東京商工リサーチ(TSR)の「2024年企業のメインバンク調査」(8月21日号掲載)で三菱UFJ銀行が12年連続でトップ取引社数を記録した。2024年は全国158万5,849社のうち、三菱UFJがメインバンクの企業は全体の約8%、12万6,642社に達する。

 取引企業の本社は、東京、大阪、愛知の3都府県の大都市が約8割を占める。売上高100億円以上が3,946社で、大都市を中心に大手企業のメインバンクの多くを確保している。

 取引先の業績(合計)も、10年前と比較すると売上高が38兆円、最終利益が12兆円増加し、様々な取り組みで取引先の成長につなげている。とはいえ、1年間で約4,000社が倒産や廃業、メイン変更などで三菱UFJから離れていることもわかった。実は12万6,642社の半数近くが、売上高1億円未満の中小・零細企業という事実もある。
 メインを「三菱UFJ銀行」と公表すると対外信用が高まると考える企業も少なくなく、企業を引き込む魅力を持つ。

三菱UFJ銀行 本店

10年間で取引企業の売上高が約20%増

 今年3月末時点のTSRの企業データベースから、三菱UFJをメインバンクとする企業の2023年(1-12月期)と10年前の2013年の売上高と最終利益を分析した。TSRのデータベースに両年度の業績がある約4万社を調べた。
 2013年の売上高合計は191兆6,219億円、2023年は229兆8,256億円で、2013年に比べて19.9%増、38兆2,037億円増えた。
 また、最終利益合計は2013年が5兆5,871億円なのに対し、2023年は18兆4,533億円で230.2%増、12兆8,662億円の増益だった。
 景気変動はあるが、取引企業は大幅な増収増益を達成していることがわかった。

メイン先の本社、大都市に集中

 三菱UFJをメインとする12万6,642社を分析した。地区別では、最多は関東が6万9,635社(構成比54.9%)と半数を占めた。次いで、近畿の3万2,463社(同25.6%)、中部の2万1,580社(同17.0%)と続き、上位3地区で全体の97.6%を占めた。

 都道府県別では、東京都が5万3,863社(同42.5%)と4割超を占める。以下、大阪府の2万5,254社(同19.9%)、愛知県の1万9,412社(同15.3%)で、上位3都府県で77.8%と都市部に集中している。少なかったのは、高知県、島根県、鳥取県、秋田県、鹿児島県の順で、支店がない、または少ない県は三菱UFJをメインとする企業が少ない。



売上高100億円以上が3,946社

 売上高別(判明企業11万1,364社が対象)で分析した。大企業との取引が多く、売上高100億円以上は3,946社(構成比3.4%)、50億円以上100億円未満が2,642社(同2.3%)、10億円以上50億円未満が1万1,401社(同10.0%)で全体の15.8%、4社に1社が売上高10億円以上だった。
 一方、売上高1億円未満の中小・零細企業は5万5,870社で、全体の49.1%と半数近くを占めるのも特徴だ。最大手の三菱UFJの口座を開設後、対外的に同行をメインバンクと公表し、信用力を高めようとする企業もある。
 12万6,642社を産業別で分析した。最多は飲食店などを含むサービス業他の3万3,653社(構成比26.5%)、次いで建設業の2万753社(同16.3%)、卸売業の1万9,108社(同15.0%)、不動産業の1万1,513社(同9.0%)、情報通信業の1万446社(同8.2%)と続き、幅広い業種に取引先を確保している。

直近1年で新たに4,679社のメインに

 2023年3月末時点で三菱UFJをメインとしていたが、2024年3月末で対象落ちした3,979社の理由を分析した。最多は、廃業や解散・合併などで2,503社(構成比62.9%)。次いで、他行へ変更が1,160社(同29.1%)、倒産が316社(同7.9%)だった。
 2024年は、2023年から3,979社がメインから脱落したが、4,679社が新たに加わった。
 4,679社の産業別では、サービス業他1,444社(構成比30.8%)が最多で、卸売業629社(同13.4%)、建設業529社(同11.3%)、製造業517社(同11.0%)と続く。
 本社所在地の都道府県別では、東京都が1,969社(構成比42.0%)、大阪府932社(同19.9%)、愛知県604社(同12.9%)と大都市の企業に選ばれている。

店舗別、「渋谷」「名古屋」が上位に

 12万6,642社の取引店を分析した。支店名不明や非公開を除くと、最多は本店の1,343社だった。次いで、渋谷の1,179社、名古屋営業部の1,127社、神田駅前の815社、青山の790社と続く。上位20位では、本店を含む都内店舗が14支店を占めた。近畿では、10位に京都、11位に大阪営業部、12位に梅田がランクイン。中部では3位の名古屋営業部、13位に大津町など。
 店舗内店舗(ブランチ イン ブランチ)も増え、大都市の店舗が上位に並んだ。





 金融機関のトップに君臨する三菱UFJ銀行だが、企業データベースで分析すると、大都市の有力企業に地盤を固め、成長支援の効果もうかがえる。廃業などで脱落もあるが、それを上回る数のメインバンク化が、12年連続でトップを維持する根底にある。こうした信用を背景に、三菱UFJを「メインバンク」と称する企業も多いとみられる。

 だが、メインバンクの取引社数の増加率では、急成長をたどるネットバンクが上位を占めている。地方では地域密着型 の有力地銀や信金、信組が営業網を築き、その地域ではメガバンクを圧倒する社数を確保している。
 三菱UFJは、アジアプラットフォームの強化や、国内でもスタートアップや再生企業への支援を強化している。
 こうしたメインバンクトップの座に甘んじない時流に適った営業戦略で、国内外での地歩を固めている。



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年9月4日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)