「二度と入らなくていい」議論百出だったセーヌ川の汚染問題 米女子選手が心境告白「具合が悪くならないよう願うしかなかった」

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セーヌ川での競泳を経験したグライムズが、当時の心境を告白した。(C)Getty Images

 今回に実施されたパリ五輪において、議論百出となったのは、セーヌ川での競技実施だ。

 フランス政府が総額14億ユーロ(約2400億円)という莫大な予算をつぎ込んで水質改善を図り、パリ市も「セーヌ川は安全」(アンヌ・イダルゴ市長)と主張し続けたセーヌ川。いわば同市の象徴とも言える舞台での競技開催は主催側にとっては悲願だった。

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 しかし、大会前から懸念されていたセーヌ川の汚染問題は開幕以降も尽きず。各競技の公式練習が中止になった中で、半ば強行的にトライアスロンの男女個人、混合リレー、オープンウォーター(10キロレース)が行われたのだが、水質に対する批判的な意見が噴出。参戦した選手に体調不良を訴える者も相次ぎ、アスリートへの配慮に欠けた印象は否めない。

 大会後もセーヌ川での競技実施の是非を問う議論は尽きない。今月21日には米五輪委員会の医療最高責任者であるジョナサン・フィノフ博士が「セーヌ川で実施されたトライアスロンの男女個人、混合リレー、マラソンスイミング男女に出場した全選手の約10%が胃腸炎を発症した」という衝撃データを発表した。

 無論、実際に競技に参加した選手とっても緊張感は尽きなかった。米メディア『TMZ』のインタビューに応じた米競泳代表のケーティ・グライムズは、セーヌ川の状態に対して「かなりナーバスになっていた」と赤裸々に明かしている。

 彼女が参加したのは、セーヌ川を10キロも泳ぐオープンウォーター。開催時にはトライアスロンに参加した選手たちの不満の声が各国メディアで次々に語られる状況で、パリ五輪開幕時よりも水質への不安は強まっていた。

 レース直前まで「ただ具合が悪くならないことを願うしかなかった」というグライムズは、当時の心境を次のように振り返っている。

「でも、正直なところレース中は一度も水質汚染のことは考えてなかったわ。入る前までは本当に緊張したけど、レース後にまったく気分が悪くなることがなかったから、支えてくれた本当に良かったと思う。セーヌ川でのレースは確かに挑戦的だったし、私はあれだけの流れに逆らって泳いだことはなかった」

 問題ばかりがクローズアップされたセーヌ川での競技開催に「とても楽しかったし、歴史的で、決して忘れられない思い出になった」と語るグライムズ。全体15位で競技を終えた彼女は、最後にこう言い残している。

「二度とあの川に入らなくて済むといいけどね」

[文/構成:ココカラネクスト編集部]