経常利益に焦点を当ててみることで、どの地域でどの企業が頑張っているのかがわかります(写真:years/PIXTA)

為替レートの大変動、株価の高騰、物価や賃金の動向など、「経済の潮目」が明らかに変わってきたのは誰もが感じているところでしょう。それが何を示しているか、それから何を読み取れるかで、ビジネスの発想・行動も大きく変わってきます。

ひとつの数字が表われてくるまでの背景を知り、読み取ることで、「いま」や「これから」の経済の姿が見えてきます。もちろん、「過去」を知ればより深く理解することができるでしょう。

長年にわたり、帝国データバンク情報統括部が蓄積してきたデータベースをもとにした新著『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』では、ビッグデータやAIなど「数字が万能の世の中」になればなるほど必要になってくる、アナログで読み解く力を紹介しています。本稿では、同書から一部を抜粋してお届けします。

儲かっている企業はどこだ?

今回のテーマは「儲かっている企業はどこだ?」。

日本全国の企業を都道府県ごとに検証し、経常利益に焦点を当ててみることで、どの地域でどの企業が頑張っているのか、興味深い事実がみえてくることでしょう。

まず初めに、「経常利益」とは何か、簡単に説明しましょう。

経常利益とは、企業が目的とする本来の営業活動にともない直接発生する利益(営業利益)のほかに、本業以外で得られた利益や、有価証券の売却や金利などで得られた利益も含まれます。

言い換えれば、企業が日々の運営でどれだけ利益を上げているかを示す数字と捉えることができるでしょう。

さて、日本の企業で、経常利益が多いのはどこでしょうか。

下の図表は、2022年度(2022年4月期から2023年3月期)の決算書(単体)における経常利益が多い企業のランキングです(※外部配信先では画像を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。


(表:『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』より)

これをみると、最も多いのはトヨタ自動車の3兆5208億円で、頭ひとつ、いやふたつ抜いてトップとなっています。2位は三菱商事で1兆2992億円、3位は日本電信電話の1兆1316億円です。

経常利益が1兆円を超えている企業はこれら3社だけです。

4位以下の企業名をみても、よく知られた大企業がずらりと並んでいます。

ちなみに、トヨタ自動車の売上高37.2兆円(2022年度、連結、国際会計基準)は、海外の国の名目GDPと比べると、デンマーク(世界53位)に次ぎ、ハンガリーよりも大きな経済規模であることがわかります。

一企業の売上高がこれら一国全体の経済規模に匹敵する水準とは驚くべき大きさです。

経営状況の良し悪しはこの数字に表われる

それでは、都道府県でみるとどのような姿が現われてくるでしょうか。

下の図表では、総資本経常利益率、売上高経常利益率、売上高当期利益率、経常利益について、各都道府県での中央値を示しています。


(表:『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』より)

「総資本経常利益率(経常利益÷総資本×100)」とは、企業が自己資本や他人資本を問わず経営活動に使用する資本に対して、どれだけの利益をあげているかを示す指標です。資本単位当たりの収益性は高いことが理想とされます。

また、「売上高経常利益率(経常利益÷売上高×100)」とは、売上高に対して経常段階での利益をどの程度あげたかを表わしています。この値が高いほど損益に関係する経常収益、経常費用の管理が相対的に良好であることを示しており、企業の経営状況が良いとされています。

「売上高当期利益率(当期純利益÷売上高×100)」とは、売上高に対して税引き後の最終利益をどの程度あげたかを表わす指標です。この利益は利益留保の対象となるもので、低いと利益留保も低くなり、株主に対する配当もできなくなる可能性も出てきます。

実は佐賀県が日本のナンバーワン?

図表をもう一度みると、売上高経常利益率の高い上位10都県が並んでいます。これによって、どの地域がビジネスにおいて相対的に優れたパフォーマンスを見せているのかがわかります。

経常利益自体は、東京都が約1663万円(中央値)で突出して高くなっています。

しかし、売上高経常利益率が最も高いのは、実は3.18%の佐賀県でした。佐賀県は、総資本経常利益率が47都道府県で唯一4%台だったほか、売上高当期利益率も2位でした。

ディスカウントストアを経営しているダイレックスや、対外診断用の医薬品を製造するミズホメディーなどが、大幅な経常利益をあげるなど高い利益率を生み出しています。

2位にあがった福井県は、北陸地区最大手の総合商社である三谷商事や、長繊維の浸染、捺染、精錬、樹脂加工など総合染色加工の国内トップ企業であるセーレンなど、優良企業が多くあります。

売上高経常利益率の中央値が3%以上となっているのは、佐賀県と福井県のみであり、総じて堅実な経営を行なっていることが示唆されています。

地域特有の魅力に「ビジネスのヒント」が

他方、大都市を抱える東京都、大阪府、愛知県もまた、それぞれの特徴を活かした活動が行なわれています。

東京都は、国内外の企業が本社を構え、多岐にわたるビジネスが展開されています。大阪府は、製造業や商業が盛んで、独自のビジネス文化が根付いているといえます。


愛知県は自動車産業を含め製造業が強みで、世界的に有名な企業が多く集まっているため、非常に強い競争力のある企業が集積しています。

近年では地方の企業も注目を集めています。

例えば、北海道や福岡県、広島県などは観光や地域特産品の販売が好調で、地域経済に貢献しています。また、IT技術を駆使した企業が東北地方で急成長しているなど、地域ごとに特色があります。

最後に、これらのランキングを通じて、ぜひ地域経済やビジネスの面白さを見つけ出してみてはいかがでしょうか。

日本中に広がる企業たちが、地域ごとに特有の魅力を持っていることを知ることで、将来への展望や地域に対する理解が深まることでしょう。

(帝国データバンク 情報統括部)