加入1年目ながら副将を務める鈴木雄。冷静な分析と高い言語化能力で、新たなスタイルに取り組むチームに好影響をもたらしている。写真:永島裕基

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[J1第23節]湘南 5−0 磐田/7月14日/レモンガススタジアム平塚

 相手に退場者が出たとしても、簡単に勝てるとは限らない。

 10人の相手にゴール付近を固められれば、ブロックを攻略するのは簡単ではないし、数的優位のチームが常にボールを握る傾向にあり、被カウンターに警戒し続けなければいけない。退場者が出たチームが粘り強く耐え凌ぎ、ワンチャンスをモノにして勝点をもぎ取る展開も度々ある。

 20分に相手に退場者が出た7月14日のJ1第23節・ジュビロ磐田戦で、湘南ベルマーレは敵陣でゲームを支配して数多くの決定機を演出し、5ゴールを奪う。守備でもボールロスト後の素早いプレスによる即時奪回でピンチの芽を摘み、盤石の試合運びで完勝を収めた。

 強引に攻め込むのではなく、相手を左右に揺さぶり、隙を見つけた時に楔を打つ。磐田戦は、山口智監督が常々チームに求めてきた「相手を見てサッカーをする」というスタイルと、ここ最近で形になり始めたポゼッション戦術が結果に結びついたゲームだったと言える。

 実際、指揮官も手応えを感じているようだ。

「相手が10人になって難しさがあったなかで、今日は相手を探りながらチャンスを見極めつつ、3人目の動きで前向きなサポートがあったからこそ相手を攻略できた。加えて、クロスの精度やサイドに対するサポートも今週は求めてきた部分。今日出せたものを、相手が11人の時にも出していきたいです」
【動画】鈴木雄斗がアシストした磐田戦の5点目!
 過去に湘南は相手が10人になったゲームで苦戦してきた印象がある。

 2023年7月8日の柏レイソル戦では、0−1で迎えた79分に相手DF立田悠悟が退場。猛攻を仕掛けたなかで90+3分に大野和成のヘディング弾で追いついたが、終盤の決定機の数を考えれば、勝ち越しも狙えたゲームだったと言えるだろう。

 22年3月12日の京都サンガF.C.戦では、1−1で迎えた78分に相手DF麻田将吾が退場し、柏戦と同様に攻め込んだが、最後まで得点できずに勝点1に留まった。また、21年11月7日のサンフレッチェ広島戦でも、19分に相手MF柴崎晃誠が退場。ボールを握り続けて24本ものシュートを放ったが、スコアレスドローに終わった。

 このように、21年9月の山口監督就任後に数的優位となった全3試合はいずれもドロー。引いた相手を崩すプレーに課題を抱え続けていた。

 現体制の4年目で、ついに課題解決の兆しが見え始めた湘南。今季に磐田から加わり、チームの始動から何度も“ボール保持の重要性”と“個々の守備時の判断”について言及してきた鈴木雄斗も、磐田戦の勝利を自信にすべきだと語る。

「サイドで時間を作れるのは分かっていて、あとはどこで差し込むか、というだけでした。なので、どんどんボールを動かして相手を揺さぶって中を空けさせたかった。“ジャブ”のような形で相手を動かしていこうという話はしていましたし、そのボール回しがあったからこそ、相手を疲弊させて前に出るパワーも削げました。相手が10人になると難しくなることが多いですが、今日はほぼパーフェクトな試合運びができたと思います」

 球際の強度や、チームとしてハイプレスに出ると決めた時の連動性など、過去の強みも残しつつ、徐々に形を変えつつある湘南のスタイル。この道を進んだ先にはどんな結果が待っているのか。磐田戦の勝利を糧として、さらなる成長に期待したい。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)