたが、11月はリバウンドで有料化導入前の9月より増えています」(同)

 しかし、その後、12月の “大掃除シーズン”、3月の “引っ越しシーズン” で、前月より増加することがあったが、導入後半年間で、導入前の9月よりごみの量が増えることはなかったという。さらにその後、どのくらい家庭ごみが削減されたかについても、こう話す。

「家庭ごみ有料化の実施により、有料化後4年めまでに、ごみ量は約15〜18%減少。一方で資源物は古紙類やその他のプラスチック製容器包装廃棄物を中心に約34〜43%増加しましたが、総量では約1〜4%の減少にとどまりました。

 しかし、1人1日あたりのごみ量では、有料化後1年めで約34グラム減少しましたが、その後、2年めには前年よりも増加。3年めにはやや減少し、4年め〜6年めには減少し、ごみ量の減少に一定の効果があったと思います。

 トータルで言いますと、1人1日あたりの家庭ごみの量は、有料化前は786.1グラムで、6年めには694.5グラムまで減り、最新の数値ですと。582グラムまで減少しました。もちろん、有料化のみならず、環境問題への関心や包装の簡易化などの複合的な原因で減少したと考えられます」

 多くの人々が行き交う東京23区でも、同様の効果が得られるのか――。