『iPhone 16』シリーズは何が進化した? Apple歴40年の専門家が変更点&注目ポイントを徹底解説
■予想どおりiPhone 16シリーズが登場
9月10日午前2時(日本時間)、アップルは「September 2024 Keynote」と題したイベントを開催し、その席でApple WatchとAirPods、そしてiPhoneの新製品を発表した。まずは気になる新しいiPhoneの内容からチェックしてみよう。
【画像】iPhone 16で新たに搭載された「カメラコントロール」 カメラの起動から撮影、ズームや半押しAFまでさまざまな操作が可能に
発表されたのはiPhoneの2024年モデルともいえる「iPhone 16シリーズ」で、これまでの構成どおり標準モデルの「iPhone 16」と「iPhone 16 Plus」、プロモデルの「iPhone 16 Pro」と「iPhone 16 Pro Max」の4モデルだ。前モデルのiPhone 15シリーズと比べてどんな点が新しくなったのか確認してみた。
■iPhone 16/iPhone 16 Plusの新しい点
◯ディスプレイや本体サイズ
ディスプレイサイズはiPhone 16が6.1インチ、iPhone 16 Plusが6.7インチと従来のiPhone 15シリーズと同じだ。輝度に関しても最大1,000ニト(標準)、ピーク時が1,600ニト(HDR)/2,000ニト(屋外)と変わりないが暗所では最小1ニトになる。ディスプレイのCeramic Shieldは50%強化されている。とはいえ長く使うことを考えたら画面保護用のフィルムやガラスを用意した方が良いだろう。
標準モデルのiPhone 16と16 PlusのディスプレイはOLEDを採用したSuper Retina XDRディスプレイで、解像度は16が2,556×1,179ピクセル(460ppi)、16 Plusが2,796×1,290ピクセル(460ppi)で前モデルと同じだ。
本体サイズも前モデルのiPhone 15や15 Plusと同じ。重量に関しては16が171gから170g、Plusが201gから199gと僅かだが軽くなっている。
◯アクションボタンとカメラコントロール
『Proに搭載していた機能が次の標準モデルに採用される』という慣例どおり、iPhone 15 Proでしか使えなかったアクションボタンが搭載された。従来のサウンドオンオフ(消音スイッチ)としてだけでなく、ボイスメモや翻訳などいろいろな機能を割り当てできる便利なものだ。
本体側面にはサウンドオンオフスイッチの代わりにiPhone 15 Proで採用されたアクションボタンを搭載。ショートカットを設定してアプリを開いたり、時間帯や場所に合わせたアクションの変更なども可能だ。
新たな操作系として追加されたのが「カメラコントロール」だ。クリックするだけで瞬時に「カメラ」を起動。感圧センサーを搭載しているのでシャッターボタンとしてだけでなく、今まで画面のピンチ操作で行ってきたズームを指でスライドするだけで行えるたり、プレス操作でカメラ設定の変更などがカメラコントロールからアクセスできる。
サイドボタンの下に新設されたのがカメラツールにアクセスできる「カメラコントロール」。カメラ機能重視のユーザにとって新しい操作体系が実現できる重要なユーザインターフェイスになる予感がする
今までボリュームボタンをシャッター代わりに使っていたので、横位置に構えるとレンズが下の方にあるので指が被ってしまうことがあった。これからはレンズが上の方にくるのでフレーミングも楽になりそうだ。
単に押すだけでなく押し込む力の強弱や指のスライドなどを使ってカメラ機能のコントロールができる。標準の「カメラ」以外のカメラアプリでも順次サポートしていくことを期待しよう。
◯進化したカメラ
背面に搭載している2つのカメラレンズはメインが48MP、超広角が12MPと同じだが、2つのカメラレンズを真っ直ぐに配置したことで横位置に構えた際に2つのレンズが横一列になり、イマーシブな3D写真やビデオが撮影できる空間写真と空間ビデオに対応した。これまでProモデルでしか撮影できなかったマクロ写真をサポートしたのも写真好きの人にとっては嬉しいポイントだろう。
メインのカメラは26mmの48MPの撮影としてだけでなく中央をクロップして12MPの52mm、2倍望遠レンズとしても使える。
もう1つのレンズは13mmの超広角レンズだ。ただしこちらはメインと違い12MPでの撮影しかできない。オートフォーカス対応でマクロ撮影にも使用する。
搭載しているカメラはメインと超広角の2つだが、実質的にはマクロ、0.5倍、1倍、2倍の4つのレンズ切り替えた撮影ができる。
ビデオ撮影に関しても空間ビデオだけでなくスローモーションとタイムラプスに対応したマクロビデオ撮影が可能になった。空間オーディオとステレオ録音や風切り音の低減、ビデオ内での声の聴こえ方を調整できるオーディオミックスが使える。
◯1段飛ばしてA18チップ採用
内部に目を向けると搭載しているAppleシリコンチップがiPhone 15のA16 Bionicから一気に2世代先のA18チップになった。これによりiPhone 15と比べてCPUパフォーマンスが30%、GPUパフォーマンスは40%アップしている。従来、Proモデルでしかプレイできなかったゲームも標準モデルで遊べるようになるのでゲーム好きの人には朗報だろう。
バッテリー駆動時間も16で最大22時間、16 Plusで最大27時間のビデオ再生と前モデルからぞれぞれ2時間/1時間も長くなった。MagSafeでの充電は25Wの急速充電に対応した。
CPUもGPUも確実にパフォーマンスアップしている。Apple Intelligenceに対応するためにも、このパフォーマンスが必要だったのだろう。
これまでiPhone 15 Proにしか対応していなかったゲームも、標準モデルのiPhone 16や16 Plusでプレイできるようになる。ゲーム好きの人には一番のポイントになるだろう。
◯Apple Intelligenceへの布石
A18チップの採用はこうした機能アップのためだけでなく「Apple Intelligence」のためだ。メールやメッセージに書き込んだ文章を校正したりボイスメモに録音した内容の文字起こし、会話の内容に合わせたジェン文字の作成、写真の不要部分を消すクリーンアップ、Siriの強化などを実現するため、あえて1世代飛ばしてA18を搭載したのだろう。
待ち遠しいApple Intelligenceだが、当初は来月10月からの米国を皮切りに11月にオーストラリア、カナダ、ニュージランド、南アフリカ、英国と英語圏内でしか使えず、日本語や中国語やフランス語、スペイン語での利用は来年以降の開始となっている。Apple Intelligenceの恩恵を受けるにはまだしばらくかかりそうだ。来年まで期待して待とう。
■iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Maxの新しい点
◯ディスプレイと本体サイズがアップ
Proモデルも順当に進化した。
ディスプレイサイズはiPhone 16 Proが6.3インチ、iPhone 16 Pro Maxが6.9インチと前モデルのiPhone 15 Pro/15 Pro Maxよりサイズアップしている。そのため本体サイズは前モデルよりProが高さ3mm、幅0.9mm、Pro Maxだと高さ3.1mm、幅0.9mmと僅かだがサイズアップしている。重量は標準モデルと違いProが12g、Pro Maxだと6g重くなっている。
輝度に関しては最大1,000ニト(標準)、ピーク時が1,600ニト(HDR)/2,000ニト(屋外)に加え暗所での最小1ニトと標準モデルの16や16 Plusと同様だ。Ceramic Shieldも標準モデルと同じだ。
ディスプレイサイズが大きくなったがベゼル(縁)を狭くして本体サイズのアップを最小限にしている。最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionテクノロジーと常時表示ディスプレイはプロモデルの証だ。
◯ProとPro Maxで同じになったカメラ性能
背面のカメラはメインと超広角、望遠の3つのレンズ搭載と変化ないが、超広角が12MPから48MPになった。そのためマクロ撮影が48MPで撮影できる。さらに前モデルでは光学ズームがProの0.5倍、1倍、2倍、3倍に対してPro Maxだと0.5倍、1倍、2倍、5倍と望遠端が違っていたのが同じになった。アップル的にはマクロ、13mm、24mm、28mm、35mm、48mm、120mmと7つのレンズをポケットに入れて持ち歩く感覚だと謳っている。
個人的には超広角カメラが48MPにアップしたのと望遠カメラがPro Maxと同じ光学5倍になったのが嬉しいポイント。iPhone 15 Pro Maxにしか搭載していなかったテトラプリズム(レンズに入った光を4回屈折させることでレンズ長を確保する仕組み)をiPhone 16 Proと16 Pro Max両方に採用した格好だ。
前モデルでは本体サイズと5倍ズームを天秤にかけてProにするかPro Maxを選択するか悩んだので、光学ズームの倍率が同じになったのが個人的には一番嬉しい。反射防止レンズコーティングも追加されたようなので、実機が手元に届いたら検証してみたいところ。
ビデオ撮影に関しても100fpsまたは120fpsの4K対応になったし、標準モデルの風切り音の低減とオーディオミックスに加え、スタジオ品質の4マイクアレイ搭載でサウンド面もパワーアップしている。
◯チップはプロ向けのA18 Proを搭載
Appleシリコンは第2世代の3nmテクノロジーを採用したA18 Proを搭載。前モデルのiPhone 15 Proや15 Pro Maxと比べてCPUパフォーマンスが15%、GPUパフォーマンスは20%アップした。ハードウェアによるレイトレーシングもA17 Proチップと比べて2倍も速くなっているのでゲーム体験も向上できる。
バッテリー駆動時間は16 Proで最大27時間、16 Pro Maxで最大33時間のビデオ再生と前モデルから4時間も長くなった。標準モデル同様、MagSafeでの充電は25Wの急速充電に対応している。
■Apple Intelligenceに期待
「Apple Intelligence」については、標準モデルで触れたように来年以降でないと日本語に対応しない。真のiPhone 16 Pro/16 Pro Maxの能力を発揮するにはまだ時間がかかるだろう。
○価格は据え置き
さて、気になる価格だが、iPhone 16が、128GB(124,800円)、256GB(139,800円)、512GB(169,800円)。
16 Plusは、128GB(139,800円)、256GB(154,800円)、512GB(184,800円)。
Proモデルは、iPhone 16 Proが128GB(159,800円)、256GB(174,800円)、512GB(204,800円)、1TB(234,800円)。
16 Pro Maxは128GBモデルがなく、256GB(189,800円)、512GB(219,800円)、1TB(249,800円)。前モデル発売時と同じ価格で据え置きになっている。
iPhone 16と16 Plusはインフューズドガラスの背面とアルミニウムのボディで、カラーはウルトラマリン(青)、ティール(青緑)、ピンク、ホワイト、ブラックの5色展開。
iPhone 16 Proと16 Pro Maxのボディはマイクロブラスト加工で磨き上げたグレード5チタニウムで、ナチュラルチタニウム、ホワイトチタニウム、ブラックチタニウムに加えて新色のデザートチタニウムの4色展開となっている。
従来のモデル同様、ポップなカラーリングの標準モデルに対してプロモデルは重厚なカラーを採用しているのが特徴だ。クリアケースを使う人にとってはどの色を選択するかも悩みの種だ。
新しいiPhone 16シリーズは9月13日午後9時から予約開始で9月20日から発売開始だ。買い替えを検討している人は、まだ週末まで悩む時間が残されている。個人的な見解としては、プロ仕様のカメラスペックが必要なければ標準モデルのiPhone 16/16 Plusで十分。映像クリエーターやカメラ好きのマニアの人たちはプロモデルを選択する人が多いのではないかと予想している。
(文=松山茂)